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ようこそバルセロナへ

2013年6月号

金島一平

ロンドンの有名レストランThe Wolseleyでイングリッシュ・ブレックファーストを愉しみ、8時半のユーロスターに乗って一路パリへ。セーヌ河畔のビストロで腹ごしらえをして、14時過ぎのTGVでバルセロナに移動。美しくライトアップされたサグラダ・ファミリアを望むレストランで新鮮な魚介のディナーに舌鼓を打つ。こんな旅行が今年の4月からできるようになった。フランスとスペインとを結ぶ高速新線が1月に開通し、4月からパリ=バルセロナ間を直通するTGVが運行を開始したのだ。

 ピレネー山脈を挟んだ両国の鉄道には、列車を直通させる上で大きな課題があった。2本ある線路の間隔(軌間)が異なるのだ。フランスが1435mmの標準軌であるのに対し、スペインでは1668mmの広軌を採用している(※1)。そのため、両国間の直通列車を運行するためには、台車を交換したり、車輪間隔を変えることのできる車両を用意したりするなど、特別な対応を要していた。

 このような背景のもと、80年代後半に始まったスペインの高速新線敷設に際しては、将来のフランスとの効率的な直通運転を念頭に、標準軌が採用されることになった。それから20余年、ついに両国の高速鉄道は繋がり、直通列車の運行を開始したのだ。パリ=バルセロナ間は最短6時間16分で結ばれることとなり、空港への移動時間を含めると、航空機と比較しても十分な競争力を持つようになった。

 競争力を高めるための国境を越えたインフラ統合の動きは証券市場にも見られる。とりわけ欧州では、米国に比肩する規模の市場創出を目標に、国ごとに異なる証券取引所、清算機関、証券決済機関の統合が積極的に推し進められてきた。まず、証券取引所ではパリ、ブリュッセル、アムステルダムの各取引所が統合しユーロネクストが誕生した。続いて、清算機関では英国のLCHとフランスのクリアネットが合併。さらに、証券決済機関ではブリュッセルに拠点を置くユーロクリアに欧州7カ国の機関が参加するに至っている。今後も国境を越えたダイナミックなインフラ統合が進み、投資家にとってより魅力的な市場環境となることが期待される。

 さて、今回ご紹介したパリ=バルセロナ間の直通列車の運行を皮切りに、今後はバルセロナから南仏各都市への直通列車の運行も予定されている。夏休みにスペインへの旅行を計画されているのなら、ちょっとフランスまで足をのばして名産のワインを嗜むのも良いだろう。

1) スペインが広軌を採用した理由には諸説あるが、鉄道敷設が開始された19世紀当時、有事にフランスからの侵入を防止する目的があったとも言われている。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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金島一平Ippei Kanashima

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