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中国における最近の資金調達難と対応策

2014年5月号

NRI北京 金融システム研究部長 神宮健

中国では企業の資金繰りが厳しくなる中で、金融リスクが顕在化した。当局は、システマチックリスクを避ける方向で動いている。一方、中小企業金融では、新たな融資手法も見られている。

信託商品・社債のデフォルトリスク顕在化

 中国の企業の資金繰りが困難になっている。実際、2014年に入って日本でも中国の信託商品・社債のデフォルト危機が報道された(※1)。

 1月には山西省の炭鉱関連の民間会社が最終的な借り手となっている集合信託計画(プラン)の償還が困難になった(※2)。同商品は銀行が代理販売したものの、信託会社を経由した事実上の迂回融資(つまりシャドーバンキング)であったと見られる。このケースでは、地元政府や銀行が戦略投資家を呼び込み、資金調達することで資金を償還した。

 続いて、2月にも別の石炭関連の集合信託プランの償還が延期になり、債務リストラに入った。3月には、上海の太陽光パネル企業が期日までに社債の利払いができず、社債市場で初のデフォルト例となった(※3)。

 デフォルトリスクが顕在化した背景には、経済成長率が以前の9~10%から2012年以降は7%台半ばへ下方シフトしたことに加えて、昨年後半、当局がシャドーバンキングを抑制する中で、金融市場を絞り気味に運営したことがある。そうした中で、景気減速の影響を受けやすい産業や過剰設備問題が指摘されていた産業(太陽光パネルも一例)で、従来から抱えていたリスクが顕在化したのである。

当局の対応

 上述の例にもある集合信託プランは、2014年中に約9000億元が満期を迎えると予想されている(※4)。今年の政府の経済成長率目標が7.5%前後というマクロ環境の下では、今後も資金返済リスクが顕在化するケースが現れる可能性がある。

 返済リスクが顕在化した際のこれまでの地方政府・金融当局の対応を見ると、金融システム全体に影響が及びかねないシステマチックリスクは避ける方向である。上述の1月のケースでは元本が30億元と規模が大きく、ここでデフォルトとなると同様のスキームを使っている他のシャドーバンキングでも資金が回らなくなり、経済全体に悪影響が及ぶリスクがあった。

 銀行業監督管理委員会(銀監会)は、以前から地方政府融資平台・不動産・過剰生産能力の産業が借り手となっている信託商品(シャドーバンキング関連を含む)のリスクを警戒してきた。銀監会は2013年後半から各信託商品の資金繰り等をチェックし始めており、現時点ではある程度リスクを把握した上で状況をコントロールしようとしている節がある。ここでのリスクは、最終的には地方財政等によって短期的には問題を解決できる(より正確には先延ばしできる)にもかかわらず、対応遅れなど何らかのミスマネジメントが生じることである。

 一部には、救済策はモラルハザードを助長するため、返済不能になった金融商品はデフォルトさせてショック療法を行った方が良いとの考えもある。ごく最近までデフォルトが一件もなかったため、却って異常であると言われてきた債券市場を正常化・成熟化させるという点でも、この考え方には一理ある。

 その一方で、銀行預金は全額保証されるという暗黙の了解、さらにそれが拡大されて銀行で販売される商品は全額保証されているという社会全体の認識の下で、これまで金融商品が販売されてきた経緯を考えると、荒療治は難しいのではないかと思われる。

 当面は、ハイリターンにはハイリスクがある、といったリスク意識を社会に植え付ける、いわば地ならしの状況が必要である。実際、最近の中国国内の報道にはこうした投資家・預金者教育の姿勢が見られる。これは、預金金利自由化やその前提となる預金保険制度・金融機関の破綻処理スキームの導入においても必要とされるものである。

中小企業金融の必要性

 一方、構造的・長期的な観点からは、金融が引き締まる際に、本来資金が回らなくてはならないところ――具体的には中小企業等――から先に資金繰りが苦しくなるという中国で特に顕著な制度的な歪みをいかに改善するかが重要である。

