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宇宙を超える数

2013年2月号

外園康智

100号記念につき、数はどこまで続くか、巨大な数について考えたい。

 漢字文化圏では数の桁には名前がついており、兆、京、垓、…、那由他、不可思議と続き、最後は無量大数となる。指数表記するならば、1068である。また、西欧圏では10の100乗、Googol=10100がある。宇宙全体の素粒子の数は1080個と言われているため、素粒子1つ1つに数字を書いたとしてもまだGoogolまで達しない。さらに仏教世界には、不可説不可説転と呼ばれる10の7×2122乗=1037218383881977644441306597687849648128が、経典最大の数として登場する。

 ところが、数学の世界では、これらよりもはるかに大きく“数学的な意味をもつ”数がある。グラハム問題(※1)と呼ばれる組合せ論の問題で、この証明中に出てくるグラハム数である。この数は、これまでの数学記号だけではうまく表せないため、クヌース矢印「↑」と呼ばれる“新しい演算記号”を定義して表記する。

 3↑↑4は、3の3乗の3乗の3乗(3の3乗を3回繰返す)で、37625597484987である。さらに、3↑↑↑3は、再帰的に3↑↑3を3回繰返す操作であり、3↑↑3↑↑3↑↑3↑↑3=3↑(3↑3の27乗)と同じになる。数にすると3の10兆乗の10兆乗程度となる。ここですでに、不可説不可説転さえ軽く超えている。さらに、↑を一本増やすと、3↑↑↑3を3の10兆乗の10兆乗回繰り返すことを意味し、この操作をさらに63段階繰返すと、グラハム数(※2)となる。ここまでくると、指数表記でさえ宇宙全体を使っても書くことができない。数の演算の有限回操作を定義し、それを繰返し続けていくとどうなるか想像することによってのみ、宇宙を超えられるのだ。

 クヌース矢印のような、数を少数の記号と形式で表す工夫は、古よりなされている。とくに10進法は、位とりと空“=0”により、すべての数を10個の記号で表す発明だ。そして、巨大な数の計算技術は、兆や京単位の数を扱う金融世界の重要なインフラとなっている。

 ところで、子供達はよく声に出して100まで数えるが、いつか、数え終わらない大きな数を知る。そして、数は無限に続くことを知った時に、人の時間が有限なことを理解するのだろう。

1) グラハム問題とは、n次元超立方体の2n個の頂点を互いに全て線で結ぶ。次に連結した線を赤か青のどちらかの色に塗り分ける。このとき、少なくともグラハム数以上のnであれば、どんな塗り方をしても、同一平面上にある四点を結ぶ線の中で、全て赤もしくは青のものが存在する。
2) グラハム数を紙面にて表記することは難しいため、正確な定義ができていないことをご了承下さい。

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Writer’s Profile

外園康智Yasunori Hokazono

金融デジタル企画一部
上級研究員

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