1. HOME
  2. 刊行物
  3. 金融ITフォーカス
  4. カテゴリから探す
  5. アセットマネジメント
  6. 拡大が見込まれる国内インフラ投資に向けて

拡大が見込まれる国内インフラ投資に向けて

2012年12月号

公共経営コンサルティング部 主任研究員

近年、国内インフラに対する投資環境の整備が進展し、新たに空港、道路、港湾等が投資対象として登場する見込みである。これらのインフラは、これまでPFI事業によって多く整備・運営されてきた学校、庁舎、公営住宅・宿舎等のインフラのリスク・リターン特性とは異なるため、投資を始めるには早急に事業を見極める目を持つ必要がある。

大きく異なるインフラのリスク・リターン特性

インフラのリスク・リターン特性

 経済活動や人々の生活を支えるために必要不可欠な空港、道路、港湾、上下水道などのインフラは、公共財または自然独占性を有する財という特性を有している。そのため、インフラから生み出されるキャッシュ・フローは景気の動向に影響されず、長期的に安定した収益を見込めるとされている。しかし、インフラの収支構造や投資段階、さらには事業環境によってリスク・リターン特性は大きく異なっている。

 インフラの収支構造には、有料道路、鉄道、空港、港湾、上水道等のように利用者から直接料金を収受する独立採算型、公園、学校、庁舎等のように政府が利用者に代わってサービスの対価を支払うサービス購入型、下水道、体育施設等のように利用者からの料金と政府からのサービスの対価を受け取る混合型の3種類が存在する。またインフラの投資段階には、新たにインフラを整備する段階から投資するグリーンフィールド案件と、既に稼働しているインフラの建物や設備を更新する段階から投資するブラウンフィールド案件が存在する。さらにインフラを取り巻く事業環境として、当該地域の人口変動や経済成長の状況、参入規制・競合事業の有無などもリスク・リターンに大きな影響を与える。

 これらの複数の条件の組み合わせによって、インフラのリスク・リターン特性は大きく異なる。例えば収支構造では、要求されたサービス水準を維持すれば一定の収入が見込めるサービス購入型よりも、利用者の増減によって収入が変動する独立採算型の方がリスクやリターンは大きくなる。また投資段階では、過去の需要が把握できるブラウンフィールド案件よりも、将来の需要を見通し、さらに建設リスクや完工リスクを伴うグリーンフィールド案件の方がリスクやリターンは大きくなる。

 一般的に海外のインフラファンド(※1)の目標利回りは10~15%に集中している。しかし、投資対象となるインフラの収支構造や投資段階、さらには投資地域の事業環境によって、各インフラの目標利回りは数%から20%超と大きな乖離が存在するのが現状である(※2)。

ローリスク・ローリターンに偏在してきた国内のインフラ投資

 それでは、我が国のインフラ投資はどのような状況になっているのであろうか。我が国では、政府の財政負担の軽減や効率的なサービスの提供を目的として、1997年にPFI法が施行され、学校、庁舎、公営住宅・宿舎、文化施設等を中心に2009年度末までに約4.7兆円の民間資金がインフラ事業に投入されている。

 2009年度末までに実施方針公表済みの案件は366件存在し、そのうちサービス購入型が262件(72%)と圧倒的多数を占めている。これらの事業の多くは、既存施設の建替えといったブラウンフィールドに該当するため、サービス購入型のPFI事業会社の平均ROA(※3)は0.3%と低く、ローリスク・ローリターンの案件に偏在しているのが現状である。これは、事業から生み出される収益の大半が業務委託先である設計・建設会社、施設運営会社、維持管理会社に回収されていることが主因である。一方、案件数は少ないが、ミドルリスク・ミドルリターンに該当する独立採算型のPFI事業会社の平均ROAは7%を上回っており、鉄道会社やガス会社(※4)を上回るリスク・リターン特性を有しているといえる。

PFI事業、鉄道、ガス会社のROA比較

整備が進む国内インフラ投資市場

 このようにローリスク・ローリターンに偏った国内インフラ投資市場を是正し、様々な投資家が国内インフラに投資出来るようにするため、PFIは新成長戦略(※5)に位置付けられ、2020年までにPFIの事業規模を約10兆円以上にすることが盛り込まれた。さらに独立採算型の案件増加を目的として2011年6月にはPFI法が改正(※6)され、翌年閣議決定された日本再生戦略では約450億円の官民連携インフラファンドの創設が明記された。このインフラファンドでは、主にPFI事業の株式・債券の取得、流動化する株式・債券への債務保証の付与、PFI事業へ投資するファンドへの出融資を行うことで、インフラ投資市場に多様な投資家の参加を促すことを目指している。

市場変革の起爆剤となる空港投資

 一方、昨年のPFI法改正に併せて、国土交通省では独立採算型の事業化支援(※7)が行われている。この支援を受けた事業をみると、空港4件、道路2件、港湾2件と空港の案件数が最も多い。これは、人口減少・低経済成長下にある我が国においても、LCCの就航や旅客ターミナルの増改築による収入増加や、現行の国・自治体・第三セクターという非効率な運営体制を一本化することで、より効率的な経営が見込める数少ないインフラであるからと考えられる。この空港投資には、一空港あたり数百億円程度の自己資金が必要とされ、これまでと同様に施設運営会社や維持管理会社のみで賄うことは困難である。そのため、新たな投資家が必要とされており、非常に魅力的な投資機会が到来しようとしている。

 しかし、こうした空港、道路、港湾等の独立採算型のインフラ投資を行うためには、事業内容を十分に見極める目を持つことが重要であり、投資を始めるには早期かつ綿密に準備していく必要があるだろう。

1) 民間調査会社Preqinによると、世界における非上場のインフラファンド数は2011年6月時点で128ファンドあり、ファンド規模は平均してUS $720mm となっている。
2) Preqin「The 2011 Preqin Infrastructure Review」
3) 財務情報が収集可能な127のPFI事業会社の過去3年間におけるROAの平均値を算出した。
4) 東京証券取引所に上場している時価総額上位10社の過去5年間におけるROAの平均値を算出した。
5) 新成長戦略とは、民主党への政権交代後の2010年6月に閣議決定されたものであり、PFIは「21世紀の日本の復活に向けた21の国家戦略プロジェクト」に位置付けられている。
6) PFI法改正によって「対象とするインフラの拡大、事業運営権を民間企業に売却して経営委託する方式(コンセッション方式)の導入」が実現した。
7) 国土交通省総合政策局官民連携政策課では、2011年度から「先導的官民連携支援事業」として、各自治体から提案されたPFI事業の可能性調査支援を実施している。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

印刷用PDF

注目ワード : インフラファンド

このページを見た人はこんなページも見ています