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新たなステージに向かうポイント・マイレージ

2013年6月号

ICT・メディア産業コンサルティング部 上級コンサルタント 冨田勝己

ポイントプログラムは、その利便性が高まってきている一方で、ポイント自体のコモディティ化や代替的な販促手法の普及、消費者のリテラシー向上といった背景から、単なる値引き代替としての効果は減少しつつある。今後は、その本来の効果を発揮させるべく、より幅広いマーケティング活動に適用するツールとしてポイントプログラムを運用していく必要がある。

境界線の消滅

 近年、ポイントプログラムに関する様々な境界線が消滅しつつあり、これからのポイントプログラムの方向性を知る上で非常に重要な変化となっている。

 まず、ポイントプログラムの実施有無の境界線である。業種による違いはあるが、BtoC(※1)ビジネスを手掛けている企業では、現在そのほとんどがポイントプログラムを導入していると言っても過言ではない。その結果、ポイントプログラムの導入有無が店舗の差別化要素になり難くなってきている。

 次にリアルとWebとの境界線である。家電量販店のポイントプログラムがその代表例とも言えるが、当初はリアル店舗とWeb店舗とで別体系として運営されていたプログラムが、現在では統一され、いずれでも同じポイントが貯まるようになっている。また、Yahoo!ポイントのTポイントへの統合や、楽天のRポイントカード発行によるリアル店舗への展開などによって、共通性の高いポイントにおけるWebとリアルとの境界線がなくなってきている。

 また、「ポイントは1社で1つ」という境界線も消滅の予兆が現れてきている。例えばトヨタレンタカーでは、ANAマイレージかJALマイレージのいずれかを、顧客の要望に応じて付与している。Yahoo! Japanでは、最終的にはTポイントに一本化することが決まっているものの、現在はYahoo!ポイントかTポイントのいずれかを選べるようにしている。そのほか楽天Edyでは、決済に応じて貯められるポイントを10種類以上の中から選べるようにしているのだ。「顧客が求める優遇を提供する」というポリシーの下で、より幅広く普及しているポイントプログラムを複数導入する企業が今後増えていく(いわば、ポイントのマルチブランド化が進む)可能性は、決して否定できない。

 一方で、販売促進ツールとしてのポイントプログラムならではの領域が徐々に小さくなってきている。今までは既存顧客の囲い込みだけでなく、新規顧客の獲得や顧客の優良化、相互送客といった面でポイントプログラムは独自の役割を担っていたが、近年ではグルーポンやポンパレに代表されるフラッシュマーケティング(※2)や、携帯電話を利用したモバイルクーポンを活用する企業が増えてきているなど、ポイントプログラム以外の販売促進ツールも普及してきているのだ。

 これらの変化は、消費者にとってポイントプログラムの利便性が高まってきていることを示す一方で、他の販促ツールの普及によって、その存在感が薄れていく可能性も示唆している。では、消費者はポイントプログラムを現在どのように認識しているのだろうか。

消費者のポイントリテラシーが向上

 ほとんどの企業においてポイントプログラムが導入されるようになった現在の状況を踏まえると、ポイントプログラムは、それを必要とする人達に対して一定の普及をし終えたと考えられる。また、同じ業界でのサービス内容の類似性も考慮すると、ポイントプログラムはコモディティ化してきているといえよう。

 その一方で、ポイントが消費者の購買行動に与える変化はどうだろうか。図表は、ポイントプログラムが商品・サービスや店舗の選択に及ぼす影響を調査した結果であるが、いずれも2012年調査ではその影響の減少が見られる。

ポイントが商品・サービスや店舗の選択に及ぼす影響

 こうした結果から、「ポイントはもらうものの、ポイントのためだけに商品・サービスや店舗を変えるわけではない」という人が増加していることが考えられる。一時的な変化かもしれないが、単純なポイント値引きが有効な人達の割合が減少しているのだ。

より高度なマーケティングツールとしての活用

 ポイント値引きの効果が薄れてきたからポイントプログラムは不要、と断じるのは早計である。そもそもポイントプログラムはロイヤルティプログラムの一形態であり、その主目的は適切な優遇の提供による主要顧客の育成・維持にある。この目的を達成していく上で、ポイントをインセンティブとして顧客の情報を収集する仕組みは欠かせないものである。

 改める必要があるのは、全顧客を対象とした一律的なポイント大盤振る舞いなどの、比較的安易な施策の偏重である。こうした施策は、ポイントを必要としない顧客にもポイントを提供することになるため、必要以上にコストをかけてしまうことになるのだ。

 ポイントには、それが貯まるから店舗や商品・サービスを決めるという効果のほか、貯まったポイントがあるから今まで差し控えていた商品を購入するという効果もある。こうした効果を踏まえ、ポイントが有効な顧客にはポイント優遇を重点的に提供し、それ以外の顧客には別の優遇を提供するといった、顧客の特性に応じたロイヤルティプログラムの運営を行なっていく必要がある。

 また、プログラムの運用を通して蓄積した情報の分析によって、新商品・サービスの開発やマーチャンダイジング、販売促進の最適化も実現できる。ロイヤルティプログラムが単なる一律値引きと大きく異なるのは、この点にある。

 今後は、顧客を知るツールとしてポイントを活用し、その理解に基づいたマーケティング活動の最適化を行っていくことが、収益、ひいては利益の最大化を実現させる上で必要となる。「なんとなくポイントを導入」して効果を得られる時代は、終焉を迎えたといえよう。

1) 企業(business)と一般消費者(consumer)の取引のこと。
2) 商品やサービスの提供にあたり、割引価格や特典がついたクーポンを期間限定でインターネット上で販売する手法。一般に24時間から72時間程度の短時間(フラッシュ)に、集客と販売および見込み顧客の情報収集が行われるという特徴を持つ。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

冨田勝己Katsumi Tomita

ICT・メディア産業コンサルティング部
上級コンサルタント
専門:マーケティング全般

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