1. HOME
  2. 刊行物
  3. 金融ITフォーカス
  4. カテゴリから探す
  5. セミナー報告
  6. NRI金融ITフォーラム報告

NRI金融ITフォーラム報告

2013年2月号

野村総合研究所(NRI)は2012年11月20日、「日本には強い金融サービスがある」をテーマに「NRI金融ITフォーラム」を開催した。

 リーマンショックに端を発した金融危機以降、金融ビジネスを取り巻く環境は厳しい状況が続いている。しかしながらそういった状況の中で、制度変更や各金融機関による新ビジネスへの取り組みなどが数多くなされてきた。NRIでは、日本の金融サービスの未来を描くための一助になればと考え、銀行、証券会社、保険会社、運用会社の方々向けに、44種類52コマのセッションからなるフォーラムを企画した。当日は、様々な業態から合計778名の参加をいただいた。

 ここでは、スルガ銀行 代表取締役社長の岡野様、東京証券取引所 常務執行役員の土本様、NRI顧問(元外務事務次官)の薮中、NRI代表取締役 専務執行役員の石橋の4講演に絞って報告する。

スルガ銀行のリテールマーケットへの取り組みとそれを支えるITの役割

スルガ銀行株式会社 代表取締役社長 岡野 光喜氏

 スルガ銀行は、大手優良地方銀行の活動拠点に挟まれた立地にあり、他行と同じことをしていては自らの地盤を奪われる、という危機感を持っていた。そこでスルガ銀行では、1980年代後半からリテールマーケットへ特化する戦略に舵を切った。

 リテールマーケットで差別化を図る戦略として現在は、①ネットワーク事業、②コミュニティバンク、③広域事業、④代理店事業の4つの市場にターゲットを絞っている。「ネットワーク事業」では、インターネット・コールセンターによるダイレクトチャネルの充実を図っている。「コミュニティバンク」は、地盤である静岡県・神奈川県においてフルバンキングサービスを展開するものである。首都圏をはじめ札幌から福岡まで主要な都市圏における事業展開を図る「広域事業」にも力を入れている。また、日本郵政グループの幅広いネットワークを利用した「代理店事業」によって、サービス領域の拡大を図ることもできた。

 今までの既成の枠にとらわれず、お客様が求める商品を開発することにも積極的に取り組んでいる。具体例の一つが、「宝くじ付き定期預金」である。1999年の取り扱い開始以来、これまで億万長者が11名誕生している。またその他にも、邦銀初となる女性専用の住宅ローンや、本人の静脈認証と照合しない限り出金できないというセキュリティを強化した世界初の商品「バイオセキュリティ預金」も好評をいただいている。銀行視点では利便性ばかりを追求しがちであるが、お客様視点に立つと逆転の発想も生まれてくる例と言えよう。

 戦略を進める上でITの活用も欠かせない。個々のお客様にあったサービスを提供していくには、お客様情報をしっかり管理し分析できる環境を整える必要がある。そこで、営業顧客データベース等の各種情報を一元化し、情報連携の充実を図っている。

 また、2011年8月にホームページのリニューアルを行い、インターネットバンキングもNRIに依頼し2012年1月に全面的にリニューアルした。単なる取引機能ではなく、戦略的に重要な営業チャネルと位置付けて各種プロモーションを実施し、お客様へのサービス向上・取引増強・収益拡大を図ることを目指している。その結果、ネットチャネルにおいてプロモーションコンテンツ起点のお客さま訴求が可能となった。

 今後も一層の差別化を図り、コンシェルジュバンクとして、「夢をかたちにする」、「夢に日付をいれる」お手伝いをしていきたいと考えている。

日本取引所グループ誕生により資本市場インフラはこう変わる

株式会社東京証券取引所 常務執行役員 土本 清幸氏

 

 2013年1月1日に日本取引所グループが誕生する。現物市場に強い東証、デリバティブ市場に強い大証の双方の強みを活かしたグローバルに競争できる取引所グループとなる。新たに誕生する日本取引所グループでは、統合持株会社の傘下に東証、大証、日本証券クリアリング機構、東証自主規制法人がぶら下がる。東証は株式など現物商品の、大証は先物・オプションなどデリバティブ商品の市場機能を、日本証券クリアリング機構は主に東証、大証の上場商品の清算機能を、東証自主規制法人は自主規制機能を担うこととなる。

 現在、大証は市場運営会社一社が市場運営機能、清算機能、自主規制機能を担うが、東証は約5年前から3つの機能が分かれ、統合後と非常によく似た組織になっている。日本証券クリアリング機構は、2002年に東証が清算機能をアウトハウス化するために設立したもので、大阪、名古屋、福岡、札幌証券取引所の現物取引の清算業務も行っている。大証のデリバティブはインハウスで清算業務を維持してきたが、今回の統合に伴い日本証券クリアリング機構で行うことになる。

