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保険業法の改正が、銀行における保険窓販に与える影響

2014年11月号

金融ITナビゲーション推進部 上級研究員 野崎洋之

2014年5月に保険業法が改正され、2016年度に施行の見込みである。改正保険業法は、保険の募集に際し、虚偽の説明等を禁止するだけではなく、募集プロセスの各段階におけるきめ細かな対応等を求めている。この対応に、銀行も一定の影響を受けるはずである。

 2014年5月23日、「保険業法等の一部を改正する法律」が成立した。今後、十分な準備期間を以って、2016年4月から施行の見込みである(※1)。この改正は、銀行における保険窓販(以下、保険窓販)にも一定の影響を及ぼすことが想定される。

保険窓販に影響を与える保険業法の改正

 2012年4月11日の金融審議会総会における金融担当大臣からの諮問を受け、金融審議会「保険商品・サービスの提供等の在り方に関するワーキング・グループ」は、同年6月から1年間(全16回)にわたる議論を経て、『新しい保険商品・サービス及び募集ルールのあり方について(以下、報告書)』を公表した。

 報告書は、今後の「保険商品・サービスのあり方」と、「保険募集・販売ルールのあり方」に関する提案から構成される。殊に保険募集・販売ルールのあり方に関して、現行の規制は「1948年に制定された保険募集の取締に関する法律を受け継ぐもの」や「1998年の金融システム改革のための関係法律の整備等に関する法律において導入されたもの」であり、今日の保険窓販や来店型ショップ、インターネット等の募集チャネルの多様化に、適切に対応できていないと指摘している。更に、銀行や証券の分野では、すでに銀行法(※2)や金融商品取引法(※3)において、一定の行為の禁止や体制整備義務、積極的な情報提供義務(契約締結前書面交付義務等を含む)を法定しており、保険業法での対応が遅れているとして、その見直しの必要性を示した。

 これを受けて、政府は「保険業法等の一部を改正する法律案」を閣議決定(2014年3月14日)し、第186回国会に提出した。その後、成立・公布に至っている(※4)。

 執筆時点では、この法律の内閣府令(保険業法施行規則)が明らかになっていないため、銀行が規制等(後述)の対象になると断言はできない。しかし銀行は、保険募集に携わる者が数百人・数千人と規模が大きく、かつ、複数の保険会社の保険商品を取り扱っている生命保険の募集人ないし損害保険の代理店(※5)であるため、規制の対象になる可能性が高い。その場合に、保険窓販に影響を及ぼすのは、「保険募集の基本的ルールの創設」と「保険募集人に対する規制の整備」である(※6)。

 (1)保険募集の基本的ルールの創設

 改正前の保険業法では、第294条(顧客に対する説明)において、保険募集人が保険募集を行おうとするときに明らかにしなくてはならない事項(所属保険会社等の商号や名称、氏名等)が定められていた。改正保険業法では、まずタイトルを「顧客に対する説明」から「情報の提供」に改め、従来からあった明らかにしなくてはならない事項に加え、保険契約者等の保護を目的に、保険契約の内容や、その他保険契約者等の参考になる情報の提供を行わなければならないとした。

 また、第294条の2(顧客の意向の把握等)を新設し、保険募集人等は顧客の意向を把握し、これに沿った保険契約の提案を行い、当該保険契約の内容の説明時、及び契約の締結時には顧客の意向と当該保険契約の内容が合致していることを顧客が確認する機会を提供しなければならないとした。

 更に、複数の保険会社の保険商品の比較・推奨販売を行う際には、取扱商品のうち、比較可能な商品の一覧を示し、特定の保険商品の提示・推奨を行う場合にはその理由の説明が求められることになった(第294条の3(業務運営に関する措置))。

