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規制改革―成長戦略の一丁目一番地―

2013年8月号

未来創発センター 主席研究員 大崎貞和

アベノミクスの三本目の矢とされる成長戦略が策定された。その「一丁目一番地」と位置づけられる規制改革の実施計画も閣議決定された。実施計画には多数の細かい事項が掲げられたが、「神は細部に宿る」のである。

成長戦略と規制改革

 2013年6月14日、政府は、「日本再興戦略―JAPAN is BACK―」と題する成長戦略を閣議決定した。①産業基盤を強化するための「日本産業再興プラン」、②社会課題をバネに新たな市場を創造するための「戦略市場創造プラン」、③拡大する国際市場を獲得するための「国際展開戦略」の3つのアクションプランを掲げ、今後10年間の平均で名目GDP成長率3%程度、実質GDP成長率2%程度の実現を目指し、10年後に1人当たり名目国民総所得を150万円以上拡大させるという。

 成長戦略は、2012年12月に発足した第二次安倍晋三内閣の経済政策「アベノミクス」において、大胆な金融政策と機動的な財政政策に続く「第三の矢」と位置づけられる。民間投資を喚起することで、デフレからの脱却と日本経済の再生を図ろうとしているのである。

 成長戦略の基本的な考え方は、企業や国民の自信を回復させ、民間の力を最大限に引き出すというものである。その実現への「一丁目一番地」と位置づけられているのが、自由な経済活動を妨げる規制の改革である。

 2013年1月には、規制改革を推進するために首相の諮問機関として規制改革会議が設置された。同会議は、1月に出された最高裁判所の判決を機にルール作りが本格化した一般医薬品のインターネット等での販売や、待機児童の解消が喫緊の課題となっている保育サービスの規制など、緊急性の高い問題を本会議で議論する一方、①エネルギー・環境、②健康・医療、③雇用、④創業等、の4つの作業部会を設置して詳細な検討を進めた。成長戦略と同じ6月14日には、規制改革会議の答申を踏まえ、142項目に上る個別措置事項を盛り込んだ「規制改革実施計画」が閣議決定された(図表参照)。

新たな試み

 筆者は、この規制改革会議の委員を拝命し、本会議での議論に参加するとともに、作業部会の一つである創業等ワーキング・グループの座長として答申の取りまとめ作業に従事した。

 規制改革自体は、決して目新しいものではなく、これまでも多くの機関・会議体が設けられ、様々な答申・提言が取りまとめられている。経済社会のルールとして一定の規制は必要不可欠だが、技術革新や社会環境の変化によって時代遅れとなる場合もある。すべての規制を不断に見直していくことが重要である。

 また、今回の検討に当たっては、次のような新たな取り組みが試みられた。

 第一は、「規制改革ホットライン」の設置である。これは、広く国民・企業等から規制改革に関する要望を直接受け付けるもので、5月末までに約900件の要望が寄せられた。これらについては、随時関係省庁に検討を要請している。

 第二は、「国際先端テスト」の採用である。これは個別の規制の必要性・合理性について、国際比較に基づき、日本の規制が世界最先端のものとなっているかどうかを検証する試みである。対象となった規制については、所管省庁に対して国際比較と規制を維持する理由の回答を求め、当該回答の妥当性や改革の方向性について規制改革会議で検討を行った。このテストの正式な対象とされた規制は全部で12件にとどまるが、それら以外のすべての検討項目について、常に国際比較の観点から検討がなされたことは銘記されるべきであろう。

神は細部に宿る

 こうして策定された規制改革実施計画に対しては、医療、農業分野等の岩盤規制への踏み込みが足りないとか、細かい項目を並べただけだといった批判もある。

 しかし、計画に盛り込まれた項目を子細に見れば、医療分野の岩盤規制の例とされる保険外併用療養費制度(いわゆる混合診療)についても、その拡大を具体的に検討することが明記されている。また、農業についても、既に本会議で農林水産省からのヒアリングを実施するなど、具体的な検討に着手している。

 そもそも規制改革は、政治的な意見対立が激しい問題について特定の方向性を指し示すものと言うよりは、細かく技術的な規制の適正性・妥当性を一つ一つ検証していく地道な作業である。しかし、「神は細部に宿る」とも言う。そうした細かな見直しを通じて民間主体の経済活動の阻害要因を除去することなくして、成長戦略の掲げる「停滞の20年から再生の10年へ」という大きな方向転換が実現することは望み得ないのである。

 もっとも、規制改革の前途は決して楽観できない。最大の問題は、規制所管官庁には自ら既存の規制を見直す強いインセンティブが働かないことである。時代遅れの規制の改廃をどうやって促すのかが課題となる。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

大崎貞和

大崎貞和Sadakazu Osaki

未来創発センター
フェロー
専門:証券市場論

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