1. HOME
  2. 刊行物
  3. 金融ITフォーカス
  4. カテゴリから探す
  5. 数理の窓
  6. 集中か分散か

集中か分散か

2014年10月号

金島一平

東海道新幹線が10月1日に開業50周年を迎えた。高速鉄道は国の技術の粋を集めて作られた、いわば国の顔ともいえる存在だ。その進化の歴史は一様ではなく、国土事情を色濃く反映しているが、国によって違いのある特徴の一つに列車推進のための動力の配置方式が挙げられる。

 平野部が多く地盤が安定しているドイツやフランスでは、動力を先頭車両に搭載する集中方式が採用された。高速化のための出力向上を図りやすく、故障時のメンテナンス性が高いというメリットがある。2007年4月3日には、フランスTGVが時速574.8kmという世界最高記録を樹立しており、これは後述の分散方式では未だ到達できていない速度だ。

 一方、山岳地帯が多く地盤が弱い箇所が多い日本やイタリアでは、動力を複数の車両に分けて搭載する分散方式が採用された。この方式では、特定の車両に重量が偏らないため、カーブを高速で通過すること ができ、線路への負担が少ない。また、乗り心地を向上させるために曲線区間で車体を傾ける振り子機能の技術革新をもたらした。

 1990年代、各国で高速鉄道車輌の開発が加速するなかで、集中方式対分散方式の対立構図が鮮明になった。その様子は各国メーカーの他国展開に見て取ることができる。韓国と台湾の高速鉄道建設をめぐる、集中派欧州連合と分散派日本連合の攻防が好例だ。欧州連合は高速性能と低コストを、日本連合は安全性と快適さをアピールして売り込みを行ったが、韓国は集中方式を、台湾は分散方式(※1)を採用するという対照的な結果になった。

 このように、高速鉄道業界で勢力を二分していた集中方式と分散方式であるが、潮流が変わりはじめている。集中方式を牽引してきたドイツ、フランスのメーカーが一転、分散方式の車輌を開発するようになったのだ。フランスTGVの後継といわれるAGV、ドイツICEの新型車輌は、いずれも分散方式を採用したことで話題となった。背景には、機器が小型化され客室下に収められるようになったこと、モジュール化によってメンテナンス性が向上したことがある。他国展開も分散方式がメジャーとなってきており、将来的に集中方式の高速鉄道車輌は姿を消すことになると予想される。

 集中投資家として知られる米著名投資家ウォーレン・バフェット氏が、今年2月の投資家向け書簡において分散投資の大切さを説き話題となったが、どうやら高速鉄道業界においては分散方式が最適解であるというのが結論のようだ。

1) 正確には、車輌は日本方式だが、線路や信号システムは欧州方式をベースとした折衷方式である。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

印刷用PDF

Writer’s Profile

金島一平Ippei Kanashima

出向中

この執筆者の他の記事

金島一平の他の記事一覧

このページを見た人はこんなページも見ています