1. HOME
  2. 刊行物
  3. 金融ITフォーカス
  4. カテゴリから探す
  5. 数理の窓
  6. ゲリマンダーは再び空を舞うか?

ゲリマンダーは再び空を舞うか?

2013年1月号

須貝悠也

2012年末は衆議院議員選挙で大いに盛り上がったが、その中で「ゲリマンダー(※1)」という言葉を耳にされた方もいるかもしれない。「選挙時に特定の層の影響を強(弱)めるために小選挙区の範囲を操作する事」を意味するこの言葉は、1812年の上院議員選挙において、第9代マサチューセッツ州知事Elbridge Gerry氏が自らの政党を利するために設定したいびつな選挙区割を揶揄した造語に由来する。

 自分に不利な有権者が多い地域をなるべく1つの選挙区に押し込め、一方で自分の支持層が多い地域になるべく多くの選挙区を割り振れば、議会に選出される反対勢力を最小限に抑える事ができる。しかしGerry氏はこれをあまりに露骨に行ったため、不名誉な形で後世に名を残す事となってしまった。

 小選挙区制度そのものは民意を議会に正しく反映させるための有効な選挙手法であるが、本来の目的とは異なる恣意的な運用が行われてしまえば、目指していた「民意の正しい反映」とは程遠い結果がもたらされる事は想像に難くない。ゲリマンダーは公正であるべきものが公正さを失った時に生じる歪みの象徴であり、そしてその帰結が望ましからざるものになる事を我々に語りかけるのである。

 金融の分野に目を向けると、金融危機により従来の投資行動に様々な危険が潜んでいた事が明らかになった。そこで昨今ではリスク管理の重要性が広く認識されるようになり、ストレステストやストレスVaRなどのリスク管理手法の導入が規制当局により求められている。しかし「経営資源に与えるインパクトをなるべく小さくしたい」という考えの下に、管理手法やそのインプットを恣意的に選別するような運用を行うのであれば、金融の世界にも新たなゲリマンダーが舞い降りるのかもしれない。

 さて、新年である。正月休みを満喫し過ぎて、体重が気になり始めた方々も多いのではないだろうか。しかし、あなたが現実と向き合う事を恐れるあまり、空腹時を選んで体重計に乗っているのであれば、あなたの背後にもゲリマンダーの影が…

1) 後述のGerry氏と炎の中に住むトカゲ「サラマンダー」とを組み合わせた造語。
2) The Boston Gazette, March 26, 1812.

※組織名、職名は掲載当時のものです。

印刷用PDF

Writer’s Profile

須貝悠也Yuya Sugai

金融デジタル企画一部
上級コンサルタント

この執筆者の他の記事

須貝悠也の他の記事一覧

このページを見た人はこんなページも見ています