1. HOME
  2. 刊行物
  3. 金融ITフォーカス
  4. カテゴリから探す
  5. アセットマネジメント
  6. インカムリターンが真価を発揮し始めたJ-REIT

インカムリターンが真価を発揮し始めたJ-REIT

2013年10月号

インフラ産業コンサルティング部 上級コンサルタント 金惺潤

J-REITが再び活況を呈しているが、投資口価格のボラティリティに不安を感じる投資家は少なくない。しかし、J-REITに投資するのであれば、一時的なキャピタルゲインやロスに注目すべきではない。むしろ、長期ホライズンで投資を考え、安定的・高水準なインカムリターンに着目すべきである。

数年来の盛り上がりを見せるJ-REIT

 2012年秋以降、J-REITの好調が続いている。エクイティファイナンスは活発で、新規上場・公募増資が途切れない。デットの調達環境も安定しており、これまではなかった10年超の長期安定ローンも獲得し始めている。圧倒的な資金調達力を武器に、各投資法人は次々に優良資産を取得しており、J-REITの総資産はついに10兆円を突破した。当然、投資口価格も上昇しており、東証REIT指数は2012年末から6か月間で25%上昇した。

 しかし、こうした活況を「J-REITバブルの再来か」と懸念する投資家も少なくない。確かに、2005年から07年前半には東証REIT指数(配当なし)が1480から2600超まで上昇し、その後800を切る水準まで急落した。今回の回復期においても、13年3月末には東証REIT指数が1700まで急上昇し、その後は1300台まで急落している。J-REITのボラティリティを心配する声は依然として強い。J-REITの投資口価格が、日銀のJ-REIT買い入れ政策や、REIT投信への資金流出入、資本市場全般の動きなどの外部環境変化により激しく変動している事実は否めず、J-REITは不動産市場のファンダメンタルズを反映していないという投資家の猜疑心は根深い。

見逃せないJ-REITのインカムリターン

 しかしJ-REITは、その配当力に注目すると、異なる様相が見えてくる。まず、J-REITの配当利回りは4~5%で推移しており、他の金融商品に比べ圧倒的に高い。格付けがAA格である日本ビルファンド投資法人やジャパンリアルエステイト投資法人でさえ、3%前後の配当利回りをもたらしてくれる。さらに、配当原資の大部分は優良資産がもたらす賃料であり、株式の配当に比べ安定している。

 また、配当を含めた投資パフォーマンス(キャピタルリターンではなくトータルリターン)を評価すれば、J-REITは底堅いリターンをもたらしていると言える。前述のとおり、配当なしの東証REIT指数は基準となる1000を下回る水準まで低下したこともあった。しかし、図表1に示す通り、配当を含めた東証REIT指数は金融危機下でさえ1000を大きく下回ることはなかった。また、配当なしの指数と配当を含む指数との差は年々拡大しており、配当金とそれを再投資する効果がJ-REITの株主価値の大きな部分を構成し始めている。

 さらに、J-REITが継続的に提供してきた分厚い配当金は、金融危機後に生じたキャピタルロスも取り返そうとしている。図表2は配当を含む東証REIT指数のトータルリターンを取得時期と売却時期別に整理したものである。たとえば07年前半の高騰期に取得した持ち分を、09年前半から10年前半までの間に売却すれば損失は44~47%となる。しかし、長期で保有し続ければ、分厚い配当を積み重ね、キャピタルロスの大きさを軽減することが可能になる。たとえば13年前半に売却した場合、損失はわずか1%にとどまる。こうした結果は、取得時期を間違え一時的にキャピタルロスが生じたとしても、長い投資ホライズンで考えれば、インカムゲインによるキャピタルロスの緩和効果が大きくなることを示唆している。こうしたアナロジーは株式などにおいても同様であるが、配当が分厚いJ-REIT投資においては、さらにその意味が大きい。

ポートフォリオにおけるJ-REITの位置づけ

 このように、J-REITのインカムリターンの高さは単に利息収入が大きいというだけではなく、トータルリターンの向上にも大きく貢献している。この特徴に注目すれば、多くの投資家にとって、投資ポートフォリオにおけるJ-REITの位置づけは変わり、その役割は増えるのではないだろうか。特に、成熟化が進みキャッシュアウトが重要な課題となる年金基金などは、J-REITのインカムリターンをより前向きに評価すべきではないか。

 資本市場のノイズがもたらす短期のボラティリティに惑わされずに、長期のトータルリターンで評価する投資家が増えれば、いずれは短期のボラティリティも小さくなるのではないか。すなわち、長期投資家にとって、より投資しやすい環境が実現されるのではないか。一足飛びにそのような環境変化が訪れることはないだろうが、将来的に投資家の投資行動が変わることで、J-REITのリターン特性がさらに改善することを期待したい。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

印刷用PDF

Writer’s Profile

金惺潤

金惺潤SungYun Kim

NRIインド
社長

この執筆者の他の記事

金惺潤の他の記事一覧

このページを見た人はこんなページも見ています