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PTS勝ち組の条件

2013年2月号

グローバルソリューション事業部 田中隆博

 2006年から2008年にかけて、PTSは個人投資家向けの夜間市場として発展し、一時は5つの市場が存在した。しかし、個人投資家の夜間注文だけでは売買成立の機会が少なく、活況を呈すことはなかった。結局、夜間市場としてのPTSは、2011年に1社を除きすべて閉鎖された。

 日中の取引市場としてPTSが注目されるのは2008年以降である。2008年3月にkabu.comPTSが日中取引を開始し、2008年10月にはJapannext PTSが続いた。PTSは取引所よりも細かい呼び値を採用し、高速な取引システムを導入することで取引所との差別化を試みた。しかし、PTSの売買代金は、2010年まで東証の1%にも満たなかった。一般に、ある市場に流動性があるかどうかの第一印象は、その市場に豊富な指値注文が存在するかどうかで決まる。しかし、当時のPTSには十分な指値注文が存在しなかったため投資家を惹きつけることができなかった。

 その後、2010年7月の日本証券クリアリング機構によるPTS取引の清算・決済開始、2010年10月のPTSにおける空売りの認可、2012年10月のTOBにおける5%ルールの適用除外、などPTS利用のための環境改善が進むと、それと並行してPTSの売買シェアは順調に上昇した。一見、制度改正が功を奏したように見えるが、背後には米国に端を発した市場流動性に関する構造変化が存在した。

 2000年代に入ると、米国ではコンピュータを使って大量に売り買いの指値注文を同時に行い、売買の鞘を抜く投資家、いわゆるHFT(高頻度取引)業者が市場を席巻するようになった。HFT業者が存在することで、市場に大量の流動性が供給され、一般の投資家にも流動性の高い市場として認知されるようになる。米国の代替市場は、流動性の供給者にリベートを支払う等の優遇措置を講じ、意識的に見た目の流動性を高める戦略を取った。その結果、流動性が流動性を呼ぶ好循環ができ、米国の代替市場は売買シェアを急拡大させた。

 日本では2010年7月に、欧米でHFT業者の囲い込みで実績のあるChi-Xが同様のスキームを持ち込んだ。またJapannext PTSも株主である外資系証券会社の協力を背景にHFT業者の取り込みに成功した。直近のPTSの売買シェアは、この2社の合計で東証の6%強に達するほどに拡大している。一方、社数に関してはピーク時には7社のPTSが存在したが、今ではHFTの取り込みに成功した2社が残るのみである。つまり、制度改正の陰で、流動性の構造変化に対応できたPTSのみが勝ち組となれたわけである。

 

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

田中隆博Takahiro Tanaka

証券ホールセール事業二部
上級コンサルタント
専門:エクイティ・フロントIT

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