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投資型クラウドファンディングの意義と課題

2014年3月号

未来創発センター 主席研究員 大崎貞和

昨年末に公表された金融審議会WG報告で、株式形態での投資型クラウドファンディングの解禁が提言された。実はインターネット経由の株式発行は1990年代半ばにもみられた。制度が活用されるかどうかが注目されるが、詐欺的な行為に悪用される懸念も否定できない。

株式形態が解禁へ

 昨年末、金融庁の諮問機関である金融審議会の「新規・成長企業へのリスクマネーの供給のあり方等に関するワーキング・グループ」の報告が公表された。そこでは、新規・成長企業へのリスクマネー供給を活発化させるための様々な制度改革が提言されている。その一つが、インターネット経由で株式を発行し、多数の資金提供者から少額ずつ資金を集める株式形態の投資型クラウドファンディングの解禁である。

 米国では、2012年に制定されたJOBS法(Jumpstart Our Business Startups Act)で、投資型クラウドファンディングを円滑化するために証券公募の登録免除規定が設けられ、2013年10月には、その詳細を定める証券取引委員会(SEC)規則案が公表されている。

 日本でも、インターネット経由での資金集めという意味での広義のクラウドファンディングは、寄付や匿名組合出資といった形では行われている。しかし、株式の公募発行には、発行金額次第で有価証券届出書の提出が必要となるほか、日本証券業協会のルールで証券会社による未公開株の投資勧誘が原則として禁じられていることから、現状では、クラウドファンディングの手段としての株式公募は、実施が難しい。

 そこでワーキング・グループ報告は、公募発行であっても有価証券届出書の提出が不要となる発行総額1億円未満であって、かつ1人当たりの投資額が50万円以下の少額の場合については、インターネット上での株式公募の仲介者となるファンディング・ポータル運営者に関する業法上の特例を設け、証券会社以外の者でも、金融庁の登録を受けた上で投資勧誘を行えるようにすることなどを提言したのである。

90年代後半の経験

 クラウドファンディングは、比較的新しい現象と捉えられているが、実は、1990年代半ばの米国でも、インターネット経由の株式公募による資金調達の試みがみられた。その先駆例となったのは、1995年5月に完了した地ビール会社スプリングストリート・ブルーイング・カンパニーによる総額160万ドルの株式公募である。当時、筆者は、こうした米国での動きやそれを模倣した日本企業の試みなどを詳しく紹介した著書『インターネット・ファイナンス』(※1)を上梓した。

 当時の手法は、資金を調達しようとする発行会社が自らのウェブサイトで目論見書に準ずる書類をダウンロード可能とし、投資者から直接株式購入の申込みを受けるというものであった。複数の発行会社のウェブサイトにリンクするポータル・サイトも登場し、上述のスプリングストリート社の創業者に至っては、自らのノウハウを売り込む「インターネット投資銀行」を設立し、日本法人まで立ち上げたのである。

 しかし、こうした動きは、2000年以降のドットコム・バブル崩壊を機に見られなくなり、今ではほとんど忘れ去られている。

環境の変化と今後の課題

 近年注目されているクラウドファンディングは、筆者がかつて「インターネット・ファイナンス」と呼んだ、この1990年代後半の試みと同工異曲である。強いて違いを探せば、米国の場合、クラウドファンディングでは「ファンディング・ポータル」と呼ばれる仲介者が関与することや投資者1人当たりの出資額に制限が設けられること、株式公募後の情報開示についてもルールが設けられることなどである。

 日本においても、今後、ワーキング・グループの提言内容に基づく法令改正が行われ、早ければ2015年春頃には株式形態でのクラウドファンディングが可能となる見通しである。

 このように、日米両国で制度整備が進められるクラウドファンディングだが、かつての試み同様に一時の徒花に終わることはないのだろうか。今回は違うと考えられるとすれば、その根拠は、①インターネットの利用者が著しく増加し、買い物や資産運用のツールとして定着していること、②仲介者の評判が高まれば、かつてのリンクを張っただけのポータル・サイトとは次元の違う信頼感が醸成される可能性があること、③インターネット経由の資金調達を考える企業の数が増加している可能性があること、といった点に求められよう。

 他方、1人当たりの投資額の制限や情報開示に関するルール、仲介者の審査義務などが嫌気されて、制度が整備されても利用が進まないという可能性もある。とりわけ日本の場合、未公開株や社債をめぐる詐欺的勧誘が社会問題となっており、クラウドファンディング詐欺が登場する懸念も否定できないだろう。

1) 日本経済新聞社、1997年。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

大崎貞和

大崎貞和Sadakazu Osaki

未来創発センター
フェロー
専門:証券市場論

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