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株式指数とアクティブ運用の進化

2013年5月号

金融ITイノベーション研究部 主任研究員 浦壁厚郎

アクティブ運用者は、株式指数の存在とその進化に促され、「アクティブ・シェア」を用いてベンチマークとの保有内容の差異を示すようになっている。

株式戦略指数による運用戦略のコモディティ化

 株式指数が多様化している。

 伝統的な株式指数は、ある要件を満たす株式銘柄群を時価総額に従って保有したポートフォリオの価値を示し、市場指数として資産運用の様々な場面で用いられている。例えば、パッシブ運用者にとっては成果を連動させるべきベンチマーク、アクティブ運用者にとっては凌駕すべきベンチマークとなっている。

 しかし近年、主要な指数ベンダーはアクティブ運用戦略のアイデアを具現するような指数を発表している。このような指数は、市場指数に対して「戦略指数」(※1)などと呼ばれる。

 戦略指数の例を図表に示した。戦略指数は、多くのアクティブ運用者の実践成果や定量的なリサーチによって、何らかのプレミアムが存在すると考えられる運用戦略を提供するもので、従来の市場指数に対して、投資収益率や投資効率などの点で優れていることが多い。戦略指数相当の投資収益を提供する運用も提案されており、パッシブETFや指数先物のように安価で利便性の高い投資ツールによって広く投資可能となっているものもある。

戦略指数の例

 透明性や再現性の高い指数という形で運用戦略が提供されると、従来その戦略を提供していたアクティブ運用はコモディティ化し、戦略指数に対するパッシブ運用で代替される危険に直面する。

アクティブ運用者による差別化とアクティブ・シェア

 アクティブ運用にも変化の兆しがある。

 従来、アクティブ運用者にとっての市場指数(ベンチマーク)は、単に運用成果の目標に留まらず、運用上の重要な規範ともなっていた。これは、運用成果が委託者の意図と大きく乖離することを避けるため、ベンチマークに対する推定トラッキング・エラーの上限や、サイズ、セクター等の乖離許容幅の運用制約を設けることが多いからである。

 こうした制約下でアクティブ・ポートフォリオを構築する自然な方法は、出発点としてベンチマークにおける構成銘柄群とそのウェイトを用い、アクティブな要素としてそれらを調整することである。その銘柄自体が有望かどうかと関わりなく、ベンチマークに含まれる大型銘柄を保有することもしばしば行われる。結果、パッシブ運用と大差ないアクティブ運用も多いとされ、わが国の企業年金の株式運用でも、運用報酬に見合わないアクティブ運用を解約してパッシブ運用に集約する「パッシブ化」が進行している。

 運用制約の存在は、優れた能力を有するアクティブ運用者から能力発揮の機会を奪ってしまい、そうでない運用者や、ベンチマーク自体との差別化を難しくする要因になっている。こうした状況の中で、特に海外の運用者には「アクティブ・シェア」と呼ばれる指標を使ってベンチマークとの保有内容の差異を説明する者が増えているといわれる。アクティブ・シェアとは、運用者のポートフォリオに含まれる、ベンチマークと重複しないウェイトを表す(※2)もので、将来の超過収益の予測力があることを示す研究がこれまでに蓄積されてきている。

 野村総合研究所が2013年に実施したグローバル株式運用の調査によれば、優れた成果を残してきた運用戦略は、伝統的なアクティブ運用と同様に運用成果としては市場指数をアウトパフォームすることを標榜しながらも、アクティブ・シェアがかなり高い、つまり市場指数(※3)とはまったく異なるポートフォリオとなっているケースが多かった。

 例えば、銘柄を30~50程度に厳選・集中するものや、逆に流動性等の理由で市場指数から除かれる銘柄群を含む広範なユニバースから効率的に銘柄選択を行って分散するもの、社内でアクティブ・シェアの高い運用者を組み合わせたマルチ・マネジャー運用などの実践例があり、いずれも投資資金を集めていた。機関投資家や運用コンサルタントが運用者に対してアクティブ・シェアを尋ねることも一般化しており、高アクティブ・シェアの運用者を歓迎する風潮も見られる(※4)。

指数の存在と進化がもたらす資本市場の価値向上

 アクティブ運用戦略のうち、戦略指数の形で内容が説明され、複製されるものは淘汰されるだろう。また、市場指数を強い規範とするアクティブ運用も、相当な運用成果をもって能力を証明できない限り、パッシブ化の潮流には逆らえないだろう。

 投資家は、指数とアクティブ運用者との間の緊張関係の高まりを歓迎すべきである。戦略指数によって系統的に存在すると考えられるプレミアムへのアクセスが容易になると共に、間接的に、指数では再現できない様々な工夫をアクティブ運用者に促すことで、アクティブ運用の魅力を向上させることにもなるからである。ただしそのためには、アクティブ運用者に与えるマンデートを再考し、制約を緩和する必要はあろう。これによってアクティブ運用は、ベンチマークを一種のアンチテーゼとし、その凌駕を目指す本来の姿に回帰できると思われる。

 指数の存在と進化は、優れた独自の投資アイデアの発掘とその実践をアクティブ運用者に促す。「パッシブ運用は投資価値の評価をしないので資本市場の価値向上には寄与しない」と批判される。しかし、その前提となる指数は、資本市場の価値向上に大いに寄与しているとの見方ができるのではないか。

1) オルタナティブ・ベータ、スマート・ベータなどの呼称もある。
2) ¹⁄₂Σ¦wファンド−wベンチマーク¦として計算することが多い(wはウェイト。Σは全ての銘柄についての合計)。保有銘柄もそれらのウェイトもベンチマーク指数と全く同じパッシブ運用のアクティブ・シェアは0%となる。ベンチマークに含まれる銘柄を全く保有していない場合は100%となる。トラッキング・エラーとは異なる情報内容を有するとされ、アクティブ・シェアが高いことは、必ずしもトラッキング・エラーが高いことを意味しない。
3) なお代表的な指数の銘柄数は、MSCI World指数で1,608、MSCI All Country orld 指数で2,431。いずれも2013年3月末現在。
4) もちろん、アクティブ・シェアが高いことは、一義的には、ベンチマーク対比で優れた成果を提供するための必要条件に過ぎない。アクティブ・シェアについてはMartijn Cremers and Antti Petajisto, ""HowActive is Your Fund Manager? A New MeasureThat Predicts Performance"", (AFA 2007Chicago Meetings Paper, March 21, 2006,revised May 2009)以降の論考を参照。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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浦壁厚郎

浦壁厚郎Atsuo Urakabe

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