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デジタル化が進む若年層への接点強化 ―海外銀行での取り組み―

2013年6月号

ValueDirect事業部 上級システムコンサルタント 内山浩一

ネットを駆使する若年層に対して、銀行はどのようなアプローチを取り、メイン化を進めていけばよいのだろうか。海外リテール銀行では、ネットを使って積極的に若年層へ近づき、身近な銀行となることを目指す事例が出始めている。

デジタル化する若年層

 スマートフォンの普及により、インターネットをいつでもどこでも利用できる環境が整いつつある。日常生活においても、思い立ったらネットでショッピング、趣味や食事をその場でソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)にアップするといったことが可能になっている。中でも20代や30代といった若年層で、その傾向が顕著である。NRIの生活者1万人アンケートからは、次のような数字が読み取れる。

 (下記数字は20〜30代。カッコ内は全世代)

・スマートフォン保有 50%(23%)
・インターネット利用 81%(57%)
・インターネット利用 平日1時間以上 79%(60%)
・インターネット利用 休日1時間以上 81%(60%)
・インターネットショッピング 57%(33%)
・Facebook利用経験 34%(14%)
・インターネットバンキング 21%(13%)

 このようにインターネットに触れる時間が他の世代と比べても高く、ネットを駆使する若年層に対して、銀行はどのようなアプローチを取り、メイン化を進めていけばよいのだろうか。これまでもインターネットバンキングを有効な顧客接点としてとらえ、一通りの機能は揃えてきたものの、このままでよいのだろうか。

 このような課題意識の中、一部の海外リテール銀行では、従来とは異なる新たな試みに取り組む動きが見られる。そこでは、ネットを使って積極的に若年層へ近づき、身近な銀行となることを目指している。

普段使うサイトへ入り込む「Facebookバンキング」

 一つ目のアプローチは、顧客のパーソナルな空間へ入り込もうとする動きである。日常的に利用されるSNSは今や一般化しており、その代表的な存在であるFacebookは全世界で10億ユーザを突破するに至っている。これまで銀行業界におけるSNSの活用では、次のような例がみられた。

 ・ 自行のページを開設し、商品・サービスの案内やキャンペーンを行うことで広告媒体として活用

 ・ 利用者からの問い合わせやコメントを受けることによりコミュニケーションツールとして活用

 ・( 一部の銀行では)顧客データとSNSのIDを紐づけし、顧客分析・マーケティングに活用

 こうした活用に加え、昨年より複数の海外リテール銀行において、Facebookを入り口としたバンキングサービスを提供する動きが出始めてきた。

 通常、ネットでのバンキングサービスは、銀行ホームページからログインして利用されている。Facebookバンキングでは、取引している銀行のFacebookアプリをインストールしたりすることで、Facebookからログアウトすることなく、バンキングサービスが利用できるようになる。銀行によっては追加でパスワード入力が必要なケースもある。送金メニューに「お友達」の顔写真と名前リストが表示され、その中から送金先や金額を指定することが可能なサービスも提供されている。ただし、セキュリティ面などに配慮し、利用できるサービスを残高照会等に限定し、送金などは取り扱わない銀行もある。

 提供を開始して間もないサービスであり、「楽しみ、趣味」のために利用しているFacebookにバンキングサービスが馴染むのかどうか、また一部にはSNS離れという言葉もでている中、今後の動向が注目される。

ハイタッチコミュニケーションを狙う「バーチャルバンキング」

 次のアプローチは、インターネットで店舗における接客に近いコミュニケーションが行えるよう、ネットを介して画面に銀行アドバイザーを呼び出し、相談及び取引を行うバンキングサービス(バーチャルバンキング)を提供しようというものである。

 これまでも銀行が、テレビ電話等でリモートでのアドバイスを行う例はあった。しかし、バーチャルバンキングでは、利用者がネットを介して銀行のアドバイザーと画面を共有し、その画面の内容を見ながら相談、取引等のやり取りを行うことができる点が従来のサービスと異なっている。本サービスを提供している銀行は、これから台頭してくるネットに関する知識が深い世代と、リモートチャネルを通してより緊密な関係を保つことを狙いとしている。このため、若年層の生活時間等にも配慮し、24時間対応可能な体制を整え、15分以上顧客を待たせないことを目指してオペレーションを行っている。

 このようなサービスは、ネットでのリテラシーが高く、情報収集に長けている利用者であっても、時には相談したい、というニーズに応えるものと考えられる。また、金融サービスについて相談したいタイミングや動機は様々であるため、ネットを介したハイタッチコミュニケーションを使い、「思い立ったら身近にいつでも繋がる」サービスを提供することで顧客へ近づこうとしている。

 参考までにNRIの一万人アンケートの結果を見ると、20~30代で「現在または今後金融機関窓口や担当者に相談したい」と考える人は69%(全世代の平均は54%)となっており、潜在的なニーズは若年層においてもありそうだ。一方で、このようなサービスは、24時間コール体制の配備やIT整備など、かかるコストも小さくない。費用対効果を見極めながら拡大していくアプローチも必要となろう。

必要となる「顧客へ近づく」努力

 今後もデジタル化する若年層は増える。さらにデジタルネイティブと呼ばれる、生まれた時からインターネットの利用が当たり前の世界で育った世代が銀行顧客になってくる。新たな情報技術は日々生まれ、ネット利用形態も進化する。

 ややもするとネットの世界では、ネットサービスを配備しておいて自行のサイトに来てもらうのを待つ、顧客から検索されるまで待つ、といった姿勢になりがちである。しかし、今回紹介した海外の事例からは、ネットでの利用変化を敏感に読み取り、さらに新たな技術を活用し、従来とは異なる方法で「ネット空間において顧客へ近づく努力」を行うことが必要になるという示唆が読みとれるのではなかろうか。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

内山浩一

内山浩一Koichi Uchiyama

銀行ソリューション事業推進二部
部長
専門:金融ビジネスの企画・調査

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