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金融一体課税への対応が早急に求められる銀行システム

2014年4月号

BESTWAY事業部 主任システムエンジニア 大野俊介

金融一体課税の税制改正に伴い、金融機関は特定口座の観点から公社債と投資信託を包括する業務・システムの構築が必要となる。対応期間が限られている中、公社債と投資信託の管理システムが異なる銀行では、早急な対応方針の策定が必要な状況となっている。

 2016年1月より、金融一体課税や共通番号制度等、金融機関へ大きな影響が予想される制度変更が立て続けに施行される予定だ。銀行では昨年、NISA導入に伴う対応が多忙であった結果、現時点で本件については未検討という金融機関も少なくないのではないだろうか。

 金融一体課税に関する税制改正は、既に多岐にわたる金融商品を扱っている証券会社よりも、銀行のほうが影響が大きいと思われる。本稿では、特に公社債に関する税制改正が銀行の業務やシステムにどのような影響を与えるかについて考えてみたい。

金融一体課税の流れ

 「貯蓄から投資へ」の流れを加速するため、政府は様々な金融一体課税に向けた制度を施行してきた。記憶に新しいのは2009年より上場株式や公募株式投信等の配当金が、それらの譲渡損益と通算できるようになった制度改正だ。2016年1月に行われる制度改正では、これに特定公社債(※1)が追加されることが確定している(※2)。

 今回の確定事項について、金融機関への影響が大きいと予想されるものが二つある。一つめは、特定公社債の課税方式の変更に伴い、特定公社債の取得日、取得価額の管理(実額管理)が必要になる点である。二つめは、特定口座の取扱い対象に公社債が追加となる点だ。

税制改正が与える銀行への影響

 まず一つ目について、特定公社債の課税方式が源泉分離課税から申告分離課税に変更される。今までは、金融機関は、額面・利率・利払日を管理して、顧客が売却する際に経過利子を計算していた。今後は、経過利子の計算を廃止し、新たに公社債の取得日・取得価格を管理し、譲渡計算を行う必要がある。その際、新規の預かり分だけにとどまらず、既存の預かり分についても取得日・取得価額の遡及を行わなければならない。また、支払調書の税務署提出や支払通知書の顧客送付も必要になってくるなど、膨大な規模の対応業務が発生する可能性がある。

 二つ目については、特定口座の取扱いの対象に公社債が加わることによって、銀行は、投信口座・公社債口座それぞれについて、保有有無や特定口座開設の有無を確認する必要がある。しかし銀行では、公社債は勘定系システムで管理し、投資信託は勘定系とは別のシステムで管理しているケースが多い。そのため、業務を行う際には二つのシステムの情報をそれぞれ確認しにいくか、一括して情報を照会できる仕組みをもつ必要がある。ここが既存の店頭業務で大きく変更となる点だ。さらに特定口座としては投資家の情報を一元管理しなくてはならない。特定口座に関連する帳票の作成、損益通算を加味した譲渡益・利子の源泉徴収及び還付の処理を、勘定系システムで行うか投信システムで行うか、といった問題も生じる。

 また公社債を特定口座に組み入れるにあたっては、投資信託の組み入れの際と同様に、組入可能な預りのシステムからの抽出、各投資家への組入可否の通知、その通知の回収とシステムへの入力、などが必要となると考えられる。これらが大きく業務に影響すると想定しておいた方がよいであろう。

勘定系(公社債)システムと投信システムの関係

 今回の税制改正はNISAとは異なり、銀行の金融商品の販売が伸びるといった効果はあまり期待できない。そのため、システム対応は、費用をなるべくおさえて、必要となる機能だけを構築することが求められる。

 それには特定口座を一元管理するにあたって、勘定系システムと投信システムの役割分担を検討することが重要だ。分担の方法としては以下の4案に大別される。

 一つめは、勘定系システムで税制対応を全て行い、投信システムは特に活用しないという案である。この案では、勘定系システムに新たに特定口座管理、損益通算、対客・税務帳票作成機能などを構築することになり、開発コストや対応期間が相応に必要になると想定される。

 二つめは、既に特定口座関連処理の機能が構築されている投信システムを活用する案である。まず勘定系で公社債の実額管理を実施する。そこで管理された日々の注文や利金の情報を投信システムに連携し、投信システムで源泉徴収、還付、損益通算及び特定口座関連帳票作成を行う、というフローである。投信システムの機能を活用する案ではあるが、勘定系で実額管理や譲渡の計算、一般預り分の税務帳票の対応を行う必要がある。

 三つめは、勘定系の公社債機能を投信システムへ全て移管・統合する案である。移行を伴うため業務、システムともに影響が非常に大きいが、移行を行った後に発生する各種税制改正については投信システムのみで対応が可能であるため、トータルコストの低減を図ることができる可能性がある。

 四つめは、勘定系の公社債機能を投信システムへ移管・統合するが、現状の公社債店頭販売業務は勘定系システムを継続して利用する案である。三つめとの違いは、注文や各種業務を投信システムで行わず、勘定系を介して連携する点である。この案のメリットは、営業店の公社債の業務を変更することなく、煩雑な税制対応を投信システムに集約できる点である。

 これらの案を検討する際に重要となるのは、勘定系及び投信システム全体のトータルコストを考慮するとともに、今後も発生しうる税制改正への対応のメンテナンスコストも加味することである。

 今回の税制改正は2016年1月からスタートするが、2015年7月以降発行される公社債(利払いが2016年1月以降)については、正しく実額管理することが義務付けられている。つまり、一部の業務やシステムの対応は2015年6月末までに完了している必要があるのだ。対応期間が限られている中で、システムや業務をまたがる大きな対応が要求されることから、早急に着手する必要がある。

 長期の資産形成という観点から、銀行が金融サービス提供者として果たす役割は非常に大きい。外部のシステムやリソースをうまく活用する等、率先して今回の税制改正に対処することが求められるだろう。

1) 特定公社債とは、今回の税制改正の対象となる国債・地方債・公募事業債等をさす。
2) 預貯金やデリバティブについても損益通算の対象としたいという税制改正要望も出されたが、今年度の大綱では見送られた。預貯金・デリバティブについてはシステム・業務とも対応が複雑なため、調整に時間を要すると思われる。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

大野 俊介

大野俊介Ohno Shunsuke

銀行ソリューション事業推進部
上級システムエンジニア
専門:投信システムの開発・企画

注目ワード : 金融所得一体課税