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再出発するグリーンシート

2014年1月号

未来創発センター 主席研究員 大崎貞和

非上場株式取引の場であるグリーンシートは、ベンチャー企業の資金調達促進などを目指して導入されたが、取引所の新興企業向け市場が整備されたことで、日本の資本市場の裾野を拡げる限定的な株式流通の場として再出発することが期待されている。

銘柄数が減少するグリーンシート

 グリーンシートとは、非上場株式の売買を公正かつ円滑に行うために、日本証券業協会(以下「協会」という)が設けている仕組みである。取扱会員となる証券会社によって、事業計画の合理性や基礎となるビジネスモデルの収益性、法令遵守状況を含む社会性など、一般投資家の投資対象にふさわしい要件を満たしていると認められた非上場株式が、グリーンシート銘柄に指定される。

 グリーンシート銘柄には成長性を有する会社の株式を対象とするエマージングとそれ以外のオーディナリーの区分がある。また、関連する制度として、取引所市場で上場廃止となった銘柄を対象とするフェニックス銘柄制度がある。株式以外に優先出資証券や投資証券も銘柄指定される。

 この制度は、1997年7月に創設され、2004年末には指定銘柄数が96銘柄に達したが、その後は指定の取消しが増加し、2013年9月末には36銘柄まで減少している。2012年以降、新たな銘柄指定は行われておらず、資金調達の実績も低迷している(図表参照)。

 2010年以降、金融庁と協会は、グリーンシート制度の抜本的な見直しに向けた検討を進めている。本稿執筆時点では、最終的な結論は出ていないが、2014年にも、新たな制度創設の前提となる法改正や協会による制度整備が行われる見通しである。

グリーンシートの盛衰

 グリーンシートは、当初、未上場株式の流通の場を設けることで、ベンチャー企業による株式発行を通じた資金調達を容易にするといった狙いから創設された。当時、取引所市場や株式店頭市場(後にジャスダック証券取引所となった)での株式新規公開(IPO)が抑制され、ベンチャー企業の成長を妨げているとの批判が強かったためである。

 ところが、制度創設2年後の1999年11月に東京証券取引所マザーズ市場が開設されたのを皮切りに、各取引所による新興企業向け市場の開設が相次ぎ、取引所市場の上場基準が大幅に緩和された。このため、多くのベンチャー企業は、グリーンシートでの資金調達よりも取引所の新興企業向け市場でのIPOを志向することになった。他方、グリーンシートでは、制度創設以前から一部の証券会社が積極的な勧誘を伴わない形で取り扱っていた「青空銘柄」と呼ばれる、地方の非上場企業などの株式も取引された。

 2004年の法改正を受けた翌年の制度改正で、グリーンシート銘柄にもインサイダー取引規制が及ぼされることとなり、発行会社に適時開示(タイムリー・ディスクロージャー)の義務が課されることになった。この制度改正は、グリーンシートの信頼性向上が目的とされたが、発行会社が適時開示を行わない旧「青空銘柄」の取引が行えなくなる一方、ベンチャー企業にとっても、取引所市場と変わらない情報開示のコスト負担が必要となり、グリーンシート離れを促す結果となった。これ以降、グリーンシートの銘柄数は次第に減少したのである。

新たな枠組み整備の意義

 金融庁と協会による制度見直しの検討は、こうした経緯を踏まえて行われてきた。その基本的な方向性は、ベンチャー企業によるIPOの受け皿という役割は、もっぱら上場基準が大幅に緩和された取引所の新興企業向け市場に委ねるというものである。

 そもそも上場企業は、250万社ともいわれる国内の株式会社のうち、ほんの一握りに過ぎない。それだけに、非上場株式の発行者は多様である。技術力が高く成長性が著しいといった典型的なベンチャー企業でなくても、過去に株式公募を行ったために多数の株主が存在するといった理由から、株式の換金の場が必要とされる企業は存在する。

 そこで新たな枠組みでは、かつてグリーンシートで取引されていた旧「青空銘柄」のように情報開示が限定的にしか行われない銘柄についても、売買に参加する投資家を予めグループ化するなど、流通範囲が限定されるような対応を講じることで、インサイダー取引規制の適用を排除することが想定される。グリーンシートという名称が維持されるのかどうかを含め、未定の部分も多いが、日本の資本市場の裾野を拡げる方向性での制度改正を期待したい。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

大崎貞和

大崎貞和Sadakazu Osaki

未来創発センター
フェロー
専門:証券市場論

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