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金融取引のグローバル化を見据えた新日銀ネット稼働を目指して

2014年4月号

グローバルソリューション事業部 営業担当課長 木綿芳行

金融取引のグローバル化ニーズに応えるべく、新日銀ネットが構築される。その稼働にあたってはさまざまな課題があるものの、国際標準化の流れに乗り遅れることなく、課題解決に向けて、市場インフラおよび参加者は取り組んでいく必要がある。

国際標準化に向けた日本金融市場インフラの取組み

 日本の証券決済制度改革では、2000年6月の金融審議会の報告書「21世紀に向けた証券決済システム改革について」に基づき、市場参加者と証券保管振替機構等の市場インフラを運営する機関などが横断的な取り組みを行ってきた。この取り組みは2009年株券電子化制度をもって一段落したが、その間、各種振替法の法整備、有価証券のペーパーレス化、清算機関の整備、DVP化の進展等、大きな成果を上げることができた。

 一方、決済システムの国際的な動きとして、2008年9月のリーマン・ブラザーズ証券破綻等のグローバル金融危機以降、“決済リスク削減”と“国際標準化”が求められている。このうち“決済リスク削減”について日本では、特に国債の決済リスク削減に向けた取り組みが大きく進展している。日本銀行(決済機構局)によれば、リーマン証券の破綻により、7兆円のデフォルト(債務不履行)が発生し、フェイル(受け渡しの遅延)の連鎖も累計6兆円規模に上ったという。この事態を受け、金融庁は、決済リスク削減策の一つとして、国債の決済期間の短縮を求めた(※1)。国債の決済期間短縮の実現には、先の証券決済制度改革と同様に市場参加者と市場インフラ関係者で横断的に検討する必要があった。そこで日本証券業協会は「国債の決済期間の短縮化に関する検討ワーキング・グループ(以下、WG)」を2009年9月に設置し、2011年11月30日に国債決済期間短縮化に向けた最終報告書を公表、2段階で国債の決済期間短縮化を実施する方針を示した。第1段階はアウトライト取引のT+2化(GCレポ(※2)のT+1化)であり、2012年4月23日約定分から実施された。第2段階はアウトライト取引のT+1化(GCレポのT+0化)で、実施時期は2017年以降とされ、現在、市場参加者と市場インフラ関係者はWGを中心に、積極的に実現に向けた活動を推進中である。

 “国際標準化”に向けては、たとえば、金融取引で利用される、XML(eXtensible Markup Language)を用いた通信メッセージに関する国際規格ISO20022(※3)の採用が市場インフラに求められているが、全銀ネット(※4)では2011年11月にいち早く採用され、システムの柔軟性も向上している。また、証券保管振替機構は、この規格を振替機関としてはグローバルでいち早く採用しており、2014年1月からはグローバルの金融ネットワークであるSWIFTNet(※5)との接続も実現している。

新日銀ネット構築の目的

 国際標準化の流れを受けて、日本銀行は現在、日本銀行金融ネットワーク(日銀ネット)を刷新し、金融取引のグローバル化や決済インフラのネットワーク化の進展に対応できる新日銀ネットの構築を進めている。

 例えば、ISO20022メッセージを採用することで、取引の起点から最終決済までのプロセスを一貫処理するSTP(Straight-Through Processing)化をサポートしている。また、国債銘柄コードについて証券決済分野での国際的なコード体系であるISIN(※6)を採用することで、証券保管振替機構や海外の証券振替機関等決済インフラや金融機関との接続性を向上させている。このように、汎用性の高い情報処理技術を採用することによって、国内外の利用者の利便性を向上させている。

 また、新日銀ネットでは、グローバルな決済インフラとして夜間・早朝における決済ニーズにも応えられるように、稼働時間の大幅な拡大(ほぼ24時間)が可能なシステム基盤を目指している。例えば、非居住者との日本国債・円貨の取引、海外からの円建て顧客送金の当日決済、金融機関が保有する日本国債の海外市場における担保としての活用等のニーズに応えられるインフラである。