 (2)保険募集人に対する規制の整備

 改正保険業法では、保険募集人に対する規制の整備として、3つのことを求めている。

 第一に、複数の保険会社の保険商品の取扱いの有無や保険募集人の業務の特性、規模に応じて、保険募集人が自社の体制を整備するよう求めている(第294条の3(業務運営に関する措置))。これまでは保険募集人の実態の把握・管理・指導は、保険会社のみが監督責任を負っていた。しかし複数の保険会社の商品を扱う乗合代理店(保険募集人)について保険会社のみがその実態の把握・管理・指導を行うには一定の限界が生じている。そのため保険募集人に対しても、募集の実態に応じた体制の整備を義務付けるというものである。

 第二に、帳簿書類の備付け(第303条)と事業報告書の提出(第304条)である。従来、保険仲立人(保険ブローカー)のみが事務所ごとにその業務に関する帳簿書類を備え、保険契約者ごとに保険契約の締結の年月日等の記載・保存と事業報告書の作成・提出を求められていたが、その対象が保険募集人にまで拡大された。

 第三に、今までも保険業法第128条第2項や第129条第2項等によって保険募集人は金融庁の立入検査の対象になっていたが、今回、保険募集人の外部委託先もその対象となった(第305条(立入検査等))。

保険窓販への影響

 現在も保険募集の実務の現場では、「保険会社向け総合的な監督指針(以下、「監督指針」という)」をもとに顧客のニーズを確認・把握し、適合性原則を確保するための意向確認書面の作成・公布が行われているはずである。また、銀行の窓口では、保険に限らず様々な金融商品の販売が行われており、今回の保険業法改正をみて、「既に十分な対応を行っていて特別な対応は必要ない」と思うかもしれない。しかし、報告書を読んでみると、その要求は決して容易なものとは思えない。

 銀行の窓口に保険の相談に訪れる顧客を想像したときに、「この保険に加入したい」といった具体的な意向を持っている人は相当程度稀である。ほとんどの人は、保険に対するニーズが曖昧な状態と考えられる。そのなかで保険募集人と対話しながら保険会社や保険商品(保険金額・保険料を含む)を選ぶはずだ。このような場合(※7)について報告書は、顧客に対して個別プランの作成・提案を行う都度、顧客に交付する書類の目立つ場所に、保険募集人が推定している顧客の意向と現在の提案内容がどのように対応しているかを分かりやすく記載・説明すること、更に契約締結前の段階では、顧客の最終的な意向と保険募集人が推定した顧客の意向・個別プランが合致しているか確認を取ることを求めている。

 これは、今回の改正の中でも「意向把握義務」における一例に過ぎないが、他にも、銀行を比較・推奨販売を行う乗合代理店とすると、今後の公表が予定されている内閣府令や監督指針の内容によっては、保険窓販業務に想像を超える影響を及ぼす可能性がある。

1) 本改正は、公布の日から2年以内の政令で定める日から施行としている。但し、「保険仲立人に対する規制緩和」等は公布の日から3月以内の政令で定める日、「運用報告書の電磁的交付方法の多様化」「子会社業務範囲の特例の拡大」及び「共同保険における契約移転手続に係る特例の導入」は公布の日から6月以内の政令で定める日としている。
2) 銀行法 第12条の2
3) 金融商品取引法 第37条の3
4) 改正の内容は、「保険募集の基本的ルールの創設」「保険募集人に対する規制の整備」「海外展開に係る規制緩和」「保険仲立人に係る規制緩和」及び「実態に合った顧客対応を可能とするための規制緩和」の5つからなる。
5) 本稿では、銀行が、内閣府令で定める特定保険募集人に該当する前提で記載する。
6) 具体的な改正内容は、主に、保険業法第294条(情報の提供)、第294条の2(顧客の意向の把握等)、第294条の3(業務運営に関する措置)、第303条(帳簿書類の備付け)、第304条(事業報告書の提出)及び第305条(立入検査等)から読むことができる。
7) 保険募集人が顧客の意向を推定して提案・説明する場合。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

野崎洋之

野崎洋之Hiroyuki Nozaki

リテールソリューション企画部
上級コンサルタント
専門:リスクマネジメント、リスクファイナンス

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