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大規模プロジェクトにおける第三者評価PMOの重要性

2014年3月号

ERM事業企画部 主任コンサルタント 田島悠史

大規模システム開発プロジェクトにおいては、プロジェクト内でのリスクマネジメントとは別に、経営層によるリスクマネジメントが不可欠である。第三者評価PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)は、経営層と開発現場とをつなぎ、経営層にプロジェクトの可視化等を通じた強固なリスクマネジメントを実現させるのに有効な手段となる。

経営層に必要なプロジェクトリスクマネジメント

 システム開発プロジェクトには、金融機関の勘定系システムの刷新のように、大規模であるとともに、失敗した場合に影響が大きいものがある。このようなプロジェクトでは、現場のプロジェクト推進側におけるリスクマネジメント機能とは別に、経営層側のリスクマネジメントが不可欠である。プロジェクト推進側(業務執行側)とは異なる監督の視点からプロジェクトの内容を的確に把握することが失敗を未然に防ぐ上で重要なことに加え、プロジェクト推進側のリスクマネジメントが専門家不足などの理由から不十分であることが多いからである。リスクマネジメントは負担も大きく、リスクが顕在化しない限り効果がわかりづらいため、重層的なマネジメント体制を整えることに抵抗感も強い。失敗した場合の損失の大きさを踏まえ、経営層が率先して積極的に推進することが重要になる。

第三者評価PMOの有効性

 大規模プロジェクトにおいては、いわゆる「プロジェクト監査」が行われるのが普通である。これは、内部監査や外部リソースを活用し、プロジェクトの推進側とは異なる立場の第三者が、プロジェクトを成功させるためにさまざまな観点から問題がないかを確認する作業である。しかし、プロジェクト監査はしかるべきタイミングで行われるもので、常時、問題をチェックしているわけではない。そのため、もっと日常的な形で監査に近い仕組みがあるとリスクマネジメントがより強固になる。

 近年、プロジェクト内にPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)を設置することが一般的になっているが、プロジェクト内のPMOはあくまでも推進する側に属し、第三者ではない。そこで明確に第三者的な立場から評価・提言を行う役割をPMOに持たせることが、「プロジェクトリスクのタイムリーな察知」と「プロジェクト監査に耐えられる品質確保」の観点で非常に有効になる。PMOの中にあって、しかもプロジェクトの推進側とは異なる立場を取ることから、この役割(または組織)を「第三者評価PMO」と呼ぶこととする。

 それぞれのPMOは、役割や目線に違いがあるため、体制的には分けて考えるべきである。第三者評価PMOは、プロジェクト監査側や経営層と、PMOを含むプロジェクト側との橋渡し的な存在と考えればよい。通常、監査人は監査には精通しているものの、プロジェクトマネジメント、システム開発、プロジェクトを推進する企業の業務などの知識があるとは限らない。第三者評価PMOはこうした知識を持つ有識者として、第三者の目線で評価・提言を行う一方、開発側やPMOと協同作業を行うことにより、経営層とプロジェクト側の双方に貢献するのである。

第三者評価PMOに必要な機能

 図表に、第三者評価PMOに必要な機能と具体的な活動例を示した。ただし、機能を画一的に定義することは難しく、その時々に必要かつ最適な機能を持たせるという考え方が適切である。

 このなかで経営層に貢献する機能としては「プロジェクト状況の可視化」があげられる。大規模プロジェクトでは、上位の会議になるほど都合の悪い状況が報告されなくなり、経営層がプロジェクトの実態を正確に掴めないということは少なくない。そこで第三者評価PMOが、現場の管理資料を確認したり現場の会議に出席したりして生の情報を吸い上げ、報告されていない情報を経営層に伝達する。それにより経営層がリスクと認識した事項に対しタイムリーな対策が打てるのである。

 プロジェクト側に貢献する機能も少なくない。プロジェクト内での品質評価とは別にさらなる品質向上を目指す「第三者による品質評価」、管理・保管される書類の不備を削減するための「証拠書類・証明書類の不備のチェック」、プロジェクトマネジメント計画(品質管理計画や進捗管理計画など)に追加すべき観点がないか、無駄を省けるところがないかを確認し改善の提案を行う「プロジェクトマネジメント計画の高度化支援」などである。こうした事項については、プロジェクト側が、第三者評価PMOによる客観的な意見として受け止め、それをどうプロジェクトに活かすかを判断すればよい。

プロジェクトの成功に向けて

 第三者評価PMOの活動は容易に進むわけではなく、どういった提言・支援が効果的か常に考える必要がある。プロジェクトに必要な提言や指摘は行うべきだが、過度な指摘によりプロジェクト側の負荷を膨らませてはいけない。第三者評価PMOには、多くの大規模プロジェクトを発注側・受注側双方の立場で経験し、プロジェクト側の状況も理解した専門家を採用することが重要である(※1)。

 また、第三者評価PMOは、経営層だけでなくプロジェクト側との信頼関係構築も必須となる。提言の根拠や必要性を明確に伝達するのはもちろん、プロジェクト側の立場にも配慮し、真摯な態度で接することが望まれる。第三者評価PMOが提言しても、プロジェクト側が前向きに向き合わない限り、事態は改善していかない。

 いずれの大規模プロジェクトも、様々なリスクを抱えている。プロジェクトの成功のためには、適切なリスクマネジメントが不可欠である。リスクが顕在化し、致命的な問題の発生を防ぐためにも、経営層のリスクマネジメントに関する、より一層の意識の向上を期待したい。

1) 野村総合研究所(NRI)は、大規模システム開発プロジェクトや発注側企業のPMO支援の経験を多く持ち、金融機関をはじめとした企業の業務知識も豊富である。特に金融機関においては工程完了時などのタイミングで監督官庁への報告が必要だが、NRIは報告の準備や説明に関する助言が可能である。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

Writer’s Profile

田島悠史

田島悠史Yuji Tajima

金融システムリスク管理部
上級コンサルタント
専門はプロジェクトマネジメント、発注側PMO支援

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