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アルゴが動かす株式市場

2013年2月号

グローバルソリューション事業部 角田充弘

 株式手数料の完全自由化が行われた1999年以降、委託手数料は低迷し、証券会社内でのコスト削減が求められた。その一方で、運用会社のトレーディング業務が専門化し、高度な執行が証券会社に求められるようになった。これらを背景に、トレーディング業務を自動化するアルゴリズム取引(以下アルゴ)が注目を集め、2004年頃を境に広く普及をし始めた。

 初期のアルゴは、過去の出来高から決められた執行スケジュールに従って、順次注文を行う単純なものであったが、やがて人間のトレーダーの思考や感性を真似て、複雑かつ俊敏な動作を行うアルゴが現れてきた。相場の状況に応じて執行スケジュールを変更するものや、僅かな時間に素早く注文を行い、有利な気配を確実に捉えるものも開発された。アルゴは証券会社のマーケティング戦略上、重要な位置を占めるようになったのである。

 このようなアルゴの進化を受けて、取引所の売買システムにもミリ秒単位の応答性能が求められることになった。ニューヨーク証券取引所やナスダックは、それぞれ2007年に欧州系取引所グループとの経営統合を行ったが、その背景には高速な売買システムや情報技術を巡る、グローバルな獲得競争があったことは言うまでもない。

 高速化へのニーズは取引所の新たなサービスも生み出した。証券会社のアルゴを取引所のデータセンター内に設置することで、通信遅延を限りなく小さくするコロケーションと呼ばれるサービスを提供し始めたのである。

 2008年頃には、コロケーションを活用して自己資金による短期的な売買を繰り返し、僅かな利鞘を大量に積み上げて収益化する新しいタイプの投資家が、米国を中心に台頭してきた。HFT(高頻度取引)と呼ばれるこの手法は、実際には専用のシステムが実現しており、アルゴのもう一つの進化形と見ることができよう。

 2010年には、高速性を誇る東証アローヘッドが稼働を始め、我が国においてもアルゴ向け市場インフラが整った。その一方で、人間のトレーダーが相場を張る従来の売買形態が劣勢となり、システム化の対応が遅れた中小証券や自己専業証券等の廃業を招く結果となった。

 図表は東京証券取引所における、コロケーションからの注文比率を示したものであるが、2012年後半にはその比率が遂に5割を超えた。今や取引所の市場は、人間よりむしろアルゴからの注文によって形成されていると言っても過言ではなかろう。

 

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

角田充弘Mitsuhiro Tsunoda

証券ホールセール事業二部
上席コンサルタント
専門は株式市場、電子取引システム

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