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顧客が期待するファンドラップの付加価値とは

2014年12月号

リテールソリューション企画部 主任コンサルタント 東山真隆

ファンドラップ利用者実態調査から、提案時のコンサルティングや契約後のアフターフォローの重要性が明らかとなった。運用成績だけでなく、サービス全体の付加価値を向上させていくことが、より一層重要となろう。

 ラップ口座(※1)の残高と契約件数は、この1年間で共に約2倍(※2)となり、急速に規模が拡大している。ラップ口座の成長を牽引しているのは、投資信託を投資対象とするファンドラップというラップ口座サービスで、ラップ口座の残高全体の約8割(※3)を占めている。

 野村総合研究所は、2014年8月、金融資産1000万円以上を保有する50代以上の男女(※4)を対象に、ファンドラップの利用実態に関するネットアンケート調査を実施し、471名のファンドラップ利用者(※5)から回答を得た。さらに、そのうち15名にインタビュー調査を実施し、定性面からも分析を試みた。

ファンドラップが選ばれている主な理由

 ファンドラップの提案において、金融機関はヒアリングシート等を用いてコンサルティングを行い、顧客の運用目標を特定し、目標を実現するために取り得るリスク水準などの投資方針を確認する。その上で、投資一任契約に基づいて分散投資での運用を実施し、定期的に運用報告などのアフターフォローを行うという特徴がある。

 アンケート調査で、ファンドラップを利用した理由を尋ねたところ「金融機関の専門家に資産運用を任せられる」(57%)、「中長期分散投資による資産形成ができる」(54%)、「個別に投資商品を選ぶ手間がかからない」(39%)といった回答が上位を占めており、利用者は投資一任運用の利便性に魅力を感じていることが分かった。ただし、「金融機関の専門家が運用するので儲かりそうだから」という回答が24%あった点には注意したい。というのも、金融機関の専門家が運用することへの期待が大きすぎると、サービスを運用成績のみで評価され、相場変動時に不満や解約につながる恐れがあるためだ。

安定成長の鍵はコンサルティングとアフターフォロー

 顧客の不満や解約を予防し、安定的にファンドラップの規模を拡大させていくためには、ファンドラップ提案時のコンサルティングや契約後のアフターフォローなど、運用成績以外の付加価値を高め、サービス全体としての評価を向上させることが重要である。

 1つ目のポイントは、ファンドラップ提案時のコンサルティングである。金融機関は一般的に、30分から1時間ほどかけてコンサルティングを行い、顧客の運用目標や投資方針の確認などを実施している。アンケート調査によれば、利用者は、こうしたコンサルティングに対して「十分に時間を取って、丁寧に説明をしてくれた」、「資産運用の要望をきちんと聞いてくれた」、「専門性の高さを感じた」など良い印象を持っており、一方、「手続き等に手間がかかり、面倒だと思った」という回答は少なかった。ファンドラップ解約者の場合、「十分に時間を取って、丁寧に説明をしてくれた」、「資産運用の要望をきちんと聞いてくれた」などの割合が低く、コンサルティングを通じた顧客との対話が不十分であった可能性が考えられる。(図表1)

 インタビュー調査でも、コンサルティングを通じて金融機関の担当者と十分に対話できたと感じている利用者の中には「金融機関が顧客1人1人のことを親身に考えてくれていると思った」、「要望に合わせて、自分用に提案書やポートフォリオを作ってくれた」という感想を述べる人もおり、金融機関への信頼感や、提案内容への納得感が高いことが感じられた。

 もう1つのポイントは、契約後のアフターフォローである。アンケート調査でファンドラップの増額理由(※6)を尋ねたところ「中長期分散投資による資産形成ができる」、「個別に投資商品を選ぶ手間がかからない」に続いて、「定期報告など、継続的にフォローしてもらえる」が選ばれており、「運用成績が良い、利益が出た」よりも上位に位置している(図表2)。このことから、契約後の定期的なアフターフォローの重要性が伺える。

 契約後のアフターフォローの状況について、インタビュー調査で確認したところ「契約後は、分厚い運用報告書などが郵送されてくるだけ」、「損失が出た途端に、担当者から連絡が来なくなった」という意見もあった。一方で、運用報告をきっかけに金融機関の担当者が電話や訪問を行うなど、定期的にアフターフォローが実施されているケースでは、「金融機関の担当者と一緒に走っているようだ」と、金融機関を人生の伴走者のように感じている利用者もいた。

 このように、定期的なアフターフォローによって、金融機関は顧客に高い付加価値を提供できると考えられる。それがしっかりとできた時に、ファンドラップの増額へとつながるのだろう。また、アフターフォローにおける連絡頻度や方法、連絡時の会話内容の工夫により、他社とのサービス差別化も図れよう。

 ファンドラップ利用者の実態調査より、利用者は提案時のコンサルティングや、契約後の定期的なアフターフォローに高い付加価値を感じていることが分かった。顧客の不満や解約を予防し、今後も安定的にファンドラップの規模を拡大させていくためには、金融機関は顧客に対して、提案時のコンサルティングや契約後のアフターフォローを十分に行い、投資一任運用の利便性や運用成績のみではなく、サービス全体の付加価値を向上させていくことが、より一層求められよう。

1) ラップ口座とは、投資家が金融機関と投資一任契約を締結し、金融機関に銘柄の選定や注文執行、管理などを一任するサービスのこと。手数料・報酬は、運用資産残高に応じて決まる。主なラップ口座として、投資対象を投資信託とする「ファンドラップ」と、投資対象を限定せずオーダーメイドで運用する「SMA(セパレートリー・マネージド・アカウント)」がある。
2) 日本投資顧問業協会によれば、2014年3月末のラップ口座の残高は1兆3760億円、契約件数は10万5706件で、2013年3月末時点に比べて、残高は約1.8倍、契約件数は約2倍に増加した。その後も増加は続いており、2014年6月末の残高は1兆6430億円、契約件数は12万9492件であった。
3) Fundmarkのデータより野村総合研究所推計。
4) ファンドラップの主要マーケットである首都圏、近畿地方、東海地方を中心にサンプル回収を実施。
5) 回収したサンプルのうち、現在利用者は340名、解約者(過去利用者)は131名。
6) 分析対象は、ファンドラップを現在利用しており、「増額を行った」または「増額をこれから行いたい」と回答した人のみ(サンプル数は191)。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

東山真隆

東山真隆Masataka Higashiyama

リテールソリューション企画部
上級コンサルタント
専門:リテール金融

注目ワード : ラップ口座

注目ワード : 資産管理型営業

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