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電子化が望まれる外国籍投信設定解約業務

2013年10月号

資産運用サービス事業部 副主任コンサルタント 中田貴之

外国籍投資信託の残高が増えているが、設定解約業務においてはその多くが手作業のままである。業務負荷の削減、事務ミスのリスク軽減、ひいては外国籍投信への信頼を失わないためにも、早急に電子化の対応を検討していく必要がある。

手作業の多い外国籍投信の設定解約業務

 昨今の株高・円安の進行に伴い、投資信託市場が活況である。とりわけ外国籍投資信託(以下、外国籍投信)はその存在感を増している。2013年6月末の国内で直接販売される外国籍投信の残高は約6.5兆円、前年同期比26%もの増加となっている(※1)。FOF(※2)に組み込まれる外国籍投信の残高も2013年6月末時点で約17兆円(※3)と、直接販売の外国籍投信残高の約3倍である。このような残高の増加に伴い、トランスファーエージェント(※4)などの海外プレイヤーと直接やり取りを行う販売会社や信託銀行の業務負荷も次第に大きくなっているようである。

 我が国における外国籍投信の設定国別シェアを見ると、44.9%でルクセンブルク籍が最も多い(※5)。ルクセンブルク内のトランスファーエージェントへの設定解約連絡に関してEFAMA(※6)とSWIFTが共同で実施した調査によると、アジア地域からの追加設定・解約連絡はその多くが電子化されておらず、E-mailやFAXなどの手作業により連絡されている割合が56%と高い水準となっている。他の地域と比較してもその割合が大きいことがわかる(図表1)。国別の細かいデータは明かされていないが、日本においても同様に半数以上のやり取りが手作業で行われているものと思われる。特に日本では2000年のFOF解禁以降、FOFの残高および組み込まれる外国籍投信の残高が急激なペースで増加していったため、運用会社・信託銀行・トランスファーエージェントの間での望ましい業務フローが定着しないままであった事も手作業が多く残っている一つの要因ではないだろうか。

 外国籍投信残高と手作業が行われている割合を単純にかけ合わせれば、約13兆円に値する設定解約のやり取りが手作業で行われていることになる。手作業の多さはそのまま業務負荷や事務ミスに繋がるが、他の地域の状況に鑑みると改善の余地があると言えるだろう。

設定解約連絡におけるやり取りの一例と課題

 外国籍投信の設定解約注文を行うに際し、販売会社および信託銀行を中心としてどのようなやり取りが発生するかの一例を図表2に記した。外国籍投信を販売する販売会社は国内の投資家からの注文を取りまとめ、トランスファーエージェントへ設定解約の連絡を行う。トランスファーエージェントからは設定解約の結果通知の他、分配金や投信の残高などの情報を受け取っている。販売会社は、その他にファンドアドミからNAV(純資産価格)(※7)、カストディアンから決済連絡を受け取っている。

 国内で直接販売される外国籍投信の場合も、FOFに組み込まれる外国籍投信の場合も、大きなフローとしては同一とみなせる。FOFの場合、販売会社の役割を主に信託銀行が担っている(※8)が、これは設定解約連絡業務が資産管理業務の一環とみなされているからである。

 国内のやり取りとしては、投資家と販売会社間はかなりの割合で電子化が進んでいるが、FOFの場合の運用会社・信託銀行間は手作業が多く残っている。一般に信託銀行は複数の運用会社から各々の形式で運用指図を受信しており、これが業務負担となっている点である。

 そして先にも紹介した通り、海外プレイヤーとのやり取りは販売会社・信託銀行いずれも電子化が進んでおらず手作業が多い。弊社のヒアリングによると、設定解約の連絡においては販売会社・信託銀行1社につき、多い先で約20社ものトランスファーエージェントとのやり取りが行われている。時間的制約のある中でそれぞれのフォーマットに沿って設定解約連絡を行う事は、業務負荷の面だけではなく業務ミスやリスクの面からも大きな課題と考えられる。また、海外プレイヤーから情報を受け取り、自社の計理システムへ入力する対応も同じく手作業であり、販売会社・信託銀行の業務負荷の一因となっている。

外国籍投信への信頼が揺らぎかねない

 トランスファーエージェントへの設定解約連絡を円滑に行い、業務負担を減らすようなネットワークサービスが欧州系の証券決済機関等によって複数提供されている。しかし、それらのサービスは日本国内において普及が進んでいない。サービスが対象としているトランスファーエージェントの中に、日本の利用者がやり取りする先が十分に含まれていない事や、特にFOFの場合、運用会社をも巻き込んだサービスでなければ信託銀行から見て一部の業務負担の軽減としかならない事がその理由に挙げられている。部分的ではなく包括的な課題解決となるサービスが求められているのだろう。

 将来の税制改正による影響(※9)はあるものの、外債・外貨預金の乗換先としてのニーズなどを考慮すると、直接の販売かFOFかを問わず本邦で扱う外国籍投信の残高は今後も増加していくと考えられる。残高増により業務負担が増加すると事務ミスを誘発しやすくなる。設定解約業務における事務ミスは運用者そして投資家へ直接の影響を与えうるものであり、外国籍投信への信頼そのものが揺らぎかねず、こうしたリスクは軽視できないのではないか。設定解約業務の電子化に向けて、業界全体の興隆を見据えた早急な対応が望まれる。

1) 日本証券業協会発表資料
2) ファンドオブファンズの略。
3) 各種データから野村総合研究所推計。
4) ファンドの設定解約の窓口となり、投資家の口座開設や入出金処理、名義書換、各種報告書の作成・送付を行う。日本においては運用会社が行う一業務に相当する。
5) 日本証券業協会発表資料 2012年度末データ
6) European Fund and Asset Management Association
7) 国内投信の基準価額に相当。
8) 時間的制約がある場合等、投資家が直接トランスファーエージェントへ連絡するケースも存在する。
9) 2016年施行の金融所得一体課税により、外貨預金に比する外貨MMFの利点が減少すると考えられている。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

中田貴之

中田貴之Takayuki Nakata

資産運用グローバル事業部
上級コンサルタント

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