1. HOME
  2. 刊行物
  3. 金融ITフォーカス
  4. カテゴリから探す
  5. 金融トレンド
  6. 高分配志向からリスクとのバランスの重視へ

高分配志向からリスクとのバランスの重視へ

2013年2月号

金融ITイノベーション研究部 金子久

 本誌第一号が発行された2004年度下期から最近までの売れ筋投信を眺めてみた。個別ファンドの販売額ランキング上位を見ると、顔ぶれの変化は激しいが、投資家サイドにも商品の提供サイドにも見られる「高分配志向」が一貫して表れている。すなわち、基準価額の水準に対する分配金(いわゆる分配金利回り)が相対的に高いファンドがランキング上位に登場している。

 例えば、2004年度下期においてはグローバル債券型投信の分配金利回りが高く人気を集めていた。2005年度になるとバランス型投信の中にも分配金利回りの高いファンドが登場し、海外債券型から人気を奪った。続いて2006~2007年度には海外株式型投信の中にさらに高い分配金利回りのファンドが登場し、人気を集めている。最近になると、オーストラリア債券に特化したタイプや不動産投信型、あるいは通貨選択型と呼ばれる投信の分配金利回りはさらに高く、販売額ランキングの上位を独占した。

 分配金利回りがより高いファンドに売れ筋が移ると共に、高リスクファンドに販売額が集中する現象も見られるようになった。図表は投信の販売額をリスク階級別に分けて示している。個別ファンドの日次ボラティリティ(計測期間は6ヶ月)を、欧州で採用された投信のリスク指標における階級区分に従って7段階に分けている。2004年度下期はグローバル債券型などが多く含まれるリスク階級4以下の販売額が8割を占め、リスク階級6(株式ファンド等)以上の割合は1割に過ぎなかった。それが2006年度下期になると、リスク階級4以下の販売額は5割に減少し、リスク階級6以上のファンドは3割に迫った。そして2011年度下期にはリスク階級4以下の販売額は2割近くまで減少し、リスク階級6以上が6割に達している。

 高リスクファンドは一般に販売手数料が高く、販売会社から見れば効率的に手数料収入が得られる。投資家からすると期待リターンの高さが魅力だ。だが、そもそもリスクが高いため、購入するだけのリスク許容度をもつ投資家が限られる。また高リスクファンドを購入するだけのリスク許容度をもつ投資家でも、それに充てる資金はそれほど多くないはずだ。これが投信マーケットへの資金流入の減少の一因と考えられる。

 もっとも最近になると、グローバル債券型などよりもリスクの低い投信の販売も徐々に伸びている。2012年度上期には為替ヘッジ付き外債などが多く含まれるリスク階級3以下の販売額が全体の1割を超えた。ファンドの選択において単純に分配の多寡が注目されるのではなく、トータルリターンやその安定性も重視され始めたのは目新しい動きと言える。このように、多くの人が受け入れられる商品に厚みをもたらすことが、投信マーケットが拡大基調を取り戻すきっかけになるはずだ。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

印刷用PDF

Writer’s Profile

金子久Hisashi Kaneko

金融イノベーション研究部
金融制度イノベーション研究室長
専門:個人金融マーケット調査

この執筆者の他の記事

金子久の他の記事一覧

注目ワード : 投資信託

投資信託に関する記事一覧

注目ワード : 分配型投信

このページを見た人はこんなページも見ています