 稼働時間に関する現時点の方針では、早朝は現行9時からとなっている稼働開始時刻を30分前倒し、夜間は19時まで拡大することとしている。稼働時間を更に拡大する場合の拡大幅とその実現時期については、2013年8月より、「新日銀ネットの有効活用に向けた協議会」において、新日銀ネットの有効活用のあり方等とともに、新日銀ネットを利用する市場参加者と検討を進めている。

新日銀ネット稼働によるグローバル化に向けて

 新日銀ネットへの移行については、円滑に進める観点で、稼働開始時期を2段階に分けて進めている。第1段階は2014年1月6日から実施され、一部の国債発行関係事務、金融調節等入札連絡事務などの移行が行われた。第2段階は、2015年秋から2016年初を目途に、第1段階の対象となっていない主要業務の移行が実施される予定である。新日銀ネット第2段階対応に向けて、市場参加者は現在、システム開発や事務見直し等作業を進めているところであるが、新日銀ネット稼働時間の更なる拡大については意見が分かれている。

 推進派は、ほぼ24時間稼働可能な新日銀ネットを積極的に活用して、金融取引のグローバル化ニーズに応えるべきという意見である。一方で、グローバル化ニーズは理解できるものの解決すべき課題があるのも事実である。事務面では、稼働時間に合わせた業務執行体制の構築が必要となる。現行の9時から17時を中心とした業務執行体制を24時間体制にするには、2もしくは3交代体制の検討が必要となる。また、新日銀ネットと接続する金融機関のシステム(対外接続系システム)では24時間稼働はそれほど問題とならない可能性が高いが、対外接続系システムへデータ接続するいわゆる勘定系システムが、24時間オンライン稼働する前提となっていないことが問題となりうる。

 ただ、2017年以降に予定されている国債アウトライト取引のT+1化(GCレポのT+0化)を乗り越えるためには、こうした課題を解決していく必要がある。国債をグローバルな商品とするためにも国債決済インフラのグローバル化は必要条件であり、新日銀ネット稼働はその大前提となるからである。現在日本の国債は国内でその多くが消化されているが、国の財政運営にとって資金調達先を多様化していくことは極めて重要になると考えられ、そのためには海外に広く投資家を求めることになる。非居住者による国債保有比率の低さについてはさまざまな要因があるといわれているが、国債決済インフラのグローバル化はその解決策の一つとなろう。

 市場参加者は、新日銀ネット対応をグローバルで低リスク・高効率な市場インフラ・慣行を構築するチャンスと捉え、グローバルな事務体制の構築、システムコスト低減に向けて、努力をしていく必要がある。

1) 金融庁は「金融・資本市場に係る制度整備について」を2010年1月22日に公表し、決済リスク削減策の一環として、国債の決済期間の短縮のほか、フェイル発生時の取り扱いルールの確立・普及を図ることを求めた。これによりフェイルチャージが2010年11月から導入された。フェイルチャージとは、予定されていた決済日が経過したにもかかわらず国債の受け方が渡し方から対象債券を受け渡されていない場合に、渡し方に対して金銭負担として賦課されるもの。
2) GC(General Collateral)レポ取引は、取引対象の債券が特定の銘柄である必要がなく、途中で対象債券を差替えることができる資金貸借的な性格をもつ取引。
3) ISO20022は、International Organization for Standards20022の略称。外国人投資家やグローバル・プレイヤーのプレゼンスの高まり、あるいは海外証券決済機関等の直接参加ニーズ等の高まりにともなって求められてくる、取引・決済システムの国際標準化の流れを受けて、ほふりが2014年1月導入した制度。
4) 全銀ネットは、「全国銀行内国為替制度」の運営を通じ、振込など国内の為替取引のために、金融機関の為替通知の授受および資金決済を集中的に行っている。
5) SWIFTは、Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunicationの略称。金融取引のための国際的な金融通信ネットワークを金融機関等に提供している。
6) International Securities Identification Numberの略称。債券、株式、先物等、様々な証券を識別するために利用される国際的なコード体系。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

木綿芳行

木綿芳行Yoshiyuki Kiwata

証券ホールセール事業一部
部長
専門:証券決済サービス

注目ワード : 日銀ネット

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