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拡大する中国P2Pのリスクとチャンス

2014年9月号

NRI北京 金融システム研究部長 神宮健

中国のインターネット金融ではP2Pが増えている。イノベーションを活かしつつ、リスクをうまく抑制できれば、長年の課題であった中小企業の資金調達難の解決に一役買うことが期待できる。

台頭するP2P

 中国のインターネット金融は「余額宝」(※1)で一気に市民権を得た感があるが、P2Pやクラウドファンディングといった領域も拡大している。ここでは最近増加が著しいP2Pを取り上げる。

 P2Pは、インターネット上において個人対個人の貸借の場を提供するプラットフォームであり、中国でも2010年ごろから増えている。P2P(プラットフォーム提供会社)の正確な数は不明だが、人民銀行によると2013年末で350社強が存在すると言われ、また、P2Pのポータルサイトである網貸之家によれば、13年末で約800社、14年6月末では1184社(※2)となっている。「拍拍貸」、「陸金所」、「宜信」といったところがよく知られる。

 網貸之家によれば、2014年前半の取引額は約818億元、平均金利は20.17%、借り手側は18.9万人、投資側は44.36万人で、6月末の融資残高は約477億元である。昨年の余額宝ブーム以降、インターネットにおける自由金利での資金運用が広がり、ここでも金利自由化が市場主導で更に進んでいることが分かる。

 ただし、最近のP2Pを見ると、純粋な個人間貸借用のプラットフォームではなくなり、実態的にはインターネットを通じて広く資金を集めて、それを個人や小企業に融資しているところも多い。電話セールスなども使って大掛かりに事業を展開しているところもある。従来から存在している小額貸付会社と融資先をめぐり競争が生じる一方、逆に、資金集めはP2P、融資はノウハウのある小額貸付会社というように業務提携する動きも出ている。

P2Pのリスクとチャンス

 こうしたP2Pについては、基本的に規制が存在しないことが以前から問題視されてきた。昨年は、地方政府のプロジェクト向け銀行融資への規制が厳しくなる中で、規制回避のためにP2Pを経由して資金が流れていることが、シャドーバンキングの一例として問題となった。

 また、P2Pの中には、一部の高利貸しが資金調達にインターネットを利用しているだけというものもあり、景気鈍化の中で融資資金の回収ができなくなり、夜逃げするケースも特に今年になり増加している。悪質な詐欺のケースも出ており、午前に開業して午後に資金を持ち逃げしたという事件も報道されている。

 法律面では、実体上、P2Pが集めた資金をプールしてから融資しているのは、銀行ライセンスを持たずに預金集めをしているのと同じであり、違法行為ではないかとの疑問が投げかけられている。また、一部のP2Pが元本保証を投資家に提供している行為も、本来、当局の認可が必要なものであるとの指摘もある。

 一方、プラス面を見ると、長年問題となっている中小企業の資金調達難の解決につながる可能性を持っている。上述した小額貸付会社とP2Pの組み合わせは一例であるが、インターネットの利用により規模・コストの面で有利に資金が集められるため、これを信用調査や融資ノウハウ等とうまく結び付けられれば、これまで銀行から融資を得られなかった中小企業に、新たな資金調達ルートを提供できることになる。

今後の課題 規制とインフラの整備

 金融当局もこうしたP2Pの可能性を十分認識しており、リスクがあるからといってP2Pを一概に禁止する姿勢ではない。実際、足元で銀行業監督管理委員会(銀監会)が合理的な規制を研究中である。

 最近のインターネット金融の動きは、これまで漠然と銀行業務として捉えられていたものを、細分化する作用を持っている。このため、規制も伝統的金融かインターネットかという区分よりも、機能毎の区分に基づいてなされる必要がある。当局がインターネット内外での公平性を打ち出していることも、同一機能には同一のルールを適用するという意図であろう(※3)。その上で、中小企業金融への新たなルートの提供という芽をつまないようにする必要もある。

 現在、P2Pは誰でも始められることでリスクが大きくなっていることから、資本金によるハードルの設定等、参入基準の規制が作られると見られる。また、一部のP2Pが既に自主的に実施している適格投資家の制度や、リスク準備金の積み立て制度の導入も考えられる。

 インフラ面では、P2Pはそもそも銀行が貸しにくい借り手を対象としているため、信用情報システムの構築が必要である。中国の信用情報システムとしては、人民銀行の「征信中心(CRC)(※4)」がある。その子会社である「上海資信」(1999年7月設立(※5))は全国性のP2Pの信用情報システム「上海資信網絡金融征信系統」(NFCS)(※6)を構築している(2013年6月)。現在はCRCとNFCSは独立しているが、もしもこの二つが接続されれば、中国全体として信用情報が得やすくなろう。

 このように、現在の中国P2Pは玉石混交の状況で、規制・インフラも整っていない勃興期にある。今後は、このP2Pを、いかにしてリスクを抑制しながら新たな中小企業金融のルートにするかが注目される。

1) eコマース最大手アリババの提供する決済サービス「支付宝」(アリペイ)口座上の遊休資金をマネーマーケットファンドで運用するもの。2014年3月号「急速に伸びる中国のインターネット金融」参照。
2)『経済参考報』(2014年7月30日付)による網貸之家『2014中国網絡借貸行業上半年報』の紹介より。
3) 人民銀行の『中国金融安定報告2014』では、以下のようにインターネット金融規制の5大原則の一つとして、公平な競争を挙げている。インターネット金融の革新は、①金融が実体経済に貢献する、②マクロ調整や金融安定の全体的要求に従う、③消費者の合法的権益を守る、④公平な競争の市場秩序を守る、⑤業界の自律作用を発揮する、ことを求められる。
4) Credit Reference Center
5) 2009年4月よりCRCの子会社。
6) Net Finance Credit System

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

神宮健Takeshi Jingu

NRI北京
金融イノベーション研究部長
専門:中国経済・金融資本市場

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