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メインバンクはどのように移り変わるのか
~顧客との長いお付き合いの鍵はネットチャネル~

2012年9月号

金融コンサルティング部 コンサルタント 奥見紗和子

NRI生活者1万人アンケート調査によれば、メインバンクを変更するタイミングには主に30代と60代の2つのピークがあることが明らかになった。大手銀行は、今後の更なるメインバンク化の促進のために、ネットチャネル等を有効に用いて顧客を繋ぎとめていくことが重要である。

メインバンクを変更する時期は20代・30代と60代にピーク

多くの人は、どこかの金融機関を「メインバンク」(※1)として利用していると考えられる。金融機関にとって、メインバンクの地位を獲得し維持することは、今後の人口縮小を考えても大きな課題だろう。
 人は生涯にわたって同じ金融機関をメインバンクとしているとは限らない。では人々はどのような時点でメインバンクを変えるのか。NRI生活者1万人アンケート調査(※2)によれば、メインバンクのスイッチ率(※3)は年齢が若いほど高い傾向にある。図表に年代別のスイッチ率を示したが、20代から30代では、それぞれ約3人に1人がメインバンクを変更している。その後、年齢が上がるとともにメインバンクのスイッチ率は低下していくが、50代から60代にかけて再び上昇する。この層の特徴はデジタル派(※4)とアナログ派(※5)とでスイッチ行動が大きく異なるという点である。60代のデジタル派のうち34%がメインバンクをスイッチしているのに対し、同年代のアナログ派のスイッチ率は21%に過ぎない。
 2つのピークがある理由としては、20代から30代にかけては、就職、結婚、住宅購入などのライフイベントやそれに伴う引っ越し等が多く、そのためにメインバンクを変更していると考えられる。一方、50代から60代にかけてのスイッチは、退職を間近にして退職金の運用などをきっかけにするものが少なくないとみられる。

デジタルなシニアのメインバンク変更は、金融機関のブランドや商品・サービス比較によって行われる

20代・30代は、預金の引出し、クレジットカードの引落し、送金など決済系サービスが中心であるため、金融機関の利便性が重視される。銀行や証券会社などに口座を持っている若年層(18歳~39歳)に対してメインバンクの選択理由を尋ねたところ「ATMが自宅や職場の近くにあるから」(66%)、「店舗や窓口が自宅や職場の近くにあるから」(58%)といった回答が上位を占めた。入学、就職、結婚などをきっかけに引っ越した20代・30代は、引越し先の近くに店舗やATMのある金融機関をメインバンクにする。金融機関にはコントロールできない理由であり、不可抗力的な側面が強いと言える。
 一方60代においては、利便性に加えて、退職金や老後の資産運用という他世代とは異なるニーズが生まれる。シニア層(60~79歳)に対してもメインバンクの選択理由を尋ねたところ「店舗や窓口が自宅や職場の近くにあるから」(64%)等、若年層と同様に利便性を重視する回答が上位を占めたが、特にデジタルなシニアでは「知名度のある金融機関だから」(53%)、「商品やサービスが良いから」(26%)といった回答も多かった(※6)。デジタルなシニアは、情報感度や情報リテラシーが高いため、単なる利便性だけで金融機関を選択するのではなく、金融機関のブランドや商品・サービスの品質を深く吟味してメインバンクを選択しているのである。

メインバンクを継続する鍵はネットチャネル

以上のようなメインバンクのスイッチ構造を受けて、金融機関はどのように顧客のメイン化を推し進めていけばよいのだろうか。大手銀行(※7)を例に考えたい。
 現在の60代~70代の人を対象に、20代のときに大手銀行をメインバンクとしていた顧客(メイン顧客)が、その後どのようにメインバンクを変えてきたかを分析してみた。その結果、かつて20代で大手銀行をメインバンクとしていた顧客(※8)のうち、生涯にわたって同じ大手銀行を利用し続けている顧客(一生組)が23%を占める一方で、一旦大手銀行から離れた人が60代で再びメインバンクとなっている割合(回帰組の割合)は3%に過ぎないことが分かった。大手銀行と同じく全国に支店を多く有するゆうちょ銀行とこの結果を比較してみると、大手銀行はゆうちょ銀行より一生組の割合は高いが、回帰組の割合は低くなっている(※9)。大手銀行の場合は、一旦顧客が離反すると戻ってきにくいという特徴が見られるのである。
 このことから、大手銀行が、資産額の比較的高い60代以降の年代をメイン顧客としてより多く取り込むことを考える場合、若年層からシニア層まで、メイン顧客の繋ぎ止め策を切れ間なく講じて、一生組の顧客を増やす努力をする必要があろう。
 まず、メインバンクのスイッチで第一のピークとなる20代・30代のメイン顧客の繋ぎ止め策としては、PCやモバイルを利用したネットバンクやコールセンターの拡充が鍵となるだろう。店舗やATMが顧客の引越し先の近くになくても、使い慣れた便利なネットチャネルといつでもアクセスできるハイタッチなコールセンターがあれば、これまで諦めるしかなかった若年層のメイン顧客の繋ぎ止めの可能性が出てくる。
 第二のピークとなる60代のメイン顧客に対しては、他行に負けない金利優遇、手数料優遇、運用商品・年金商品の品揃えが必要となる。今後インターネット利用がシニア層に普及し、デジタルなシニアが増加することを考えると、ネットチャネルを通じた優遇キャンペーンで接点を作り、その後、担当者や店舗などのリアルなチャネルに誘導していくやり方が有効であろう。実際に、デジタルなシニアがお金に関することで専門家の意見やアドバイスを参考にしたいと考えている割合は35%で、アナログなシニア(26%)より約10ポイント高くなる。
 若年層・シニア層それぞれにおいて、ネットチャネルを世代のニーズに合わせて効果的に使い、さらに他のチャネルにつないでいくことが、顧客との長いお付き合いの鍵を握ると言える。

1) メインバンクとは、口座を保有している金融機関(銀行、信用金庫・信用組合、証券会社等)の中で、預けている金額が最も多い金融機関と定義する。信用金庫、信用組合、証券会社等への預け入れは全体的に小さいため、ここではメイン「バンク」と記載している。
2) NRI生活者1万人アンケート調査(金融編)2011:この年は、3年毎に行う調査の間を保管するために、首都圏(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)の18歳~ 79歳の男女個人4,484名を対象に、2011年8月~ 9月にかけて、主に東日本大震災が金融行動に与えた影響について訪問留置調査を行った。
3) メインバンクのスイッチ率とは、ある年代(10歳刻み)において前の年代とは異なる金融機関をメインバンクとしている割合のこと。例えば、30代のスイッチ率は、現在30歳以上の人の中で20代のときのメインバンクと30代のときのメインバンクが異なる人の割合である。
4) デジタル派は、パソコンを使って、ほぼ毎日インターネットを利用する人と定義する。
5) アナログ派は、デジタル派以外の人と定義する。パソコンを使ってインターネットを利用する頻度が2日に1回以下の人とインターネットは利用しない人が含まれる。
6) このほか「ブランドイメージのよい金融機関だから」という回答が41%あった。
7) 大手銀行は、三菱東京UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行、りそな銀行/埼玉りそな銀行を指す。
8) 現在の大手銀行の前身をメインバンクとしていた顧客。
9) ゆうちょ銀行では一生組の割合が19%、回帰組の割合が7%。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

奥見紗和子

奥見紗和子Sawako Okumi

金融コンサルティング部
主任コンサルタント
専門:クレジットカード、個人情報保護政策