 現物市場の機能は、2013年7月、東証に統合する。大証一部、二部は、それぞれ東証一部、二部に統合するが、新興市場のマザーズとジャスダックは、双方の市場コンセプトが異なるため統合せず、併存させる。この結果、東証は本則市場の東証一部、二部と新興市場のマザーズ、ジャスダック、そしてプロ向け市場のTOKYOPRO Marketの5つの市場を運営することになる。これら5市場の上場銘柄は東証の売買システムarrowheadで売買できるようになる。統合に伴う利用者のシステム対応負担は最小限で済むようにする方針である。

 株式市場の活性化には制度やシステムの整備だけでなく、売買対象の上場銘柄が魅力的であることが必要不可欠。欧米の機関投資家との意見交換から、世界に占める日本の株式市場の時価総額シェアを10%以上にしなければならないと感じている。それ以下になると日本株専用ファンドが撤退してしまい、日本株はグローバル・ポートフォリオの中に埋没する恐れがある。

 デリバティブ市場の機能は、2013年度中を目途に大証に統合したい。東証、大証のデリバティブ商品はJ-GATEという1つのプラットフォームで売買可能とする予定である。また、2013年7月に日本証券クリアリング機構が大証のデリバティブも含めて清算業務を行うこととなることから、東証、大証のデリバティブ商品間でリスクを相殺できるポジションでは、証拠金の所要額が少なくて済むようになる。

 現時点での世界のデリバティブ市場における大証のポジションは取引高ベースで18位、東証にあっては上位30位以下である。統合後も17位と必ずしも優位に立てない。デリバティブ商品は現物商品と比べて国境がないので、海外市場との連携など大胆な発想が必要かもしれない。

 ITインフラについては、2013年5月を目途に、東証が構築・運営するネットワークarrownet経由で大証のJ-GATEに接続可能となる。2014年には証券保管振替機構の複数のシステム、東京金融取引所の売買システムにも接続可能となる予定で、arrownetは業界の基幹インフラになりつつある。また、東証では既にコロケーションサービスを提供しているが、2013年5月に開始予定の新サービス「JPXコロケーションサービス」では、更に高速にアクセスできる環境を整備し、J-GATEへの接続も可能とする。

 今回の統合には関係者の理解と協力が必要不可欠と考えている。皆様とともにがんばっていきたい。

※ 上記の対応内容や時期は将来において変更となる可能性がありますことを予めご了承ください。

世界に通用する日本

野村総合研究所 顧問(元外務事務次官) 薮中 三十二

 

 世界中で日本ほど住みやすい国はおそらくない。しかし今後もそれを維持するにはグローバル化を図り、世界に出て行かざるを得ない。これからのグローバル化を考えたとき、「日本のイメージ」は極めて大事である。

 現在、尖閣諸島を巡り日中関係が不安定になっている。今回中国は「日本が尖閣を国有化し問題を仕掛けてきたから対抗せざるを得なかった」と言っている。第一幕はこの中国の宣伝が「技あり」だった。しかし今行われている東アジアサミットは、日本の大きなチャンスだ。中国が南シナ海でやっていることには、みな困っているので、東シナ海についても日本に対して圧倒的に同情的である。

 私はここ何ヶ月か、脱「チャイナ・プラスワン」を主張している。「中国のリスクをヘッジするために、もう1カ国どこか」という付け足しでなく、ASEANのどこかの国と1対1で正面からつきあうべきだ。ASEANには有力な投資市場もあり、2015年にはASEAN共同体もできる。日本にとって一番重要な味方だと思う。ミヤンマーは、ティラワ経済特別区について「日本にインフラ整備からすべてお願いする」と言っているが、日本の企業は少し腰が引けている。日本全体で「1つの国をつくる」思いでやれば、大きなビジネスチャンスになりうる。

 日本は、韓国とも竹島問題で溝ができている。中韓の言い分は、日本が帝国主義に走った時に日本の領土だったというもので、歴史問題と結びつけようとしている。しかし日本には、竹島、尖閣について明確に日本の領土だと主張できる材料がある。

 竹島については、1952年以来、韓国が実効支配している。ところが、韓国の大統領がわざわざあの島に行ったので、日本が国際司法裁判所に持って行ける環境をつくってくれた。尖閣については、第一幕では中国が世論戦で得点をあげたが、第二幕では、中国がどんどん外に出て行く中で日本ががんばっている、と見られている。イメージは非常に大事だ。腰砕けにならず、「日本は国際的に認められていることを静かにやっているだけ。現状を変更しようとしているのは中国だ」とうまく宣伝すれば、第二幕は日本に有利になる。「自衛隊を尖閣に置けばよい」という声もあるが、慎重にすべきだ。「ルールを変えたのは日本」という国際的評価を受け、アメリカが一番対応に困ることになる。

