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決算短信次世代XBRL、TDnetの役割にあわせた更改を

2013年4月号

資産運用ソリューション企画部 上級データアナリスト 三井千絵

2013年はEDINETがシステム更改し、XBRLの対象範囲を拡大するが、同じ決算をより早く開示するTDnetについても、その対応が注目されている。TDnetでは証券市場の活性化を目指した独自の情報開示も扱われている。それぞれの役割に応じた発展が求められる。

EDINETとの「一元化」を目指してきたTDnetのXBRL化

 日本には、開示書類を閲覧するシステムが2つある。ひとつは金融庁のEDINETで、2009年の秋から高度化・XBRL対象範囲拡大(※1)に取り組んでおり、2013年度中にシステム更改が予定されている。もうひとつは東証のTDnet、上場企業が登録した決算短信や業績予想修正を閲覧することができるシステムだ。前者は「法定開示」と呼ばれており、後者は「適時開示」と呼ばれてきた。

 TDnetは、もともとは兜倶楽部に投函していた決算短信を電子化したものである。2008年、EDINETと同時にTDnetもXBRL化された。企業は、決算短信(TDnet)にも有価証券報告書(EDINET)にも財務諸表を記載するが、これらをXBRLで表すタクソノミ(※2)は金融庁が用意したものをTDnetでも使用している。企業は各財務諸表本表をXBRLで作成すると、まずは決算短信としてTDnetに登録する。その後、監査を終えて株主総会が終わった後に有価証券報告書としてEDINETに登録する。同じタクソノミを使用するため、企業は「書類作成の一元化」が可能となり、金融情報サービス業者にとっては、まず短信として取り込んだXBRLを、有報から取得したXBRLで上書きするという一元化運用が可能となった。

 一方近頃、TDnetについて、法定開示であるEDINETとの違いがわかりにくくなってきているとの指摘が聞かれる。例えば、近年四半期決算において、TDnetとEDINETに同時に開示する企業が現れてきている。同じXBRLであることが同時提出を後押ししたのかもしれないが、それは短い期間でTDnetとEDINETに対し2つ出すことについての疑問にもつながる。提出日程が若干早いだけでは、両者の役割の違いが見えにくい。

常に新しい開示に向けて挑戦してきたTDnet

 TDnetではこれまで、市場のニーズやグローバルスタンダードにあわせて、金融庁より先に四半期開示、連結決算を中心とした開示への切り替え、キャッシュフローの開示などに取り組んできた。現在でもTDnetにしかない情報開示がいくつもある。

 一つは業績予想、配当予想である。すべての東証上場企業が業績予想を決められたフォーマットで発表し、定められた範囲を超える予想の修正があった場合も必ず発表することになっているが、これは世界的にも類をみない。この情報が発表と同時にXBRLで開示され、英語表示変換が可能となり、また自動処理をへて各種報道端末に即座に配信されている。また株価にリアルタイムに影響のある情報として、コーポレートアクションに関わる情報の開示も徹底している。さらに、ここ数年中期経営計画発表の奨励や、現在はTDnetでは配信されていないが、コーポレートガバナンス報告書のXBRL化にも取り組んでおり、TDnetでの配信が期待されている。

 しかし株価低迷が長引き、上場企業が減る中で、キャッシュフローを任意開示に切り替えたり、四半期の提出期限を遅らせるなど、ここ数年はこれまでと逆行するような対応も見られている。

TDnetの新しいXBRLへの対応

 こうした状況のなか、2013年度中にEDINETが更改され、新しいタクソノミに変更される。タクソノミは財務諸表規則(財規)(※3)の改正とともに毎年金融庁が更新しているが、更改後は財規・開示府令の改正にあわせた更新は新タクソノミにしか適用されない。EDINETと同じタクソノミを用いているTDnetも新タクソノミや技術に合わせる必要があり、1月末に、利用者に向け更改の予定について説明が行われた。

 その中で、金融庁の対応にあわせて、インラインXBRL(※4)などの新書式は導入するが、XBRLの対象範囲拡大は、ほぼ行わない予定であることを発表した。タクソノミやファイル書式をEDINETにあわせても、XBRL化の対象範囲がEDINETに比べ狭くなっている。具体的な例をあげると、アナリストレポートや投資評価でよく用いられるセグメント情報はEDINETではXBRL化されるが、TDnetでは対象外になってしまうことになる。これは決算短信を作成する企業の負担増(※5)を避けるための措置と思われるが、利用者の利便性向上には逆行する。対応できない理由には、短い期間でEDINETと同じ技術に切り替えることなども一因であるとみられるが、決算短信の良さが生きてこない恐れがある。

TDnetにしかできないこと、将来への期待

 TDnetはこの更改を契機に、TDnetに求められている役割を再度見直し、法定開示であるEDINETでは実現が困難なものに力を入れたほうが良いのではないだろうか。東証の戦略と、マーケットの状況を踏まえ、例えば外国人投資家のデータ利用の奨励に力を入れても良いし、個人投資家による開示情報利用を重視することもできる。インラインXBRLは表示用のHTMLとデータであるXBRLの一元化として注目されているが、法定開示の有報と異なり、TDnetではフラグ(※6)を用い外国人やシステムでも判断しやすい情報を多く取り込んだり、グラフィカルな利用をしやすいデータ体系にすることも可能ではないだろうか。データ作成や分析者の利便性を考えれば、EDINETと同じタグを利用しつつも、XBRL化対象項目は、分析者が開示後速やかに評価に反映したい重要なデータだけに絞るということも一案だ。

TDnet、EDINETの違い

 作成者・利用者のことを考えると、EDINETにあわせた最低限の対応はやはり避けられない。しかし、TDnetは今後も引き続き市場と対話しながら、独自の開示システムのあり方を探り、市場全体の活性化に貢献すべきではないだろうか。

1) 次世代EDINET。金融庁の法定開示書類を電子的に登録・閲覧するシステムEDINETは2013年度中に更改し、現在財務諸表本表などに限定されるXBRLの対象範囲を拡大する。有価証券報告書については全文を、また大量保有報告書や臨時報告書もデータとして取得できるようになる。詳しくは、「新時代の企業情報開示 -2013年EDINET更改と新XBRLは企業価値を向上させるか?-」参照。
2) XBRLを構成する仕様の一つ。各データの意味を定義するファイル。複数の役割をもち、勘定科目の親子関係を表したり、英語名などを定義することができる。財務諸表本表については、財務諸表規則に従い電子的な決算書が作成できるよう、科目の表示順位を定義することができる。
3) 財務諸表を作成するにあたってその様式や作成方法を定めた規則。
4) XBRLはインスタンスというデータとタグを記載するファイルと、タクソノミで構成されているが、このインスタンスに、ブラウザでも表示できる書式を追加したもの。データを表すタグと、フォントや表を構成するタグが、ひとつのファイルに一緒に記載されている。
5) 従来のインスタンスであれば、作成者は同じものをTDnet とEDINET で再利用できたが、インラインXBRLでは、デザインのタグも含む為、レイアウトが異なるEDINETとTDnetでは、現在提供されているツール等で、完全な共有が難しいことが予想される。
6) 例えば文章で記載された情報以外に、どのようなリスクがあるかや、どの指標を経営上重視しているかといった、設問とYes、No回答といった形にすることによって、定性的な情報を英語への切り替えやシステム的な判断に用いやすくすること。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

三井千絵

三井千絵Chie Mitsui

金融デジタル企画一部
上級研究員
専門:企業開示