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『互いを定義しあう美しさ』=『双対』

2014年3月号

外園康智

幾何の問題を図なしで理解するのは難しいが、“言葉”だけで不思議な現象の説明を試みよう。

 「2つの直線l,mがあり、lの上に3点A1,B1,C1,mの上に3点A2,B2,C2がある。このとき『A1とB2を通る直線』と『B1とA2を通る直線』の交点をP、『B1とC2を通る直線』と『C1とB2を通る直線』の交点をQ、『A1とC2を通る直線』と『C1とA2を通る直線』の交わる点をRとすると、3点P,Q,Rは一直線上にある」(※1)

 「2つの点l、mがあり、lを通る3直線A1,B1,C1,mを通る3直線A2,B2,C2がある。このとき『A1とB2の交点』と『B1とA2の交点』を通る直線をP、『B1とC2の交点』と『C1とB2の交点』を通る直線をQ、『A1とC2の交点』と『C1とA2の交点』を通る直線をRとすると、3直線P,Q,Rは一点で交わる」

 二つの命題は、お互いに『点』⇔『直線』と『交わる』⇔『通る』を同時に入替たものと気づく。「射影幾何学の双対(そうつい)原理」と呼ばれる上位法則によって、片方が正しければ、もう片方も正しいことが保証される。これを知っていると、中学高校で難しくみえた幾何の問題は簡単に見通しが立つ。

 双対原理が成立する根拠は「2直線の交わりが点で、2点を通るのが直線」であるように、二つの対象がお互いを定義しあう関係にあることだ。これは“同一のもの”に“裏表”から二通りの記述法を与えているとも言え、二つの記述の入替えを“双対操作”と呼ぶ。例えば『正六面体』の面の中心点は合わせて6つあるが、それらを結ぶと『正八面体』になる。この操作を正八面体に行うと再び正六面体になる。つまり双対の双対は元に戻る性質がある。

 双対関係は、3次元空間内の『直線』⇔『平面』、『正20面体』⇔『正12面体』、『論理和』⇔『論理積』と『全称記号』⇔『存在記号』等々、数学や物理(※2)、論理学(※3)を超えて非常に重要な概念だ。

 経済学や経営の中でも、利益最大化と資源最適化のどちらを優先すべきか議論がある。この2つは線形計画法の下で双対関係にあり、実は同一の命題であることが、1951年にオランダの経済学者チャリング・クープマンスによって証明されている。よって悩む必要はない。

 ところで、知人から初めて会う2人の紹介として、「AさんはB君の恋人、B君はAさんのお友達」と教えられた。日常世界では、こんな双対関係もあるのだろう。。

1) 西暦320年頃アレキサンドリア人のパップスによって証明されたらしい。
2) 最新の美しい双対性として、“理論自体”を入替る、超ひも理論のストリング双対性が挙げられる。
3) 中学で習う『ド・モルガンの法則』はその最初の1つ。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

Writer’s Profile

外園康智Yasunori Hokazono

金融デジタル企画一部
上級研究員

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