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人間に勝つロボットたち

2012年8月号

後藤英敏

人間とロボットが知能で対決するとどちらが勝つだろうか?

  ロボットを作ったのは人間であるということから、人間に軍配が上がりそうである。しかし近年の人工知能の質の向上から、対決する分野によっては必ずしも人間が勝てるとは限らない。

 人口知能を持つロボットは「①事前に人間に入れ知恵されたロボット」と「②学習していくロボット」の二種類に大別できる。①では想定し得る環境に対して取る行動を人間がロボットにすべて教えておくのに対して、②ではロボットが自分の認識している環境に対してどう行動すれば効果的であるかの判断を学習していく。②は学習に長い時間がかかる場合もあるが、学習が進むうちに人間が思いつかないような素晴らしい行動をする可能性を秘めている。

 2012年1月14日に将棋界で起こった事件をご存知だろうか?プロ引退済だが実力はプロ棋士同等の米長永世棋聖に将棋ロボットが勝利したのである。従来プロには敵わないと言われてきた将棋ロボットをプロ同等なまでに強くした要因は、評価関数の作成アプローチを①から②に変更したことと、高速演算処理による探索範囲の増加であると言われている。

 評価関数とは、持っている駒の数や盤上の駒の位置関係等の局面データを評価値(局面毎の優劣を数値化したものであり、評価値が高いほど有利な局面であると判断される)に変換するための関数であり、将棋ロボットは数手先にあり得る局面の評価値をすべて計算し、最も高い評価値の局面に繋がる一手を選択することを繰り返して対局を進める。評価関数の決め方には決まった正解がなく、従来は①のアプローチが適用されて、評価関数の精度がロボット開発者の棋力次第となることが多かった。しかし②のアプローチでの過去の棋譜を用いた学習により、有効な評価関数をロボット自身で作成できるようになった。

 高速演算処理は複数台の高性能マシンの並列処理によってもたらされ、先読み時の膨大な数の局面の探索と局面毎の評価値の計算の高速化を実現した。

 将棋ロボットは時に人間が驚くような手を指すことがあるが、それは今までの将棋の歴史上、人間が見逃していた素晴らしい一手である可能性もある。1970年代に開発が始まった将棋ロボットが米長永世棋聖を倒すまで約40年。金融業界においても1980年代に開発が始まったアルゴリズム取引は今や市場をリードする存在である。また、ロボットが運用を行っているファンドも実際に商品化されており、運用アルゴリズムやコンピュータの性能向上は日進月歩である。10年後のあなたは、あなた自身の資産運用を人間とロボット、どちらに依頼しているだろうか?

(後藤 英敏)

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

導入事例

後藤英敏Hidetoshi Goto

金融デジタル企画一部
上級コンサルタント

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