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タイムパラドックスで過去を“変える”

2015年1月号

外園康智

タイムマシンで過去に戻り、自分が生まれる前の親を殺してしまうと、パラドックスが起こる。SFの世界では、この解決のため、大きく分けて4つの展開がある。

 ①矛盾が発生した瞬間、世界全体が消滅する(※1)。

 ② 自分が生まれないパラレルワールドが元の世界から分岐して出現する。

 ③ 時間旅行者が、どんな手段を使っても、何回繰り返しても、確率の低い事象が連続的に起こり、殺すことができない(※2)。

 ④ 親が死んでも、その敵から自分が生まれたなど、“若干異なるが、現在の状態に辻褄を合わせた”歴史の流れとなる。

 タイムトラベルは物理学者間でも真剣に議論されている。時間順序保護説を唱えるホーキング博士は不可能と主張する一方、量子力学の“多世界解釈”はパラレルワールドを容認する。

 新しい量子計算理論では、光子の実験において、過去と現在の光子の状態が、なんらかの自己矛盾が生じそうな状態になると、実験自体の失敗率が高くなることが確かめられている。これは「事後選択モデル」と呼ばれ、過去が現在の状態と矛盾しないように選択されるように見えるのが名の由来である。

 さらに「量子消去」と呼ばれる不思議な現象がある。光は波なのか粒子なのかを検証するために、光を2重スリットに飛ばす実験は有名だ。この中で観測行為により、粒子としての光の軌跡情報を得ることが可能だ。しかし、後に、その“情報を失う”と、光は波の未確定状態に戻る。あたかも“過去”は未だ選択されていないかのように解釈される(※3)。

 すなわち、タイムトラベルの是非に関わらず、“過去”は我々が信頼している程に確定したものではなく、現在の状態に“左右”されると言える。人間の心の中や記憶は、特にそうだ。

 金融の世界では、過去と現在で数字は整合的なはずだが、制度不備や処理間違いで、局所的には不整合が生じる。その際に、特別ルールや数字修正などの辻褄合わせにより、システム全体は維持される。

 ところで、最近、高額宝くじ当選や、飛行機事故に遭遇など偶然が続いている方はいませんか?その原因は、過去修正の辻褄合わせか、パラドックス回避などの“時の見えざる手”による、たまたまの展開なのかもしれない。。ご注意を!

1) 過去と未来を同時に描いたSFが、整合がとれなくなり、夢おちや伏線回収前に物語終了となるのも世界消滅の一種だ。
2) 過去改変のトライ自体が“元の歴史”に含まれており、結局同じ歴史が繰り返されるパターンもある。
3) 量子消去実験には様々な解釈があるので注意が必要だ。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

外園康智Yasunori Hokazono

金融デジタル企画一部
上級研究員

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