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金融ITフォーラム2013報告

2014年2月号

野村総合研究所(NRI)は2013年11月6日、「日本には強い金融サービスがある」をテーマに「NRI金融ITフォーラム」を開催した。

 第1回目の「金融ITフォーラム」を開催した2012年11月は、「失われた20年」という長いトンネルからまだ抜け切れておらず、出口に向けて、様々なイノベーションへのチャレンジを模索していた時期である。その後、アベノミクスで3本の矢が放たれ、1年の間で状況は一変した。第2回目の「金融ITフォーラム」は、そんな明るい兆しが見え始めた中での開催となった。その兆しを、金融業界が真の成長に導くべく、基調講演には慶應義塾大学教授の竹中平蔵氏をお迎えし、「国内外からみた日本経済~金融業界へのエール~」と題して、金融業界に向けて、今後注目すべきこと、戦略として考えるべきこと、チャレンジすべきこと等のご意見、アドバイスをいただいた。また今回のフォーラムでは、金融業界の第一線で活躍されている方々に特別講演をお願いした。

 計43種類46コマのセッションには、銀行、証券会社、保険会社、運用会社から合計932名のお客様の参加を得た。

 ここでは、特別講演をいただいた金融情報システムセンター 常務理事の渡辺様、アニコム損害保険 代表取締役社長の小森様の講演を紹介する。また、NRIの各本部の取り組みについての本部長、副本部長の報告も掲載する。

講演1
金融情報システムの安全性と効率性向上に向けて
公益財団法人金融情報システムセンター 常務理事 渡辺 達郎氏

 今年度の金融情報システムセンター(FISC)の調査によると、国内金融機関のIT経費は横這い傾向である。また、システム関連経費が総経費に占める割合は微増傾向となっている。目的別の内訳をみると、「維持・運用」に向けられる割合が高く、新規開発の割合は限定的である。IT投資は伸ばしにくい状況がうかがえ、従来の投資内容の見直しやより効率的な運営が求められる。

 もうひとつは人員の問題である。地銀以下の中小金融機関では、システムの共同化・外部委託等の動きが広まっている。情報システムの共同化を進めた金融機関の中にはIT要員が数人しかいないところもあり、本来必要なスタッフまで減らしている懸念もある。新規システムの開発機会の減少は人材育成面で大きな足枷となっていることが考えられ、金融機関のIT人材の長期的な養成が急務となりつつある。

 ここでFISCの取組みを幾つか紹介したい。今年度、サイバー攻撃について有識者検討会を設置し、金融機関等のサイバー攻撃に関する対応のあり方等について議論を進めている。検討結果については今年度中に当センター機関誌等に公表することを予定している。また、クラウドについても、現在、金融機関の導入動向・規制監督動向を継続調査しており、国内外での情報収集は勿論のこと、欧米金融監督当局・データ保護当局からも金融機関のクラウド利用と規制の考え方について情報収集・意見交換を行っている。

 最後に、現在、金融機関で一冊となっている「金融機関等コンピュータシステムの安全対策基準・解説書」をより使い易いものとすべく、関係者のご意見を伺いながら業態毎(預金取扱金融機関、保険、証券)に作成することを考えており、先行して証券分の検討を行っている。

講演2
「予防型保険会社」の実現に向けて
アニコム損害保険株式会社 代表取締役社長 小森 伸昭氏

 アニコム損害保険は、2000年に創設したアニコムクラブの共済契約を引き継ぎ、2008年1月から営業を開始した新しい損害保険会社である。現在、当社はペット保険市場の6割を占めており、今後もペット保険のリーディングカンパニーとして業界をリードしていきたい。ただ、この会社はペット保険専業の保険会社になることを目的として設立したわけではない。ペット保険は保険業の基盤を確立する戦略として採用したに過ぎず、私たちは「予防型」の保険会社を作りたいと考えている。

 保険会社の役割というと保険金を支払うこと。しかし、保険金が支払われたからといって嬉しいと思っている人はいない。保険会社は保険事故に関する情報を大量に保有している。だからこそ、そのデータを分析して予防情報を提供し、事故を未然に防ぐ「予防」の提供を主とした保険会社を創出したいと考えた(予防型保険会社)。現在、私たちは『家庭どうぶつ白書』の発行やSNSを利用し迅速に予防情報を提供することで、事故を減らす活動に取り組んでいる。

