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アリババ小口貸出の資産証券化商品

2013年10月号

NRI北京 金融システム研究部 研究員

経済成長の鈍化を受け、中国政府は既存の資金の活性化を呼びかけており、資産証券化が注目を集めている。そうした中、東方証券はアリババと初の小口貸出を原資産とした資産証券化商品を発行した。

国内初の小口貸出の資産証券化

 中国の経済成長が鈍化する中、李克強総理を始め中国政府は大規模な景気刺激策を打たずに、既存の資金を活性化することで経済発展を刺激する方針を示した。国務院は7月1日付で発表した「金融の経済構造調整と経済発展方式の転換及び高度化へのサポートに関する指導意見」(「金十条」)の中で、金融機関の資金を活性化し零細企業の発展を支援するために、融資資産証券化の通常業務化を徐々に推進するとしており、それを受けて資産証券化にも注目が集まっている。

 中国における資産証券化は、銀行間市場の融資資産証券化と証券会社の企業資産証券化の2種類に大きく分けられる(※1)。両者とも近年動きがほとんどなかったが、銀行間市場では2012年5月に資産担保証券の試行が再開された。また、証券会社の資産証券化業務も今年3月に通常業務に転じた(※2)。証券監督管理委員会(証監会)の発表(2013年7月26日)によると、証券会社8社の17商品が発行許可を取得し、7商品が審査中である。実物資産の収益権に基づく商品が多い。

 零細企業向け融資が政策的に重要視される中、2013年6月25日、東方証券資産管理会社の「アリババ(Alibaba阿里巴巴)専項(専門口座)資産管理計画(プラン)」が証監会の認可を得た。原資産はアリババ零細金融の無担保小口貸出資産であり、国内初の小口貸出に基づく証券会社の資産証券化商品である。これまで中小企業向け融資を原資産とした商品はあったが(※3)、原資産の範囲を零細企業と個人経営者向け貸出に広げた点で意義がある。

 同プランは第1~10号から成り、各号の調達金額は2~5億元、期間は1~2年間である。優先級証券は一般投資家向けに販売し、劣後証券はアリババが購入する。優先級の予想収益率は6.2%であり、格付は最高級のAAAで、私募債の平均水準(AA)を上回った(図表1参照)。一方、原資産である小口貸出の金利は18~21%と推測されている(※4)。

 東方証券資産管理会社の公告によると、同プランの第1号は7月29日設立の深セン綜合協議取引プラットフォームで取引される。

アリババの零細金融

 同プランは、アリババの貸出余力を高める重要な手段でもある。

 アリババのE-コマースプラットフォーム(B2Bのアリババ、C2CのタオバオTaobao淘宝、B2CのTmall天猫)では、主に零細企業と個人がビジネスを展開している。零細企業と個人は事業拡大のための銀行融資を得るのが難しく、そのためアリババの発展も制限されてしまう。そこでアリババの創業者馬雲氏は「銀行が変わらなければ、アリババは銀行を変える」として、零細企業と個人向けに小口貸出会社「阿里小微信貸」(アリババ零細金融)を設立した。

 アリババ零細金融は2010年4月に、Taobao・Tmallの出店者向けに「タオバオ貸出」を開始、同年6月に浙江省、2011年6月には重慶市でそれぞれ1社の小口貸出子会社を設立し、アリババの出店者向けの「アリババ貸出」を始めた。「タオバオ貸出」は出店者の経営状況・信用履歴を審査し、オンラインで手続きを行い、無担保の信用貸付を提供している。対象は全国の出店者である。一方、「アリババ貸出」では、実際に顧客の工場等に赴いて審査することもある。範囲は一部の地域に限定されている(図表2参照)。

 アリババ零細金融の2013年7月12日の発表によると、2013年第2四半期末時点で32万以上の零細企業と個人に小口貸出を提供、累計貸出総額は1000億元を超えている。不良債権比率は0.87%である。

 2012年末の時点でアリババに出店している企業は1130万社に上り(※5)、これら企業の多くの資金需要をいかに満たすかが大きな課題である。銀行業監督管理委員会(銀監会)・人民銀行の「小口貸出会社の試行に関する指導意見」によるレバレッジ規制のため(※6)、小口貸出会社の貸出余力は資本金により制限される。今回の商品は、小口貸出を資産証券化し、証券化商品をロールオーバー発行することで、貸出余力を高める重要な手段となる。

小口貸出資産証券化の展望と課題

 小口貸出の資産証券化についての課題は、第一にリスクコントロールである。「いつでも借りられ、いつでも返せる」という小口貸出の特徴のため、貸出期間は数日から数ヶ月までと比較的短い。つまり、原資産が借り手の行為によって大幅に変動する可能性がある。規模が大きく資金力のあるアリババグループは、取引履歴で信用格付やリスクコントロールを行うことができることから、当局の許可も取得できたと見られるが、他社が真似できるとは限らない。

 第二は、法整備の問題である。アリババのようなインターネットにおける小口貸出業務に関する規制はまだでき上がっていない。国務院は2013年8月に人民銀行・証監会・銀監会・公安部等の7部門によりインターネット金融の発展と監督管理状況を調査する研究チームを編成した。研究チームを通じて現状を把握し、法律整備に向けて準備していると思われる。

 高利益を求め、アリババ以外の大手E-コマース会社(京東・蘇寧等)も次々と小口貸出業務を開始した。これらの会社にとっても資金確保は課題である。小口貸出の法律整備が進み、リスクコントロール等の問題が解決すれば、小口貸出の資産証券化商品も増えるだろう。

1) 2013年9月号の「資産証券化再開の意義」を参照。
2) 2005年8月から試行開始。
3) 浙商銀行の「浙元一期中小企業融資証券化信託」(2008年発行)。
4) 各種報道より。
5) アリババグループのホームページ。
6) 2008年5月4日発表。小口貸出会社の銀行借入残高は資本金の50%を超えてはならない。ちなみに、上述の浙江の子会社の資本金は6億元、重慶の資本金は10億元。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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