1. HOME
  2. 刊行物
  3. 金融ITフォーカス
  4. カテゴリから探す
  5. 数理の窓
  6. あなたの思いに従う確率

あなたの思いに従う確率

2013年5月号

朱 映奇

ここに二組のくじがある。それぞれでA、Bのどちらかを選べる。あなたはどちらを選ぶだろうか?

 <1組目>

 A:確実に1000ドルが貰える。

 B: 10%の確率で2500ドル、89%の確率で1000ドルが貰える。残り1%の可能性は賞金なし。

 <2組目>

 A: 11%の確率で1000ドルが貰えるが、89%の確率で賞金なし。

 B: 10%の確率で2500ドルが貰えるが、90%の確率で賞金なし。

 アレという人が実験した結果、多くの人は1組目のくじでオプションAを選び、2組目のくじでオプションBを選んだ。

 この結果を期待効用の式に書き換えると、以下のように、それぞれの組で逆の結果となってしまう。

 <1組目>

 100%U(1000)>10%U(2500)+89%U(1000)⇒11%U(1000)>10%U(2500)

 <2組目>

 10%U(2500)>11%U(1000)

 つまり、二組のくじでは、人は逆の行動を取るのである。これはアレのパラドックスと呼ばれ、期待効用理論に対するアノマリーとして知られている。

 これに対する解釈として、プロスペクト理論の確率加重関数がある。人間の意思決定は確率をそのまま掛けた期待値によるのではなく、確率自体にあなたの思いを加重した(つまり確率加重関数によって変換した)主観的なデシジョン・ウェイトで各選択肢の価値を重み付けして行っていると言うのである。

 確率加重関数の特徴は、低い確率が過大評価され、高い確率が過小評価される非線形性である。このような確率に対する非線形の評価は宝くじの購入や保険の加入の説明にもなる。まれにしか起きないにも関わらず、高額な当選金や事故による大きな被害のインパクトが人々の確率に対する評価を歪ませ、確率を過大評価させて、宝くじを買ったり保険に入ったりさせるのだろう。また、その歪み度合いには、当選した場合や事故にあった場合のインパクトの大きさが影響しているのではないかと思う。

 クレジットリスク管理で利用が広がるクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)にも同じ要素はないだろうか。マーケットで取引されているCDS保証料率は市場参加者のデフォルト確率に対する評価で決まり、理論的には保険料率は想定元本と無関係である。しかしその評価には、デフォルト事象が発生した時のインパクトに繋がる想定元本がどこかで影響しているかもしれない。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

印刷用PDF

Writer’s Profile

朱 映奇Eiki Shu

投資情報サービス事業部
主任コンサルタント

この執筆者の他の記事

朱 映奇の他の記事一覧

このページを見た人はこんなページも見ています