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期待される国内インフラ事業への機関投資家の参加拡大

2014年6月号

公共経営コンサルティング部 上級研究員 持丸伸吾

オルタナティブ投資の一つとして拡大しているインフラ投資が、わが国でも可能になり、空港では実際に入札のプロセスが始まっている。機関投資家にとって新たなアセットクラスとしてインフラ投資の機会が訪れている。

取り残された日本の「インフラ投資市場」

 近年オルタナティブ投資の選択肢の一つに「インフラ投資」というアセットクラスが勃興し拡大している。インフラ投資の特徴としては、その対象がエネルギー、ユーティリティ、交通などの規制事業であり、そのため収益が長期的に安定しているという点がある。また一般的にはそうした事業・収入形態の特性から、インフレヘッジのミドルリスク/ミドルリターン型の投資とされている。個々の投資規模は数十億円(地方空港、小規模水道事業など)から数千億円(首都空港、大規模な発送電事業など)までかなりの幅がある。投資スキームとしては、PEファンド(※1)のような有限責任組合形態でLP出資(※2)というものが多い。グローバルでみるとこうしたインフラ投資を行うインフラファンドの資産残高は毎年拡大しており、現時点で2000~3000億ドル規模の市場がある。

 このように、世界的に発展を続けるインフラ投資市場であるが、日本には投資対象となるアセットが存在せず、国内投資家も投資経験のある機関はほとんどない。その理由としては、海外で投資対象となっているインフラ事業(エネルギー、上下水道、道路、空港など)は、日本においては国や地方自治体、もしくは特殊な法人が運営を行うことが法律で定められており、投資家としての参画可能性はごく一部に限定されてしまうためである。

 また、インフラ投資の主要なセクターであるエネルギー分野をみると、欧州等では発電所や送電網といった機能別にアセットファイナンス形態での調達が行われるのに対し、日本では電力会社のコーポレートファイナンス形態にほぼ限られる。同様に主要な投資セクターである交通分野でも、高速道路、空港(新東京国際空港、中部国際空港、関西国際空港)は会社形態で管理運営されているものの、原則として社債投資に限定されている。

 このように、わが国におけるインフラ事業は、国債や地方債、もしくは特殊な法人の発行する債券による資金調達で実施されており、インフラ投資の対象となるアセットは実質的に日本国内には存在しなかったといえる。

 そうした状況を大きく変える可能性のある法律が2011年に成立した改正PFI法(民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律)である。

コンセッションによる新たなインフラ投資市場創設

 このPFI法では、これまで法律により国や地方公共団体、もしくは特殊な法人等しか行うことができなかったこうしたインフラ事業の運営を、公共施設等運営権(いわゆるコンセッション)(※3)という形態で民間の法人が実施できるようにしていることが大きな特徴である。この公共施設等運営権制度の導入により、水道事業や空港事業などのインフラ事業への民間事業者による投資がわが国でも可能となった。

 現在、具体的な投資対象として検討が進められている案件としては、空港分野が先行している。国が管理している仙台空港は、2014年4月に「仙台空港特定運営事業実施方針」が公表されており、6月にも事業者募集のプロセスが開始される見込みである。より大型の案件としては、関西空港・伊丹空港の公共施設等運営権の売却が同時期に行われることが予定されている。この関空・伊丹の案件では毎年400億円の運営権対価を45年にわたり支払う、つまり単純総額で1兆8千億円もの金額に達する、との報道もある(※4)。

 条件次第ではあるが、関空のような基幹的な空港は今後数十年にわたり航空市場の成長を背景に安定的な収益が期待できる。そのため、海外の機関投資家からみても十分に魅力的な投資案件となる可能性が高い。実際、昨年筆者が空港への投資経験をもつ海外のインフラファンドにインタビューを行ったところ、複数の機関で本件について投資可能かどうか情報を収集しているとのコメントがあり、海外からも関心が高いことがうかがえた。また本件では、エクイティ投資のほかメザニン、ローン証券化などでも機関投資家に参加機会があると見込まれ、その規模は数千億円規模と想定される。

 仙台や関空の他にも、福岡、高松、広島、静岡など全国で10空港近くが運営権の売却を検討しているとの報道もあり、今後継続的に、投資対象案件として空港運営事業が供給されてくることが期待できる。

 このように、わが国におけるインフラ事業においても徐々に金融投資家、事業投資家による事業への参画機会が具体化しつつあり、インフラ事業というアセットクラスがオルタナティブ投資の対象として出現するのは目前の状況である。

期待される国内投資家のインフラ投資への参画

 一方、国内ではインフラ事業への投資経験がある機関投資家は極めて少ないのが現状である。これまではごく一部の機関投資家が海外のインフラファンドを通じた投資経験を有しているほか、商社を中心とした事業会社が直接投資をしている例が見られる。ただしそうした投資家はまだまだ少数であり、不動産を含めてもオルタナティブ投資経験は限られるというのが現状である。

 しかし、内閣府の調査(震災復興事業への民間資金の参画意向把握等調査(※5))によると、インフラ事業への投資に対する意欲をもつ投資家も多くあり、実際に日本国内でそうした投資機会があれば、確実に参画する投資家の数は広がっていくものと考えられる。

 また、詳細な投資スキームは未定であるものの、国内の機関投資家等が安心して投資できる仕組みとしての役割も期待される、民間資金等活用事業推進機構(PFI推進機構)が2013年に設立された。この機構は、政府と金融機関が出資して作られた株式会社形態のインフラファンドだが、15年の時限組織であるため、ある種のプライマリーファンドとして機能し、セカンダリ投資家にその機会を提供する役割を果たすことも期待されている。国内で新たに創設された公共施設等運営権の事業にこの機構が投資をした上で、安定的なキャッシュフローが明確になった時点で機関投資家等に売却することにより、初期の事業リスクを避けたい投資家に投資参画機会を提供できる。現時点でインフラ投資経験の少ない国内機関投資家が、今後増加すると見込まれる国内での投資機会に参入していくためには、こうした国のインフラファンドが先導していくことも有効な手段になりうるであろう。

 日本国内のインフラ事業は、今後国内の機関投資家にとってオルタナティブ投資の選択肢の一つとして、注目すべきアセットになってくると期待できる。

1) PE(Private Equity)ファンド:複数の投資家等から資金を集め、企業に中長期の成長資金を供給することにより企業価値を高め、後に売却することで高いIRR(内部収益率)を獲得することを目的とする、中長期の投資を主体とした投資ファンド。
2) LP(Limited Partner)出資:一般的な投資スキームである組合(パートナーシップ)形態での投資において、投資家の責任を出資分のみに限定した出資形態。
3) 公共施設等運営権は、海外ではコンセッションと呼ばれる事業の実施形態の一つとして理解されているものと考えてよい。国や地方自治体等のもともとの管理者から委任を受けた受託者が、利用者から徴収する利用料金の決定や、対象となる施設の維持管理、設備の更新等にかかる判断を自ら行うことができる、つまり自らの運営により事業価値を向上させ、その対価を自らの収入として享受できる仕組みである。
4) 2014年4月22日 朝日新聞。
5) 「震災復興事業への民間資金の参画意向把握等調査」2012年3月。http://www8.cao.go.jp/pfi/kouhyou.html

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

持丸 伸吾

持丸伸吾Shingo Mochimaru

グローバルインフラコンサルティング部
上席研究員
専門:インフラ事業・民営化等

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注目ワード : インフラファンド

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