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保険資金運用の規制緩和

2013年1月号

NRI北京 金融システム研究部長 神宮健

2012年の中国保険業界は、保険料収入が伸び悩み、また資金運用成績が悪化する等苦戦した。そうした中で、保険資金の運用面では規制が緩和され、今後の保険会社経営に影響を与えると見られる。

悪化した2012年1ー9月期の業績

 中国の保険業界では、2011年に保険給付・配当が増加する一方、資金運用成績が悪化し、それに伴い解約が増える等、損益状況が変調を見せていた。2012年1ー9月期の上場保険会社の業績を見る限り、こうした状況はあまり改善していない。

 2012年1ー9月期の上場保険会社の業績を見ると、中国平安保険の純利益は前年同期比31.6%増となったが、新華人寿保険は同2.42%の増益にとどまり、中国人寿保険と太平洋保険はそれぞれ同55.0%、同55.3%の減益となった。中国平安については銀行部門の収入が倍増しており、保険部門のみの状況はさほど良くないものと見られる。

 2012年1ー9月期の特徴として、第一に保険料収入の伸びの鈍化が挙げられる。以下では、主に生命保険を中心に見ることにする。ここでは販売面で、銀行における保険窓販に関して2010年~11年に発表された規定の影響が現れている。これは銀行の窓口販売での不適切販売等の行為の取締りのために、(1)顧客に保険商品を直接販売する者は、保険代理従業人員資格証書を持つ銀行の販売員であること、(2)商業銀行の各支店が業務提携できる保険会社数を原則3社までにすること等を定めた(※1)。

 この規定を受けて銀行の窓販による保険料収入が減少した。2012年上半期の動向を見ると(※2)、中国人寿は保険料収入が前年同期比5.1%減少、うち保険窓販分(新規契約)は同33.7%減少した。中国平安では保険料収入が同5.0%増加、うち窓販分は同35.7%減少、新華人寿は保険料収入が同10.4%増加、うち窓販分は同12.9%減少、太平洋は保険料収入が同1.2%増加、うち窓販分が39.3%減少した。このように保険料収入は伸び悩み、最近増加傾向にある保険解約と保険給付の伸びを下回ることになった。

 第二に、資本市場の低迷から、資産(有価証券)の減損処理額が大きくなった。中国人寿では減損処理が1ー9月で前年同期の5倍弱の約290億元に上り、他の3社も軒並み増加した。

 第三に、これに関連して投資リターンも低下した。2012年上半期の投資収益率は、中国人寿が2.83%(総投資収益率。減損処理前の純投資収益率では4.48%)、中国平安が同じく3.7%(同4.5%)、太平洋が3.9%(同4.9%)、新華人寿が1.8%(同2.2%)である。ちなみに、2012年前半の銀行預金金利は6ヵ月物で3.3%、1年物3.5%であり、銀行理財(資金運用)商品の利回りはさらに高い。保険料収入に占める配当付保険(「分紅保険」)の割合が約7~8割と(※3)、投資型商品が大部分を占める市場構造の中で、投資リターンの低下は、新規契約の低迷や解約増加にもつながった。投資収益率の低下の一因として、投資範囲が限られていることが挙げられている。

資金運用面の規制緩和

 このように保険業界が苦戦する中、当局も制度面から手を打っている。2012年6月に保険資金運用の改革に関する内部討論会が開かれ、これを受けて7月に「保険資金の債券投資暫定弁法」、「保険資金の株権(持分)・不動産投資に関する問題についての通知」等4本、10月には「保険資金の金融商品投資に関する通知」を始め、金融商品、インフラ債権、金融デリバティブ商品、株価指数先物への投資や海外投資に関する弁法等6本が発表された(※4)。

 投資範囲の拡大と投資制限の緩和により、投資収益率の向上を図ることが狙いであり、並行してリスク管理も強化される。具体的には、銀行・信託・証券等の発行する資産運用商品や銀行融資証券化商品等、各種金融商品についての投資規定が明確にされた(図表)。また、金利・外貨・株式指数先物等のデリバティブ商品への投資がリスク回避手段として可能になった。但し、投機目的の投資は許可されず、実物商品等への投資も禁止された。さらに、投資先国・地域についても、従来の「発展成熟した資本市場」との規定から25の発展市場と20の新興市場が明示された。

 投資比率の規制緩和を見ると、前四半期末資産に占める比率(額面)について、未上場企業持分への投資の場合は5%以下から10%以下に、不動産投資の場合は10%以下から20%以下に、無担保非金融企業・公司債の場合は、20%以下から50%以下にというように変更された。また、債券投資については、投資適格の格付けが明確化された。

 投資範囲の拡大やヘッジ手段の導入を通じて、株式市場の影響を大きく受ける体質からの改善が期待される。一方、他の金融機関との関係も、投資家向け運用商品での競合だけでなく、保険会社が他の金融機関の商品で資資金運用面の規制緩和金運用するという協力関係も強くなると見られる。

1) 2011年9月号「中国における銀行の保険窓販の動向」参照
2) 2012年前半は販売チャネル別データが入手可能。
3) 2010年71.0 %、2011年80.2 %。2011年、2012年版『中国保険市場年報』。
4) 7月は、「保険資金の債券投資暫定弁法」、「保険資金の株権(持分)・不動産投資に関する問題についての通知」、「保険資金委託投資管理暫定弁法」、「保険資産配置管理暫定弁法」の4本。10月は、「保険資金資産管理会社に関する事項についての通知」、「保険資金の金融商品投資に関する通知」、「インフラ債権投資計画管理暫定規定」、「保険資金海外投資管理暫定弁法の実施細則」、「保険資金の金融デリバティブ商品取引参加についての暫定弁法」、「保険資金の株価指数先物取引参加についての規定」の6本。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

神宮健Takeshi Jingu

金融イノベーション研究部
上席研究員
専門:中国経済・金融資本市場

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