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次世代EDINET更改と重要事実情報のXBRL化

2012年9月号

資産運用ソリューション企画部 データアナリスト 三井千絵

企業評価の効率化に向け、財務情報だけではなく、投資判断に大きな影響を及ぼす重要事実についても一部XBRL化の取り組みが行われる。将来的に、TDnetの適時開示と併せて取り組みが拡がれば、業務効率化や日本の株式市場の透明性向上などが期待できるだろう。

投資判断に著しい影響を及ぼす重要事実の公表

 投資家にとって企業を評価する上で財務情報は基本となるが、投資判断に著しい影響を及ぼす事実が企業に発生した時はその情報も考慮しなければならない。例えば、ファイナンスや買収、代表者の異動などである。このような情報は、金融商品取引法(166条など、以下金商法)で投資者の投資判断に著しい影響を及ぼす重要事実として定義されており、その発表より前の内部者による取引が禁止されている。逆にいえば、この重要事実に関する情報は、発表直後に株価が変動する可能性が高く、投資家にとっては、情報を受け取るタイミングも重要となる。
 これらの情報は、現在、東京証券取引所が運営するディスクロージャーシステムTDnet及び金融庁が運営する開示システムEDINETを経由して発表されている。
 金商法の定義する重要事実は、配当の支払い、株式等の発行、自己株の取得、株式分割・交換・移転、合併・事業譲渡・分割・解散などの決定事項、災害や主要株主の異動などの発生事項、決算情報などに分類される。東京証券取引所は、これらの重要事実や公開買い付け等の情報をTDnetに開示すれば「公表した」ものとして取り扱われるとしているため、上場企業はTDnetを通じてこれらの情報を発表している。従って取引所ルールなどにより、EDINETより先に決算やその他の報告該当事項が提出され、重要事実等の情報はTDnetで最も早く閲覧できるといえる。更に東証は、金商法で定義する事象以外にも投資家にとって重要な事象を定義し、適時開示を求めている。一方、金融庁が運営するEDINETでは、上場企業だけでなく非公開企業(※1)についても、臨時報告書や発行登録書、公開買付関連の届出書・報告書などの提出を求めている。例えば、臨時報告書については、主要株主の異動、訴訟の提起・解決、重要な災害の発生、役員や公認会計士の異動などがあった場合に報告することとされている。

投資家にとっての重要事実情報

 TDnetでは重要事実等が日々数百件ほど発表されているが、プレスリリースと同様PDFでの開示となっている。決算のように予定された時期に発表されるわけではないので、常時ウオッチするのは非常に難しい。
 株式の時価総額や取引量が大きい企業であれば、重要事実に関わる開示はニュースにもなりやすい。しかし中小型銘柄の企業については、必ずしも詳しく報道されるわけではない。また、重要事実にはそもそも軽微基準があり、予想されるインパクトが軽微と認められる範囲内であれば、開示が必須でない場合もある。
 しかし報道機関や法令が重要かどうかを判断する基準は、必ずしも投資家にとっての重要性の基準と一致する訳ではない。そこで投資家は、報道等で取り上げられない企業についてはTDnetやEDINETで直接情報を探したり、重要事実ではないとされても企業評価上重要な情報は、企業のプレスリリースなどで確認しなければならない。保有銘柄が多い場合や情報を入手しづらい中小型銘柄に投資している場合、このような作業の負担は大きい。

次世代EDINETの対応

 EDINETは、2013年度に更改(※2)が予定されており、2012年6月25日から1か月間、その仕様案が提示されパブリックコメントが実施された。現在は有価証券報告書などの決算に関する開示書類についてのみ義務づけられているXBRL(※3)による開示を、大量保有報告書、臨時報告書、公開買付関連など、重要事実等が示される開示書類にも拡大する予定だ。
 臨時報告書は、法令により定められる34の事項のいずれかが発生した場合に提出が義務付けられているが、パブリックコメントの案によれば、今後はXBRLのタグ(※4)により、どういう理由で提出されたのかを、PDF等で内容を確認せずとも識別することができるようになる。また、英語ラベル(※5)を用いれば、どのような事実が発生しているか海外機関投資家も把握できるようになる。

将来のディスクロージャー基盤の可能性

 TDnetでもEDINET同様、2008年から、決算短信の財務諸表をXBRLで作成することが義務付けられ、その際東証は金融庁から提供されているタクソノミ(※6)を用いることを求めている。従ってTDnetで発表される決算短信とEDINETによる有報の発表が別々の様式で行われていても、利用者は同じタクソノミで決算情報をデータとして受け取ることができる。まず決算短信が発表されたタイミングでデータを取り込み、有報が発表された段階で残りを含めた発表データを取り込むことができるといった利便性が考慮されているといえる。
 TDnetのXBRL化の対象が、従来の決算短信だけではなく、重要事実等の適時開示にあたる情報にも拡大されれば、EDINETと併せ、網羅的にデータ化されることとなる。TDnetにおける重要事実等のデータ化は、証券会社における内部者取引のチェックでの利用や、コーポレートアクション情報として運用会社のバックオフィスでの活用の可能性もある。
 コーポレートアクション情報のXBRL化については海外でも取り組みが行われている。代表的なケースとしては、米国のDTCC(※7)によるもので、昨年のパイロットテストを経て、この夏よりADRのコーポレートアクション情報に対するXBRLの適用が開始された。
 重要事実等の開示にXBRL化を拡大することは、大きな目で見れば、このような業務効率化だけでなく、日本の株式市場の透明性向上や、海外からの信頼の獲得に大きく寄与するものともいえる。
 次世代EDINETではタクソノミも変更になるため、TDnetでタクソノミの共有を継続するためには何らかのシステム更改がTDnet側に必要となる。2012年7月末現在、東証は、次世代EDINETと同じタクソノミをTDnetで利用するか否かについて公式な発表を行っていない。しかし、タクソノミを共有するためにシステムの更改を行うならば、それは重要事実等の情報にXBRL化を拡大する良い機会になるのではないか。たとえ同じタイミングでの対応でなくても、関係者間でこの課題に対する議論が行われ、東京市場の信頼性向上につながるような、より良いインフラ構築が実現していくことを期待する。

1) 非公開企業の書類提出:EDINETでは上場企業だけでなく、所有者数が1000人以上の株券などの発行者に対し、有価証券報告書の提出を義務付けている。http://kantou.mof.go.jp/disclo/gaiyou.htm
2) EDINET は、2012年6月25日から金融庁HP にて、次期システム更改におけるパブリックコメントを行っている。2013年度中にEDINET システム更改及び、XBRLの対象範囲拡大が予定されている。
3) XBRL :eXtensible Business Reporting Language 拡張可能な事業報告言語。
4) HTMLや、XMLで、マークアップ(印づけ)をする文字列。XML系言語のひとつであるXBRLでも、各勘定科目についてタグを設定し、その科目の意味を伝えている。
5) XBRLの部品のひとつ。各タグは、英語ラベルと日本語ラベルをもつ。システムで自動的に切り替えることによって報告書の各要素のタイトルを英語で表現させることができる。
6) タクソノミ:Taxonomy(電子的ひな型)。XBRLのファイルの一つで、勘定科目の親子関係や報告書の構造を定義している。
7) DTCC:The Depository Trust & Clearing Corporation 米国の証券保管振替機関などの持株会社。中核会社のDTC(The Depository TrustCompany)はニューヨーク州銀行法に基づく限定目的の信託会社。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

三井千絵

三井千絵Chie Mitsui

金融デジタル企画一部
上級研究員
専門:企業開示

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