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共通番号制度が金融機関に与える影響

2014年2月号

制度戦略研究室 室長 梅屋真一郎

共通番号制度は、2016年より正式に開始される。金融機関は、顧客口座管理の観点と事業会社の観点からの対応が必要になる。違反には重い刑事罰適用の可能性もあり、番号情報の安全管理等の準備を早期に開始することが必要である。

いよいよ始まる共通番号制度

 日本は、財政制約と少子高齢化の中で、社会保障・税制度を中心とする諸制度の効率化・透明化が大きな課題となっている。そこで、個々の国民並びに法人を正確に識別できる番号を付番しこの課題を解決することを目指して共通番号制度導入が検討されてきた。2013年5月24日の通常国会において与野党の過半が賛成する形で、『行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律』(共通番号制度)が成立し、いよいよ共通番号制度のスタートが正式に決定した。

 共通番号制度では、個人には12ケタ、法人には13ケタの一意に定まる番号が付番されることになる。付番の対象は、個人に関しては日本に居住している日本国籍の人、及び外国人、法人に関しては会社登記を行ったすべての法人である。制度開始時は税・社会保障・災害対策分野の行政手続きのみでこれらの番号を使えるものとされており、それ以外の目的での利用に関しては、制度施行3年を目途に検討を行うものとしている。今後、税・社会保障分野においては、共通番号の利活用が広範囲に進むものと考えられる。

 5月24日に制定された法律によれば、2015年秋に全住民への番号通知が開始され、「通知カード」と呼ばれるカードが郵送で全世帯に送付される。2016年1月からは実際の税・社会保障分野の手続きにおいて利用が開始され、2016年1月以降に行政に提出する対象書類には、付番された個人番号・法人番号の記載が必要となる(※1)。

 共通番号制度は、今後行政を中心とした様々な領域での利活用が予定されている。一方、特に個人番号に関しては、制度検討当初からプライバシー保護の観点での懸念が指摘されていた。

 そのため、特に個人番号に関してはプライバシー保護のための様々な制約が規定されている。例えば、既に述べたように個人番号の利用に関しては社会保障・税・防災での事務に限定し、「必要な限度で」のみ個人番号の利用を認め、それ以外の「目的外利用」は禁止されている。また、法に規定する場合を除いた提供の求めの制限や個人番号に関連する各種情報に関する「目的外の保管」も禁止される等、プライバシー保護の観点からの様々な制約が課せられている。

 このような制約と合わせて、違反者には非常に厳しい罰則が適用され、例えば特定個人情報ファイル(個人番号を含む個人情報をファイル形式にしたもの)の漏えいに関しては、最高で懲役4年の罰則が規定されており、従来の個人情報保護法以上に厳しい罰則とされている。このように、個人番号の取り扱いには細心の注意を払う必要があり、そのための体制作り等が必要となる。

共通番号制度の金融機関への影響

 金融機関への影響としては、2つの立場から見た考慮が必要である。

 一つ目は、顧客の個人番号を取得・管理する立場からの考慮である。税関係の各種帳票の中には、2016年1月から個人番号の記載が必要となるものがある。金融機関関係では、有価証券取引に関する支払調書などが挙げられる。これらの帳票の対象となる口座に関しては、口座保有者から個人番号の申告を受け付ける必要がある。その際、本人確認済みの口座に対しても、金融機関は改めて顧客の本人確認を行う必要がある。また、取得した個人番号等の情報に関して、その安全管理対策を行う必要がある。なお、本人確認済みの口座に関しては制度施行後2018年末までの3年以内に個人番号の申告を行えば良いとされている。

 二つ目は、自社の従業員の個人番号を取得・管理する立場からの考慮である。今後、すべての事業会社は、2016年1月以降の従業員に関わる税・社会保障手続きに関する行政当局への帳票(NRI調査では延べ300種類以上の帳票が対象となる可能性がある)については従業員の個人番号を利用する必要があり、全従業員から本人並びにその扶養家族に関する個人番号の申告を受け付けなければならない。その際、従業員に対しても改めて顔写真付き身分証明書等での本人確認が必要となる。従来、従業員に関する法定業務において本人確認手続きは行っておらず。今回初めてそのような対応が求められることになる。対象となる従業員は正社員だけではなく、パート・アルバイトなどの短期雇用も含まれることから、それらの従業員への対応も必要である。また、従業員から取得した個人番号等の情報に関しては、情報の安全管理対策をとらねばならず、社内体制等の整備を行う必要がある。

 従来、従業員に関しては必ずしも顧客情報のような管理体制を採ってこなかった金融機関が一般的である。しかしながら共通番号制度においては、個人番号を含む従業員情報に関しても、情報に接する担当者を制限するなど、顧客情報と同等の考慮が必要である。対応が不十分で個人番号の漏洩等が発生した場合には、刑事罰を含む重い罰則の適用対象となる可能性がある。また、これまで慣例上行ってきた社内手続きが今後は法令違反となる可能性もある。そのためにも社内手続きの全面的な見直し等の対策が必要である。

今後のアクションプラン

 このように共通番号制度では、厳しい罰則等を考慮してしっかりとした対応及び体制づくりを行う必要があるが、制度開始まで2年程度と、準備にかけられる期間は非常に限られている。残念ながら多くの金融機関においては、特に自社の従業員への対応に関する検討が遅れており、早急な対応が必要となる。

 今後のアクションプランとしては、①広範囲な業務に影響があると同時に、大きな法務面でのリスクがある制度であることを経営者自らが認識し、全社的な対応を開始する、②関係する部署が多岐にわたる可能性が高いことから、それらの部署を横断する全社的なタスクフォースを結成し対応に当たる、③早期に影響範囲や課題を洗い出し、各種対策を同時並行して効率的に行えるように工程表を作成する、といったことを行うべきである。

 特に、番号制度では漏洩等の事象が発生した場合に最高懲役4年と言う重い刑罰が科せられる可能性があると共に、漏洩を起こした法人そのものが刑事罰の対象となることから、経営者が強い問題意識を持って取り組むことが必要である。

1) 合わせて、2016年1月以降、希望者には「個人番号カード」というICカードを自治体が交付できるようになる。希望者は自治体窓口にて本人確認等の手続きを行うことで「個人番号カード」を入手できる。このカードは公的個人認証などにも利用できることから、身分証明書としての活用も可能であるとされている。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

梅屋真一郎

梅屋真一郎Shinichiro Umeya

未来創発センター
制度戦略研究室長
専門:制度調査・提言

注目ワード : マイナンバー

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