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スパゲティ化したシステムを解きほぐす-BPOを活用した業務の再設計-

2013年5月号

ERM事業企画部 副主任コンサルタント 竹田正

業務の自動化が進展する中で、システムの過度な密結合が進み、新たな弊害が生じている。この弊害解決のため、企業にはユーザーとシステムの2つの視点を持ち、業務を再設計する力が求められる。業務の詳細を熟知し、システムコンサルティング力を持つBPO事業会社の力を活用することも今後の選択肢の1つとして考えられる。

業務の自動化が進む中で生じる新たな弊害

 1960年代以降、企業は、様々な業務にシステムを導入し自動化を図ることで、事業費の削減や業務の高速化を実現してきた。その一方、多くのシステムが導入され、システム自体がスパゲティ化していき、新たな問題が発生している。例えば、金融機関などで新たな商品やサービスを提供したくても、システムの改修に時間がかかり競合他社に商品・サービス提供開始で後れを取る、費用がかかりすぎて実現できない、などといった問題である。

 ここでいうスパゲティ化とは、単にシステムの数や機能が増えたことではなく、システム同士が過度に密結合していることである。密結合とは、システム用語で、個々のシステム処理がお互いに依存し繋がっている状態を指す。密結合にすることで高速な処理が実現されるが、その反面、業務変更に伴うシステム変更の際、一つの処理の変更が他の処理に影響を及ぼすため、容易に変更できないという欠点がある。つまり、一つの処理の変更がどの処理にまで影響を及ぼすかの調査や、変更後、影響範囲にある他の機能が正常に動作するかの確認が必要になり、時間を取られることになるのである。実際に、新規にシステムを作る場合に比べ、既存機能を変更する場合には、設計開発の期間が1割増え、テストの期間は6割増えるというデータ(※1)もある(図表1)。

新規開発と機能追加の場合の開発期間の比較

 過度な密結合を解消するためにシステム間のお互いへの依存度を弱める疎結合化(※2)が求められており、様々な考え方が示されてきた。しかし、日本では多くの企業で疎結合化が実現できていない。疎結合化の一つの考え方であるSOA(※3)を例にとると、日本での普及率は1割と、米国の8割に比べて低いと言われている。

過度な分業化で失われた業務設計力

 スパゲティ化を解きほぐせない原因として、日本の企業では同じ業務の中でシステム化の対象とする処理パターンが多いこと、またユーザー部門とシステム部門が分かれ過度に専門的な組織になっていることが考えられる。

 米国では、サービスや業務を設計する際、対応する処理パターンを絞り、発生頻度の低い例外処理は対応しない判断をしている企業が多い。そのため、業務をシステム化する場合にも、既製システム(パッケージソフト、ASPサービスなど)が対応する主な処理を基本とし、新たな作り込みは行わない。

 一方、日本では、顧客の多様な要望にきめ細かく対応するという戦略をとる企業が多い。そのため業務量の少ない例外処理にも対応できるようなシステムを最初から作り込んでしまっている。このようにシステム化された処理を解きほぐし再構築するには、ユーザーとシステムの2つの視点を持って、どこをシステム化してどこを人が行うのか一から洗い出し設計し直していく、業務再設計力が必要となる。しかし、企業規模の拡大やサービスの多様化に伴い、ユーザー部門とシステム部門の分業化が進んだ結果、システム部門には業務の全体像や実態を理解する社員が少なくなり、ユーザー部門にはシステムのことを理解する社員がいなくなってしまっている。過度な分業により、知識や視点がどちらかに偏るため、人とシステムのどちらで対応すべき処理かという全体的な検討ができなくなるのである(図表2)。

発生頻度に応じた実現手段の理想と実態

ユーザーとシステム両者の視点を持つ外部の力の活用

 企業は失った業務設計力を回復することが求められるわけだが、数十年かけて失われた力を取り戻すことは一朝一夕では難しい。部門間でのローテーションを行い、意識的に両部門の専門性や視点を持った人材を育成する、もしくは2つの視点を持って業務を再設計する業務企画の部署を設け、その中で育成するといった方策を採るとしても、十年単位の時間がかかると思われる。

 そこで別の解決手段として、ユーザーとシステムの2つの視点を持つBPO(※4)事業会社を活用することが考えられる。日々業務を行っているBPO事業会社では、業務量の少ない処理パターンも含めて全ての業務の詳細までを熟知している。その業務知識とシステムコンサルティング力を組み合わせることで、最適な業務再設計を行うことが可能となり、システムの密結合の解消にも貢献することができる。

 実際に外部の力を活用し業務再設計を行った事例もある。ある企業では、度重なるシステム拡張やそれにあわせた業務変更の結果、システムが過度な密結合状態になっていた。そのため、システム部門が中心となり、安価なパッケージソフトで同等の機能を持つシステムに再構築することが検討された。しかし、これには多くのカスタマイズが必要となり、パッケージソフトの数倍もの費用がかかることが判明、プロジェクトは一旦頓挫した。同社は方針を変更し、業務を委託しているBPO事業会社と協力し、全体的な視点で業務の再設計を行った。BPO事業会社がもつ高いシステムコンサルティング力を活用し大幅なシステムコストの削減を実現している。

 BPOというと、一般には人件費単価削減の施策として認識されている。しかし、高いシステムコンサルティング力と業務再設計力を持つBPO事業会社を活用することで、企業は人件費単価削減だけではなく、業務で使用するシステム費の削減やサービス提供の迅速化といった効果を得ることもできる。今後、企業は、こうした社外のサポートも得ながら、業務の柔軟性を取り戻していくことが重要になるのではないか。

1) 独立行政法人 情報処理推進機構「ソフトウェア開発データ白書」
2) 個々のシステム間でお互いへの依存度を減らし、繋がりを緩めることを指すシステム用語。
3) SOA(Service Oriented Architecture)とは、決まった手順で呼び出すことのできるソフトの集合体としてシステムを構築する設計手法を指し、疎結合化を実現する手法の一つである。
4) BPO(Business Process Outsourcing)とは、企業における業務の一部について、企画から実施までを外部の専門業者に委託することを指す。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

竹田正Tadashi Takeda

NRI・プロセスイノベーション株式会社
副主任コンサルタント
専門:BPO、業務基盤構築

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