 私が「忘れられた2つの合意」と呼ぶものがある。この2つほど大事なものはない。

 1つは竹島についてである。1998年に改訂された日韓漁業協定では、竹島について排他的経済水域200海里を双方主張しないことで合意し、お互いに漁業のできる日韓暫定水域が設けられた。この水域の中に竹島が入っている。国際的に見ると、竹島についてはある意味、日韓痛み分けになっている。この協定は今も生きており、問題解決の基礎になりうる。

 もう1つは東シナ海についてである。中国は尖閣だけでなく東シナ海全体を狙っている。中国は排他的経済水域を沖縄トラフまで主張し、中間線を主張するわれわれとぶつかっている。ところが2008年6月の油ガス田共同開発の合意では、共同開発区域の中を中間線が走っており、明らかに中間線が意識されている。この合意は過去の日中首脳会談で確認されており、習近平体制でもきちんと守られることが極めて大事である。

 日本と友好な国々が重要な経済パートナーになっている。そこで日本が頑張れば、まだまだ世界に通用する力はある。

NRIのめざす金融ITサービス

野村総合研究所 代表取締役 専務執行役員 石橋 慶一

 

 NRIの金融ITソリューション事業は4つある事業分野の1つで、売上全体の約6割を占める。同事業の売上の半分以上は共同利用型サービス(ASP・SaaS型)である。主要な金融ITソリューションに、STAR(証券総合向けバックオフィス)、I-STAR(ホールセール証券会社向け)、T-STAR(資産運用会社向け)、BESTWAY(銀行向け投信窓販業務)、e-JIBAI(自賠責保険・共済業務)がある。

 近年、金融機関のCIOの皆様は業界を越えた共通の悩みとして、制度変更対応、ITコスト削減(特に消費税増税による圧力)、ITライフサイクル(ハード、ソフト、データセンター(DC))への対応、BCP・DR対策、IT組織の在り方(特にIT子会社の活性化)、内部統制・外部委託先管理などの問題を抱えている。NRIではこうした課題に対処するため「業界標準ビジネスプラットフォーム」の提供を追求しており、その高度化を図るため4つの重要施策を考えている。

①Navigation×Solutionの強化

 お客様の問題を先取りし解決策を導く"Navigation"では、金融先端ビジネスや制度などの調査を実施するとともに、金融市場パネル主宰、審議会参加などを通じて監督官庁との連携を図っている。

 具体的な解決策を実施する"Solution"では、証券会社向けにはSTARI-STARの「業界のデファクトスタンダード」化をさらに進めるとともに、IT子会社との共同開発も進めている。資産運用会社向けには、従来バックオフィスシステムを中心にサービスを提供してきたが、クラウド化の仮想技術や運用自動化を活用してフロント・ミドル部分とのシステム連携強化、サービス拡大を推進している。銀行向けには、BESTWAYの機能充実や、ネットバンク・ネット投信ソリューションサービスValueDirectの強化を図っている。保険会社向けにはe-JIBAIのサービス拡大(バンクエンド業務のサポート機能など)、ダイレクト系システムの共同化・ASP化推進を図っている。

②金融クラウドでのサービス提供

 2012年11月、5つめのDCとして、次世代を担う「東京第一DC」を多摩地区に開業した。DR対策を重視しており、DC間のバックボーンを大容量化し、クラウド技術を用いてロケーションフリーにしていきたい。DCでは「金融クラウド」の構築を進めているが、金融品質が求められる中で、一部にパブリッククラウドを活用したハイブリッドクラウドを考えている。まずは当社の共同利用型ソリューションを金融クラウドに実装し、品質の一貫性を保ちつつ基盤コストの40%引き下げを目指す。また基盤競争力強化に向けては、短命なハードウェアを排除しハードウェアのライフサイクルを延ばすとともに、仮想化技術等によりハードウェア更改時に上位レイヤーに影響を波及させずアプリケーションのライフサイクルを延ばしていく。

③BPOサービスを加えたワンストップ・ソリューション

 NRIでは2010年に設立した「NRIプロセスイノベーション」で資産運用会社などのPOに取り組んでおり、現在、約1400ファンド、資産総額13兆円のファンド基準価額算出などの実績をもつ。また、2012年には「だいこう証券ビジネス」のTOBを実施し、同社の証券事務アウトソーシングサービスで、システムサービス(STAR)を補完していく。

④日系金融機関のグローバル展開を支援

 近年、金融機関が積極的に海外拠点の開設を進める中、海外拠点への日本のIT統制レベルの適用、現地で使う海外製品の管理が重要になっている。NRIでは海外の開発・支援拠点を充実させながら(たとえば2012年にはインドのコルカタに開発拠点を設立)提携先現地ベンダーを活用し、金融機関の海外拠点(特に東南アジア)へのIT支援を提供していく。

 

 NRIでは、このようなフォーラムを今後も継続的に開催し、お客様の課題解決に努めてまいります。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

印刷用PDF

このページを見た人はこんなページも見ています