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銀行融資のオフバランス化とリスク

2013年3月号

NRI北京 金融システム研究部長 神宮健

中国では、オンバランスでの銀行融資の規制を厳しくした結果、オフバランス商品を使った迂回融資が増加し、経済全体で見ると金融リスクが大きくなる皮肉な状況が生じている。

銀行融資のオフバランス化による規制回避

 中国経済は2012年後半に底を打った模様であるが、金融面のリスクは依然として存在している。中央経済工作会議(2012年12月開催)は、2013年の経済政策の主要任務の一つに「財政金融分野に存在する隠れたリスク」を重視し「システマチックな金融リスクと区域性の金融リスク」を防ぐことを挙げている。足元で議論されている金融リスクには、「シャドーバンキング」と地方政府の融資平台(※1)の問題があり、両者は関連している。

 中国の「シャドーバンキング」に明白な定義はないようだが、銀行のオンバランスでの融資以外の信用仲介を指している模様で(※2)、規模は推計によって異なるが概ね30兆元とされる。ちなみに銀行の非金融部門への融資残高(オンバランス)は2012年末で約69兆元である(※3)。

 ここで、銀行の販売する理財商品(資金運用商品)のうちオフバランス商品(元本保証なし)が、融資規制回避の迂回融資に使われており注目されている(※4)。

 理財商品の資金運用の方法は様々である。2012年に企業(非金融業)の債券発行が増え、発行額は、2011年の2.1兆元から2012年は約3.2兆元に達した(※5)。この中には地方政府の融資平台が発行する「城投債」(都市投資債)も多く(※6)、銀行の理財商品の運用先となっている。城投債増加の背景には、インフラ建設等の資金需要に加えて、融資平台向け融資条件が厳しくなる中、満期を迎えた融資の債券発行による借換えがある。一方、銀行にとっては、オフバランス勘定の取引となり、預貸比率規制等を回避できる。

 迂回融資には、信託会社や証券会社もかかわっている。銀行のバランスシート上にある融資(不動産やインフラ向け)や手形を信託会社や証券会社が購入し、それを基に不動産信託商品や証券会社の資産管理計画(プラン)を組成する。銀行はこれらの商品を購入し、今度はこれらを組入れた銀行の理財商品を発売する。以上は単純化された模式で、実際には様々な複雑な方法があるが、要は信託会社や証券会社の商品を経由した迂回融資となる。信託会社・証券会社にとっては、こうした業務は融資チャネルの提供にすぎず(※7)、事実上の融資利鞘の大部分は銀行の収入となり、証券会社等は手数料を得ることになる。

 銀行・信託会社が協力する「銀信合作」業務は、銀行業監督管理委員会が2011年末までに同業務を段階的にオンバランス化させる措置(2010年8月)を採ったため難しくなった(※8)(それでも2012年9月末現在「銀信合作」は約1.84兆元の規模を持つ(※9))。2012年に、この「銀信」合作に取って代わったのが証券会社の資産管理業務である。2012年は、証券業界の規制緩和が進んだ年であり、特に資産管理業務において許可制が事後登録制になり、また、投資範囲も拡大された(※10)。そして、主に「定向」資産管理計画(※11)が迂回融資に使われた。証券業協会によれば、2012年末の証券業界の受託管理資金元本総額は1.89兆元で、2011年末の2819億元から急増した。この増分の多くは、銀行の理財商品が購入したものと見られる(※12)。

銀行のオフバランス理財商品のリスク

 銀行のオフバランスの理財商品のリスクを見ると、まず、期間のミスマッチがある。理財商品が短期でロールオーバーされるのに対し、最終的な投資先の多くは不動産・インフラ建設等である。また、異なる時期に発行された理財商品の資金が一つにプールされて運用されている。高い収益率を謳っている場合もあるが、特定の商品の収益率の根拠が不透明な点は従来から指摘されている。さらに、顧客に元本割れのリスクを十分に説明せずに販売している場合がある。ここで信用リスクを見ると、地方政府の融資平台が返済不能になった場合、最終的には政府が救済するとの暗黙の了解がある。それに近い例もあるが、実は、政府の責任は曖昧なまま走っている。最終的な借り手(不動産会社等)が返済不能になった場合、元本保証商品でないため最終投資家がリスクを負うことになるが、リスクが十分に説明されていない状況もあり、売り手責任の問題が浮上することも考えられる。