 新しくて小所帯の保険会社だからこそ、ITの駆使と、代理店や動物病院とのネットワーク化が重要である。そして、社員教育も重要だ。だから社員には業務内容についての「好き嫌い禁止」を掲げ、様々な業務を経験する「ジョブローテーション制度」を採用している。全員にIT部門を経験させ、他にもあらゆる部門を経験させることで社員が法人全体を理解する仕組みを構築しており、社員の成長を促すとともに、法人と個人の距離感をゼロにしたいと考えている。更に、社員一人ひとりが日々1%のカイゼンと成長を続けることが大切であり、それを実現することで、私たちは10年後には新たな価値を提供する保険会社に成長しているはずである。

挨拶
代表取締役社長 嶋本 正

 今年のテーマは、昨年に引き続き、金融業界への強い期待を込めて「日本には強い金融サービスがある」とした。

 日本では、「3本の矢」を掲げるアベノミクスが打ち出され、マーケットの雰囲気は一変した。第1回目の金融ITフォーラムを開催した2012年11月20日の日経平均の終値は9,142円、為替は1ドル81円台だった。約1年後の本日(2013年11月6日)の日経平均は14,337円、為替が1ドル98円台である。また、実質GDPもプラス成長を続けており、第一の矢、第二の矢の効果で、日本には景気回復の勢いがついてきた。この勢いを定着させるためには、第三の矢である成長戦略の実現が不可欠である。

 さらに、2020年五輪の東京開催決定に日本中が沸き立った9月、安倍首相は五輪開催に「『第四の矢』の効果はある。世界の期待に応えていきたい」と語った。私は、それにも増して、「第四の矢」として期待されるのは、金融業界だと思っている。付加価値の高い事業への資金の供給、多様な資産運用機会の提供、リスクの分散など、金融業界は経済活動の潤滑油として極めて重要な役割を果たしている。弾みのついてきたわが国経済の再生の歯車をさらに力強く回転させていくためには、活力のある金融サービスは不可欠な存在である。

 今年のテーマである「日本には強い金融サービスがある」の想いもここにある。金融機関の皆様が強いサービスを提供していくにあたって、NRIは、ナビゲーションとソリューションの両面から、一緒に考えて行動していきたいと考えている。

報告1
銀行は、銀証保を提供できる総合金融機関として、リテールサービスの刷新ができるか
金融ソリューション事業本部 副本部長 三浦 智康

 銀行は取扱う金融商品が投資信託、保険と拡大し総合金融サービスを提供できる唯一の機関となった。しかし効率性と短期的収益を重視してきた結果、品揃えは「総合」だが実態は金融商品の単品販売の積み重ねとなっていないだろうか。総合金融サービス実現のためには、商品の単なる提供に留まるのではなく、顧客の生活に則した資金調達や資産形成設計を行う、「金融生活」向上のためのサービスを提供すべきだ。信頼関係を軸に、顧客の伴走者として長期視点で問題解決にあたる金融生活支援機関へと変わるのである。

 米ウェルスファーゴのアプローチや、分野は異なるが総合病院の総合診療の事例が参考になる。共に信頼関係づくりを重視し顧客起点で課題を捉え、目の前のニーズよりも背景情報に目を配り、異なる組織が連携して対処する点が大きな特徴だ。NRIは多くのお客様と業革に取り組んできたが、顧客起点で改革したものは成功すると確信している。新たな総合金融サービス作りに向けて是非お手伝いしていきたい。

報告2
大手金融機関 自社システムから共同利用型サービスへ~STAR導入への取り組み~
証券ソリューション事業本部長 船倉 浩史

 NRIは、2013年1月から野村證券向けに、証券バックオフィス業務ソリューション「THE STAR」の提供を開始した。旧来のシステムでは、「複雑化、肥大化、多世代化」により、システムの維持管理や新規開発において「コスト・工数の増大、対応スピードの劣化、品質・性能面の限界」といった課題が深刻化していた。

 これらの課題解決に向けて、コモディティ化領域にSTARを導入すると共に、STARの標準機能に合せ業務・帳票を見直し、共同利用型をベースにしたシステム再構築を行うこととした。強い経営のコミットのもと、全社一体となったプロジェクト推進により、導入は成功裏に終わった。さらに、STAR導入によって中期的なITコストを抑制し、また取引量急増でも問題のない安定稼働を実現している。NRIは今後ともビジネスとITを一体としたサービスを提供していく所存である。

