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カードローン有望エリアと銀行支店網のギャップ

2014年9月号

IT事業推進部 上級コンサルタント 武井博一

アンケート調査結果は、カードローンが銀行にとって魅力的な商品であることを示している。しかし、銀行の支店網はカードローン有望エリアを攻めるには最適な配置とは言えず、今後は、エリア戦略が必要となるであろう。

カードローンの実態

 本年5月、野村総合研究所(NRI)はカードローンに関するネットアンケートを実施し、4万サンプルを回収、その分析を行った。ここでカードローンとは、銀行や消費者金融会社、信販会社において個人向けの無担保融資を利用するために発行されるカード(除くクレジットカード)によるローンのことである。

 最初に、カード保有率と年齢の関係をみると、全体での保有率は29%であるが、50代の保有率が36%であるのに対し、30代で22%、20代では17%と、若い人ほど保有率が低くなっている。単純に考えると、30代の人は、まだ64%(36÷22)の伸び代があると見ることができる。実際、非保有者に聞いたカードローンに対する関心度も、若い人ほど高い結果が得られている。

 では借入額はどうなっているか。カードローンに関しては、「現在借入なし」と回答した人がカード保有者の70%を占め、大半の人は、借入れをしても直ぐに返済するか、または借入れが常態化していないことがわかる。一方、貸出側から見た貸与状況を推計すると、30万円以上の借入がある人は、人数ベースでは16%であるが、総貸与額に占める比率は90%以上とみられ、貸し手側の収益が一部の顧客に集中していることがわかる。

 また、カード作成から時間が経つと借入額が増加する傾向も見られる。図表1は、2014年1月以降にカードを作った人と2010年1月~12月にカードを作成した人の現時点での借入額の分布(現在借入れがない人を除く)を比較したものだが、カード作成時は少額の借入でも、比較的短い時間(2~3年)で高額の借入にシフトしている実態が示されている。

 最後に、借入額別にお金の主要使途を見てみる(図表2)。借入額が少額の人の場合、「趣味」「遊興費」「旅行」といった、人生を楽しむためにカードローンを有効活用している人の比率が高いが、借入額が高額になるにつれ、「借入金の返済」を目的とした人の比率が高まっている。

 ここまでアンケートからカードローンの実態の一端を垣間見たが、「若い世代の取り込み」、「伝統的商品とは異なる新しい収益源」、「成長性の高さ」などの観点から、カードローンが銀行にとって重要な戦略商品に位置づけられていることが理解できる。

カードローン有望エリアと支店網のギャップ

 ここでは、戦略商品として重要なカードローンを展開する上で、既存の支店網の配置が必ずしも最適とはなっていない可能性を示したい。そのためには、町丁目単位のカードローン潜在需要を推計する必要がある。今回用いた推計手法(※1)は、アンケート結果をエリアタイプ(※2)と紐付けて分析するものである。

 はじめに、アンケート回答者の住所をNRIが作成した20のエリアタイプに変換して、エリアタイプ毎のカード借入額の平均値を集計する(図表3の青線グラフ)。次に、エリアタイプにより異なるカード借入額の多寡が、エリアタイプのどのような特徴(例:年齢や金融資産等)に依存しているかを統計的に処理し、図表3の青線グラフを再現する統計モデル(※3)を構築する。図表3の赤線はこのモデルによる推計値であり、アンケート結果(青線)をよく再現している。このモデル式を用いることにより、全国の町丁目単位の「カードローン平均借入額」を推計することが可能となる。

 NRIでは本年2月、全国の駅1km円商圏の地域特性を分析、その一環として預貯金集計結果を公表した(※4)。この預貯金額と今回推計したカードローン借入残高を都営大江戸線の全駅を対象に比較したものが図表4である。

 このグラフを見ると、「預金を集める」または「金融資産を持っている人に金融商品を展開する」という視点からは赤線が上に振れている麻布十番駅や六本木駅などが有望な駅と考えられる。一方、「カードローンを展開する」という視点からは、青線が上に振れている光が丘駅や東中野駅など異なる駅が有望となる。

 赤線と青線のギャップは、銀行の既存経営資源(店舗・ATM・人材)の配置が、カードローン展開という側面からは必ずしも最適なものとなっていない可能性があることを示している。銀行のカードローン戦略は、自社商品の認知度を上げるコマーシャル等の活動とともに、今後は地域特性を勘案したエリア戦略を検討する段階に入ると考えられる。

1) ここで示した分析手法は、NRIが関連特許取得済みの独自分析手法である。
2) 全国の町丁目を、金融の視点からみて20のタイプに分類したもの。例えば、「金融資産が少ない60代夫婦世帯が多く住む地方エリア」、「住宅ローンを抱え高層マンションに住む新しい準富裕層地域」というタイプがある。
3) ここで用いたモデル式は以下の通り。(平均借入額:万円)=174×Exp{4.2×(女性共働き指数)+49.5×(高校生人口比率)+2.7×(準富裕層比率)-0.95×(富裕層比率)+7.1×(住宅ローン残高)+15.3×(60-64歳比率)+1.1×(借家世帯比率)}このモデル式における準富裕層比率は、世帯金融資産が3000万円~1億円の世帯比率、富裕層比率は1億円以上の比率と定義している。準富裕層比率がプラスに働くことに関しては、金融資産が少ない地域では与信枠が小さく借入額は大きくならず、高額な借入が可能な人が多い地域では、所得も高く準富裕層比率が高い地域と相関があると解釈する。
4) 2014年2月7日NRIプレスリリース。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

武井博一Hirokazu Takei

コーポレートイノベーションコンサルティング部
上級コンサルタント
専門:データ分析&コンサルティング

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