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エレベーターはなぜ来ない

2013年12月号

外園康智

エレベーターAが1階に停止中。それぞれ3階と5階のボタンが押されている。エレベーターBは1階を上に向かって通過中で、2階と3階で止まる必要がある。エレベーターホール4階では「昇り」ボタンが押され、2階と3階では「降り」の待ちが発生している。さて、この後どのように2つのエレベーターを運行すればよいか? ただし客が乗っている間は、上下逆走は禁止とする。

 エレベーターの運行は待ち時間や混雑度などが最小となるよう群管理されている。オフィスでは待ち時間と乗車時間が最小化されるが、ホテルではあまり多くの客が同乗しないよう混雑緩和が優先される。

 問題の答えは、Aのルートを決めるとBのルートも決まることを考慮すると、「Aが3階、4階、5階に順に行き、Bは2階、3階、下に向かって2階にいく」の他、8通りの組合せが挙げられる。それぞれの待ち時間、乗車時間、混雑度を計算して、最適な運行を選べばよい。

 このように、制約条件のもと、目的関数が複数ある最適化問題を“多目的最適化問題”とよぶ。一般に多目的最適化問題において、目的関数同士にトレードオフ関係がある場合は、数式による厳密解を得るのは難しく、組合せ問題を計算機で解く必要がある。ところが、2台程度ならば簡単だが、台数が増えると全パターンの計算は時間がかかりすぎるため、人工知能的手法で近似解1)を見つける方が実用性は高い。例えば、最初に部分最適解をたくさん与えて、それを少しずつ修正して組合わせ、評価を繰返し、生き残りを最適に近い解とする方法だ。

 さらに、最近のエレベーターでは、時間帯により何階から何人位が乗るかを予測したり、来ない時間が長くなると待ち人数が増えるなどの予測ロジックを持っている。未来データを加味した方が、よりよく最適化できるからだ。

 資産運用の世界でも将来予想を使って最適な資産配分を決めるが、一期先だけでなく多期間先にわたる予想を使うことで、コストを最小化しつつ運用効率を最大化する理論がある。これも直接数式を解くのは難しいので、数値計算などの工夫が必要だ。

 ところで、急いでいるのに何故エレベーターは来ないのか? 友達が来るのを待って開ボタンが押されつづけている、スペースに余裕はあるが遠慮して次を待っている、全階のボタンがいたずらで押されている、誰かがドアに挟まったなど、見えないところで計算外の事態が起きている可能性がある!

1) 最適な解法が確立していない“巡回セールスマン問題”に遺伝アルゴリズムが使われているのは、この一例である。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

外園康智Yasunori Hokazono

金融デジタル企画一部
上級研究員

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