1. HOME
  2. 刊行物
  3. 金融ITフォーカス
  4. カテゴリから探す
  5. アセットマネジメント
  6. 世界から見た日本の不動産投資の魅力

世界から見た日本の不動産投資の魅力

2014年10月号

公共経営コンサルティング部 上級研究員 谷山智彦

世界的に不動産価格指数が上昇しているなか、日本の不動産市場はブームに乗り遅れているように見える。しかし、不動産投資の魅力を国際的に比較してみると、日本の不動産は経済のファンダメンタルズから見ればまだ割安であり、比較的安い取引単価で魅力的な利回りを享受できる環境にある。

再び上昇傾向にある世界の住宅価格と乗り遅れる日本

 国際通貨基金(IMF)は、2014年6月、Global Housing WatchというWebサイト(※1)を立ち上げた。これは、2008年からの国際的な金融危機が、米国の住宅市場を発端として世界中に伝播した教訓を踏まえ、住宅市場に関する世界各国の指標や情報、それらの分析及び政策対応の有効性に関する議論等を総合的に提供するものである。

 このIMFのGlobal Housing Watchによると、2013年は世界52カ国のうち33カ国で住宅価格の上昇が見られ、GDP加重ベースで計算した世界住宅価格指数(Global House Price Index)は、2012年第2四半期から上昇に転じ、直近の2013年第4四半期時点まで7期連続で上昇し続けている。未だ2008年の危機直前の水準までは回復していないが、世界全体で見れば不動産市場は再び上昇傾向にあると言える。

 しかし、日本の住宅価格に関しては、直近値で対前年比−1.93%、世界52ヶ国中38番目の低さとなっており、再び上昇し始めた世界の不動産ブームから取り残されているように見える。

ファンダメンタルズから見れば割安な日本の住宅価格

 一般に、不動産バブルとは、不動産価格が経済のファンダメンタルズから乖離することとされる。IMFのGlobal Housing Watchでも、不動産バブルの兆候を捉えるために、世界各国の住宅価格の対賃料比率と対収入比率を四半期毎に更新し、住宅価格が各国経済のファンダメンタルズから乖離していないかチェックしている。

 図表1は、各国の住宅価格の対賃料比率と対収入比率を、歴史的な平均値からの偏差として比較したものである。プラスであれば住宅価格が過大評価されており、マイナスであれば過小評価されていることになる。2013年第4四半期においては、多くの国で住宅価格が過大評価されており、収入水準から見れば手頃な価格ではなく、賃料水準から見れば低下の余地があると言える。しかし、日本は対収入比率でも対賃料比率でも世界で最も過小評価されており、現時点においては、経済のファンダメンタルズから見て割安だと考えられる。

 このうち、住宅価格の対賃料比率は、株式市場で言えば株価収益率(PER)と等しい概念であり、不動産投資利回りの逆数を意味する。2013年第4四半期における日本の住宅価格の対賃料比率は、その歴史的な平均値から見て特に低くなっており、世界のなかでも最も不動産投資利回りという観点から魅力的ということになる。一般に、グローバルに不動産への投資を行う投資家は、「イールドスプレッド(不動産投資利回りと長期金利の差)」を用いて説明することが多い。日本の長期金利は極めて低い状況が続いているため、このイールドスプレッドから見ると、更に日本への投資妙味が存在することになる。

取引単価で見ても魅力的な日本の不動産

 ここで、不動産の「取引単価」という観点からも日本の不動産の姿を見てみよう。私たちが住宅を購入する場合を考えてみると、その物件を賃貸した際に得られる利回りよりも、平米単価や坪単価等の取引単価で物件を比較していないだろうか。それは、実物資産である不動産は個別性が強く、容易に面積を分割できないため、総額と面積の異なる複数の不動産の比較においては、取引単価という金額水準を指標とする方が一般には分かりやすいためである(※2)。

 実際に、各都市の取引単価を見てみると、より実感として日本の不動産の魅力が見えてくる。図表2は、主要都市の主要エリアに立地する同規模のマンション(※3)に関して、平米単価と賃料利回りを示したものである。東京の不動産の取引単価は、デフレや円安の影響もあり、ロンドンやニューヨークだけではなく、香港やシンガポールよりも安い。つまり、海外投資家にとって見れば、他都市に比べて少ない資金で、東京の高い賃料利回りを生み出す不動産に投資することができる状況にある。

 最近、海外投資家が、日本の不動産に積極的に投資しているというニュースをよく聞かないだろうか。海外機関投資家による大規模オフィス物件の取引だけではなく、特にアジアの個人富裕層による高級マンションへの投資も多く見られる。実際に、海外投資家のコメント等で「東京の不動産は安い」と言うことがあるように、利回りだけではなく、取引単価も併せて考えている場合が多い。

 本稿で見てきたように、世界的に見れば日本の不動産は、他国に比べて割安であり、イールドスプレッドが高く、取引単価も安い。国内の不動産市場だけを見て不動産投資の可否を判断するのではなく、海外の不動産市場との比較を行うことで、増加している海外投資家の考え方や、日本における不動産投資の本当の魅力を捉えることができるのではないだろうか。

1) http://www.imf.org/external/research/housing/
2) 厳密に言えば、不動産の取引単価と賃料単価、そして期待利回りには密接な関係があるため、不動産の投資魅力度を違った視点から見ているに過ぎない。
3) 原則として、2013年の各都市の主要エリアにおける120㎡のマンションを対象としている。なお、各都市の主要エリアとしては、例えば東京であれば千代田区、港区、渋谷区の3区を、ニューヨークであればLower Manhattanを対象にしている。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

印刷用PDF

Writer’s Profile

谷山智彦Tomohiko Taniyama

ビットリアルティ株式会社
取締役
専門:オルタナティブ投資

このページを見た人はこんなページも見ています