今後の対応

 一連の流れを見ると、当局がリスク管理のためにオンバランス取引における規制を厳しくした結果、規制の比較的緩い商品を利用したルートを通して実質的な融資がなされていることがわかる。証券会社の資産管理計画にしろ、企業の債券にしろ、間接金融偏重の金融システムを改善すべく、規制緩和を進めてきた分野である。

社会資金調達額と銀行融資の動向

 金融革新の面から見ると、昨年来、証券会社の資産管理業務の規模は急増したものの、証券監督管理委員会が真に求める革新的な資産管理計画が生まれたわけではない。証券会社側にもこの認識はあり、また迂回融資における「銀証合作」もいずれ規制されると予想しているものの、利益が出るうちは続けるという姿勢である(※13)。現時点では銀行中心の金融構造から抜け出すことがなかなか難しいことが示されたとも言える。

 マクロ金融政策の面からは、オフバランス取引の増加により、従来の指標だけでは金融調節の効果がとらえ難くなるが、約2年前から発表されている社会資金調達額(「社会融資規模」)等、いくつかの指標から判断することが重要になろう。

 リスク管理の面では、オンバランスを規制することにより、皮肉にも経済全体では金融リスクが大きくなった可能性がある。上記の迂回融資においては、リスクの管理・把握や(特に個人投資家への)情報開示がうまくできていないからである。既に銀監会は今年、銀行の理財商品のリスク管理を強化するとしているが、迂回融資には銀行以外の金融機関も関係しており、業態毎の縦割り行政の改善等、金融システム全体のリスク管理の向上も求められている。

1) 地方政府が設立した、政府投資プロジェクトの資金調達を行う独立法人。2009年の景気刺激策を受けて、融資平台向け銀行融資が増加した。
2) 中国人民銀行調査司の内部研究レポートでは、商業銀行オフバランス理財(資金運用商品)、証券会社集合理財、基金会社専戸(専門口座)理財、証券投資基金、投資連結保険(変額保険)の投資口座、産業投資基金、創業投資基金、PEファンド、企業年金、住宅積立金、小口貸出会社、非銀行系金融リース会社等(一部略)が含まれている。(新世紀 2012年10月22日号)
3) 2012年11月末。その他預金性機関の統計。
4) なお銀行の理財商品の規模は7兆元強である。閻慶民銀監会主席助理 2013年1月29日発言。
5) CP、超短期CP、企業債、MTN、会社債の合計。
6) 企業債、MTN、CP等の形式で発行される。本誌2012.11 「増加する企業の債券発行」参照
7) 「通道」業務と呼ばれる。
8) 詳しくは、本誌2011.7「不良債権リスクの抑制と中国版バーゼルⅢ導入に向けた動き」参照
9) 中国信託業協会。
10) 詳しくは、本誌2012.10「加速する中国証券業界の規制緩和」参照
11)「 定向」資産管理計画は単一顧客の資金を専門口座を通して運用するもの。総資産価値は100万元以上。2012年10月より、投資範囲は顧客との契約により定めるとされた。信用取引も可能。ちなみに、以前の投資範囲は、株式、債券、証券投資基金、集合理財、中央銀行手形、CP、ABS、金融デリバティブ商品、証監会が認可したその他投資商品。
12) 中国証券業協会。
13) 弊社の聞き取り調査による。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

神宮健Takeshi Jingu

金融イノベーション研究部
上席研究員
専門:中国経済・金融資本市場

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