1. HOME
  2. 刊行物
  3. 金融ITフォーカス
  4. カテゴリから探す
  5. リテールビジネス
  6. 退職世代の定期的インカムニーズへの対応が重要となる投信

退職世代の定期的インカムニーズへの対応が重要となる投信

2014年7月号

金融IT ナビゲーション推進部 上級研究員 金子久

高分配ファンドへの人気に陰りが見えている。このため投信業界では、退職世代の定期的インカムへのニーズに対応するため、新たな商品開発が必要になっている。

 毎月分配型投信への資金流入が変調を来し、高分配ファンドにすら資金が流入しづらくなっている。依然売れ筋ランキング上位に毎月分配型投信、中でも高分配ファンドが名を連ねている現状からすれば、いささか誇張した表現に聞こえるかもしれないが、その状況はデータでも確認できるほどはっきりしてきている。

毎月分配型投信への資金流入が減少

 2013年度の追加型株式投信(以下ではETFを除く)への販売額は前年より24%増の31.6兆円と、初めて30兆円を超えた。販売額の増加に大きく寄与したのが国内外の株式ファンドを多く含む非毎月分配型投信で、販売額は前年度の倍の13.2兆円となった。

 対照的に毎月分配型投信の販売額は前年度に比べ、6千億円ほど減少した。販売額は依然18.5兆円と水準自体は高いものの、かつてのような増加はここ数年見られなくなっている。さらに資金純流出入額(設定-解約-償還)をみると2.0兆円の流入に留まり、リーマンショックを含む2008年度を除くと2003年度以降で最も少ない額となっている(図表1)。このように毎月分配型への資金流入は明らかに変調している。

高分配ファンドの人気に陰り

 毎月分配型投信は分配金利回りが高いほど売れると言われていたが、最近では高分配利回りファンドと言えども流入する資金が少なくなっているようだ。図表2(A)は、分配金利回りが高い順に毎月分配型投信を5分位に区分し、それぞれの区分毎の資金純流出入額を見たものだ。2011年度上期までは分配金利回りの最も高い第1分位のファンドには半期で3兆円以上の資金が流入していた。それが同年9月頃を境に変化し、資金流入額は半分以下に減少している。分配金の支払額も加味した資金流出入をみると、これはより顕著になる(図表2(B))。2011年度下期以降は、第1分位のファンドからも資金が流出している。高分配ファンドほど分配金の支払いが多額となり、資金純流入が大きく引き下げられるためである。

 高分配ファンドへの資金流入がなぜ変化したのであろうか。第1分位に属するファンドには通貨選択型や海外不動産投信型、新興国債券型が多く含まれている。これらの分類では2011年頃、分配金込み基準価額は上昇しているものの基準価額自体は下落する、つまり運用収益以上に分配を行ったファンドが目立った。このような状況は当局(※1)やメディア(※2)に問題視されることになった。このため、販売会社は高分配ファンドの販売に慎重になり、個人投資家自身も安易に購入しなくなったと考えられる。

退職世代の定期的インカムニーズへの対応が重要

 高分配ファンドは再びかつてのように人気を集めるようになるであろうか。恐らくはその可能性は低い。なぜなら、残高に基づく収入を得る投信会社にとっては、分配金を多くしても、その支払いを加味すれば結局は資金流出してしまうのでは意味がない。販売額に代わり預り残高を重視する姿勢に転換しつつある販売会社としても同様である。また、個人投資家も運用実績以上に高分配を続けるファンドのデメリットを広く認識しつつある。

 もっとも、定期的な収入に対する退職世代のニーズは今後も存在し続けることは間違いない。その退職世代のニーズを改めて考えると、資産運用によって得られる定期収入が多いこともさることながら、その収入が生涯にわたって確保されることであろう。そうだとすれば、投信会社や販売会社は、今までのように、ことさら定期収入の多さを強調するばかりでなく、顧客の資産を枯渇させないようなキャッシュフローのコントロールを訴えかけていくべきであろう。

 このために運用会社は多くの資産クラスへの分散投資や必要なリスクコントロールにより効率的な運用を行い、長期に渡り安定的な分配を行うべきだ。そして、販売会社は顧客のリスク許容度や保有している資産を包括的に把握した上で、「資産の枯渇を避けつつ、取り崩しも含めて幾らまでなら定期的収入を確保できるか」などの大凡の目安を示すべきだ。さらに運用の実行段階では、予定した定期収入を顧客に提供するため、分配金の過不足に応じて再投資や解約などの手続きを行うことも考えられる。これらを投信会社と販売会社が独立して企画しても退職世代顧客の望むサービス水準に達することは難しい。投信会社による運用と販売会社による顧客対応や事務との連携を考慮して商品やサービスの開発を行うべきだ。

 最近、投資商品の普及については現役世代を主要ターゲットとした議論(※3)が多いが、多額の金融資産を保有し資産収入への依存度が高い退職世代に対する運用サービスの重要性も忘れてはならない。

1) 平成23事務年度 金融商品取引業者等向け監督方針(金融庁、2011年8月26日)。
2) 「健全分配ファンド20」(ダイヤモンドZAi、2012年4月号)。
3) 例えば、6月12日公表された金融・資本市場活性化有識者会合の提言では「投資家のライフステージやリスク特性等を踏まえた投資商品の提供・普及」の重要性を指摘し、専ら現役世代を主要ターゲットとした確定拠出年金やNISAの利用促進を訴えている。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

印刷用PDF

Writer’s Profile

金子久Hisashi Kaneko

金融イノベーション研究部
金融制度イノベーション研究室長
専門:個人金融マーケット調査

この執筆者の他の記事

金子久の他の記事一覧

注目ワード : 分配型投信

このページを見た人はこんなページも見ています