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地球派 vs 宇宙派

2015年2月号

柏木亮二

西暦2045年と聞いてピンとくる方はいるだろうか?これは人工知能分野の権威であるレイ・カーツワイル氏が「コンピュータの進歩により、人工知能が人間の能力を超える時点」と予測した年だ。

 実際、近年の人工知能(A.I.)の進歩には眼を見張るものがある。すでにコンピュータの「知性」が人間を凌駕した分野もたくさんある。ディープ・ブルーがチェスのチャンピオンを破ったのは1997年のことだったが、昨年の2014年には将棋のトップレベルのプロ棋士が将棋ソフトに負けたことが話題になった。金融の世界でも、高頻度取引(HFT)を駆使して高いパフォーマンスを誇るアルゴリズムは多数存在する。ただこれらの人工知能はある特定の機能に特化した人工知能として設計されてきた。チェスソフトは将棋を指すことはできないし、トレーディングアルゴリズムが資産運用の相談相手になるわけではない。

 しかし現在、より汎用的な人工知能が実用化されつつある。ディープ・ブルーの後継として研究開発された人工知能プロジェクトの成果であるIBMのWatsonは、2011年にクイズ番組に出場し優勝したことで一躍有名になった。このWatsonはコールセンターや医療現場などの様々な領域で導入が進められている。日本でも大手銀行が自社のコールセンターに試験的に導入することを相次いで発表した。海外ではWatsonと同様の人工知能に資産運用のアドバイスを行わせようという取り組みもすでに始まっている。

 人工知能が賢くなることで、人類が煩雑な労働や作業から解放されるという期待も強い。乗用車の自動運転やIoT(Internet of Things「モノのインターネット」)によって物流効率の飛躍的な改善がもたらされる可能性は高いし、膨大な判例情報を検索して裁判をサポートする人工知能も実用化されている。

 一方で、オックスフォード大学の人工知能研究者であるカール・ベネディクト・フレイ教授とマイケル・オズボーン准教授が2013年に発表した論文「雇用の未来:コンピュータ化の影響を受けやすい仕事はなにか」によると、金融機関の窓口業務や審査業務、コールセンター業務などは今後10年でコンピュータ化により人間の仕事ではなくなる可能性が高いと予測している。

 人工知能学者のデ・ガリス博士は、人類の知性を超える人工知能を人類に対する脅威と捉え、人工知能の開発をやめるべきと唱える一派を「地球派」、逆に開発を進めるべきとする一派を「宇宙派」と呼んだ。さて、あなたは「地球派」「宇宙派」のどちらだろうか?

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

柏木 亮二

柏木亮二

金融イノベーション研究部
上級研究員
専門:IT 事業戦略分析

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