 中国では、2003年頃から中小企業金融を促進するために様々な措置が打たれてきたものの(※5)、中小企業の資金調達難はあまり改善せずに現在に至っている。

 これには、中国経済が間接金融、特に国有大銀行に依存する中で、銀行側には中小企業に融資するインセンティブが小さいという根本的な問題がある。国有企業や地方政府に融資していれば、不良債権化のリスクは小さく、また、これまでは一定の利鞘が稼げたからである。

 この点では、マクロ面で現在、金利自由化が進展しつつあり、今後利鞘の縮小が予想される一方、資本市場の多様化や対外開放(海外での資金調達)も進みつつあることが重要である。80年代以降の日本と類似した状況であり、日本で見られたと同様に、銀行の優良顧客であった大企業の一部が銀行離れを起こすならば、中国の銀行も徐々に中小企業を重視する方向に向かう可能性がある。

 ミクロ面からは、中小企業の資金調達難を解決する仕組みを作る必要がある。最近の政策動向を見ると、民間銀行の設立がある。この主旨は農業関連や零細企業向け融資促進である。銀監会は3月に、民営銀行5行を試行的に設立するとした(※6)。株主としては、eコマース大手のアリババを含む参加企業10社が発表されており、天津・上海・浙江・広東で試行予定である。

 一方で、市場主導の動きもある。その一例がインターネット金融である。アリババは出店者に対して、過去の取引記録等を基に融資(上限100万元、最長12カ月)している(※7)。蘇寧雲商(旧蘇寧電器)も同様に零細企業を中心としたサプライヤー向け融資を行っている。

 また、ここ数年、サプライチェーンに対するファイナンスも始まっている。サプライチェーンにおけるコア企業の信用力を使い、ファクタリングや在庫金融等によりサプライチェーンの上下流企業に融資するもので、一部の銀行が数年前から手掛けている。

 規定の面でも、2012年6月の商務部「商業ファクタリング試行に関する通知」(※8)、2013年12月の銀監会「商業銀行ファクタリング業務管理暫定弁法」(草稿)が発表されるなど整備されつつある。金融の状況が厳しい中、危機対応の一方でこうした新たな動きも現れている点に注意を払いたい。

1) 日本では2014年に入って報道が増えたが、信託商品の償還問題は以前から存在した。
2) 中誠信託の集合信託計画(プラン)で工商銀行が代理販売したもの。集合(資金)信託プランは投資家(委託人)が複数のもの。単一(資金)信託は委託人が一人であり、シャドーバンキングにおける「銀信合作」でも使われる(銀行が委託人)。
3) それぞれ吉林信託の集合信託プランと上海超日太陽能科技の社債。上海超日は上場会社であるが銘柄名の前に上場廃止リスクが極めて高いことを示す「ST*」が付いた銘柄であり、経営状況が悪いことは知られていたはずである。
4) 中信証券の試算による(中国証券報2014年2月19日)。なお内数を見ると、不動産関連が2479億元、融資平台関連が2251億元である。
5) 2003年の中国共産党第16期三中全会で非公有制経済の発展が謳われた。中小企業促進法の実施も2003年である。
6) 銀監会は3月11日に民営銀行試行の最初の参加企業リスト(株主)を発表した。アリババ・万向・騰訊・百業源・均瑶・復星・商匯・華北・正泰・華峰の10社である。銀監会は上記10社の株主資格審査を行い、民営銀行(5行)のライセンスを発行する。
7) 2013年10月号「アリババ小口貸出の資産証券化商品」参照。
8) 天津市濱海新区・上海市浦東新区で商業ファクタリングを試行する旨の通知である。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

神宮健Takeshi Jingu

金融イノベーション研究部
上席研究員
専門:中国経済・金融資本市場

注目ワード : シャドーバンキング

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