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中国の経済発展:規模拡大重視から質の向上へ

2013年2月号

NRI北京 金融システム研究部長 神宮健

 高成長を続けていた中国経済は今後どのように変わっていくのか。

 過去10年間(2002年~11年)の中国の実質経済成長率を見ると、単純平均で年率10.6%である。2004年から2007年まで景気が過熱気味に推移し、国際金融危機後は、経済成長率が低下した(図表)。そして、この間、2010年に中国のGDP規模は世界第2位となった。

 

 ただし、今後の中国の経済成長率は、過去10年間のような高水準からは低下していくと見られる。これまで長期間にわたり高成長を支えてきた要因が変化しつつあるからである。まず、供給面を見ると、人口面のプラス要因がなくなりつつある。第一に、農村部から都市部、農業から製造業への出稼ぎ労働者を中心とする人口移動が、ほぼ終了した(いわゆるルイス転換点)、あるいは終了しつつあると言われている。第二は、人口高齢化である。国連の推計によれば、生産年齢(15~64歳)人口が総人口に占める比率は、2015年頃にピークを迎える。日本の場合、ルイス転換点が1960年代、高齢化が90年代と約30年の間隔があったが、中国の場合、二つがほぼ同時に生じる。

 供給面の変化により、長期的成長率は今後低下すると見られる。ちなみに第12次5ヵ年規画期間(2011年~15年)の政府の期待目標成長率は年7.0%である。安価な労働力に依存した成長が難しくなることから、今後は生産性の上昇がより重視されるようになる。

 次に、需要面では、固定資産投資と輸出に依存してきたこれまでの経済発展モデルに限界が来ている。たびたび日本でも報道されている、農民から土地を安価で奪う形の地方の不動産開発プロジェクトが好例だが、これまでのやり方は、多くの弊害、具体的には環境破壊・資源浪費、過剰生産能力、所得格差の拡大等を生み出した。

 過剰生産能力について見ると、足元の設備稼働率は約60%(IMF推計)に過ぎない。これまでは、輸出ドライブにより過剰生産の問題を緩和できたが、先進国の景気不振が長引くと予想される中、今後は難しくなろう。長年提唱されながらなかなか進まなかった経済発展モデルの転換は今度こそ待ったなしである。

 経済発展モデルの転換には、個人消費の拡大、その背景にある所得格差是正・所得分配の改善が必要である。これは社会不安定の回避からも重要である。従来から中国政府は、最低賃金引上げ、社会保障面の支出増加等の手を打ってきた。今後は低所得層の所得引上げ・中間所得層の拡大・高所得者の所得抑制(独占企業の高級職員等)による所得分配改善にも取り組む。所得分配改善の最大のネックは、従来の経済発展モデルから恩恵を受けていた既得権益層の抵抗であろう。中国の新政権はここにどの程度メスを入れられるかを問われることになる。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

神宮健Takeshi Jingu

金融イノベーション研究部
上席研究員
専門:中国経済・金融資本市場

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