報告3
エクスペリエンステクノロジーが変える金融サービス
基盤サービス事業本部長 綿引 達也

 世界のCEOの多くは顧客経験価値を重視する経営を目指している。日本でいう「おもてなし」である。激しい市場競争の下では、商品やサービスの機能や性能だけで差別化することは困難であり、顧客経験価値による差別化の重要性が高まっている。これは金融機関でも同じである。また、企業と顧客とのタッチポイントの多くはIT化しており、ITを使った顧客経験価値の向上(顧客ロイヤリティ獲得)はその重要性を高めている。

 NRIは顧客経験価値の重要性が高まることを2009年に予測し、顧客経験価値を高めるIT技術を総称してエクスペリエンス・テクノロジーと名付け、その調査研究ならびにソリューション化を進めてきた。仮説検証を繰り返しながらマーケティング・営業・接客の質を徐々に改善する「おもてなし®エンジン」はその1つであり、昨今のモバイルファースト、ビッグデータとも組み合わせた取り組みを実施し成果をあげている。

報告4
金融サービス事業を支える金融クラウドサービス
基盤サービス事業本部 副本部長 竹本 具城

 クラウド活用は、コスト削減、事業展開の迅速化、IT統制の強化等、様々なビジネス面での効果が期待される。

 今後、金融機関において、クラウドの活用が勘定系等の基幹系システムへも広がることが想定されるが、それにはIT統制面において様々な課題がある。また、単純なHaaS・IaaSレイヤの活用だけではコスト削減の効果は限定的であり、導入負荷も高いことが想定される。

 NRIでは、こうした様々な課題に対応したクラウドサービスを提供している。NRIのASPサービスにクラウドを利用する際には、ソフトウェアライフサイクルを考慮したPaaSを整備し、コスト削減を実現している。また、金融機関向けのサービス「NRI金融クラウド」では、「金融グレード」のIT統制や運用を実装し、監督官庁対応を可能としている。従来はITコストの算出は難しかったが、「クラウド」を前提とした統制運用の再設計を行い、組織面も含めて整備・実装することで、コスト可視化・コスト削減とIT統制の高度化が可能となっている。

 さらに、金融業界全体の標準プラットフォームとなるため、「堅牢性」の更なる高度化を目的として、複数データセンター稼働、独立した複数運用マネジメント拠点の実装を行っている。

報告5
日本の資産運用業界の成長を支えるビジネスプラットフォーム~未来予想図~
資産運用ソリューション事業本部長 藤田 勝彦

 資産運用業界のシステムに携わって四半世紀になる。この間、(業界では当たり前になっている)多くの「不思議」に接して来た。例えば、純資産が小さくなったファンドの併合や償還を容易にできないためファンド数がどんどん増える、自分で選んだ評価時価により評価する一方で純資産は精緻に一円まで受託銀行と合せる、などである。

 これらの不思議は多くの課題を内包しているが、それらの課題は個々の資産運用会社だけでは解決が難しいものが多く、業界内はもちろんのこと、信託銀行や販売会社などとも十分に議論しながら進めて行く必要があると考えている。

 今後、日本の資産運用業界が発展するためには、これらの課題をひとつずつ解決していくことが重要である。そのために、まず議論の場として「資産運用ワークショップ」等の開催を検討している。是非、皆様の積極的なご参加を期待している。

報告6
保険業界におけるNRIの取り組み
保険ソリューション事業本部長 原田 豊

 保険業界を取り巻く環境は変化している。スマートデバイスの浸透をきっかけに顧客接点のデジタル化が進んでおり、ペーパーレスやキャッシュレスを加速させるチャンスが到来している。ヒトやモノに関して収集できるデータが増えたことにより、きめ細かなリスク分析とデータを活用した保険商品が可能になっている。一方で、事業環境は厳しさを増しており、国内市場の変化に対応しながら、海外市場への進出や国内外の各種法規制への対応を着実に推進していかねばならない。

 NRIは、これら「顧客接点」「保険商品」「事業環境」の変化に柔軟に対応していくことが今後特に重要になると考え、各種ソリューションの充実を図っている。40年以上に亘って保険システム構築に携わり、キャッシュレスソリューションやe-JIBAIなどの共同利用型サービス提供を通じて蓄積した経験・ノウハウを生かし、皆様の課題解決をお手伝いしていきたい。


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※組織名、職名は掲載当時のものです。

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