1. HOME
  2. 刊行物
  3. 金融ITフォーカス
  4. カテゴリから探す
  5. セミナー報告
  6. NRIバンキングセミナー報告 フロントコンプライアンス編

NRIバンキングセミナー報告 フロントコンプライアンス編

2012年7月号

 2012年4月18日、野村総合研究所(NRI)は「NRIバンキングセミナー -フロントコンプライアンス編-」を開催した。
 投資信託の普及とともに、金融機関における投資信託販売時のコンプライアンスの重要性が一層高まっている。当セミナーでは、最近の投資信託に関連する規制の動向や、金融ADRの事例からみたコンプライアンス上の留意点を紹介するとともに、金融機関の方々から実際のコンプライアンスへの取り組みについてお話を頂戴した。
 当日は、南は沖縄から、北は北海道の銀行まで、計52行、74名の方々にお集まりいただいた。以下、当日の講演について報告したい。

投信に関する規制・制度改正の動向について

金融ITイノベーション研究部 上級研究員 金子 久

 金融庁は投信法の見直しを行い、改正法案を2013年に国会に提出しようとしている模様である。これに先立ち、この3月金融審議会に「投資信託・投資法人法制の見直しに関するワーキング・グループ(以下WG)」が設立された。見直しは、市場活性化のための規制緩和と投資家保護の両面から行われる見通しである。まだWGの議論途上であり、実際にどのような改正が行われるかははっきりしないが、本セミナーでは投信販売会社に関係が深く比較的実施の可能性が高いと思われる事項について解説を行った。この報告ではその中から主なものを取り上げる。
 規制緩和としては、運用報告書の改善がある。現在の運用報告書は膨大な数値データが記載されているが、投資家の投資判断に役立っているとは言い難い。そこで特に重要な情報を記載したものと、より詳細なものの2種類に分ける。基本的な報告書はページ数が少なくなり、販社にとって費用の削減につながる。
 投資家保護関連の1つは、リスク表示制度の導入である。これはリスクに関する理解が不十分なまま投資する投資家が多いという指摘に応えるものである。既に欧州では導入されており、過去5年のボラティリティにより、リスクのレベルを表示している。レベルが変わると資料の修正や顧客への報告が必要となり、業務負荷が増す可能性がある。 2つ目は、累積配当・累積費用の定期的な通知制度の導入である。毎月分配型投信を保有する投資家が増えているが、多くは分配金水準にばかり目が行きトータルリターンに注目していない。そのため投資家ごとに基準価額や、投資開始時からの累積分配金・費用を定期的に通知する制度を導入しようとするものである。こうした制度導入は必要ではあるが、あまりに完璧な報告を求めるとシステム対応に多大なコストがかかることが考えられる。顧客が得られるメリットとコストのバランスを考える必要があるだろう。
 毎月分配型については、分配原資をインカムゲインとキャピタルゲインに制限することも規制項目として挙がっている。実現すれば多くのファンドで分配金利回りが低下し、一時的に販売額が落ち込む可能性があるが、キャッシュフローを作り出す新たなサービスが生まれるかもしれない。ただこうした規制をしても、仕組み債などの利用により元本のインカムゲイン化を図る動きなどが出ないとも限らない。

講演2 銀行におけるフロントコンプライアンスの現状

リテールビジネス企画部 上級コンサルタント 尾川 宏豪

 野村総合研究所では今年2月から3月にかけ、金融機関の個人向けリスク性商品販売における適合性判断に関する社内ルールの実態把握を目的とした調査を実施した。アンケートを120金融機関に送付、半数の60機関から回答をいただいた。アンケートでは、適合性判断の前提となる顧客属性情報の内容、重視する属性情報、販売制限・禁止ルール、顧客カードの更新タイミングなどについて尋ねている。現在、アンケートの分析中であるが、本セミナーでは属性情報の内容を中心に簡単な概略の報告を行った。
 アンケート回答機関が確認している属性項目は、図表の16分類で、投資方針や投資経験はすべての銀行が聞いている。ただ、例えば投資経験の確認の仕方をとっても、商品別に経験年数を尋ねるマトリックス形式が多く、これではただ保有しているだけか頻繁に投資しているのかよく分からないという懸念がある。また投資目的や借入金の有無など、トラブル時に問題となる項目は確認している銀行が少ない点が気にかかる。

講演3 最新紛争事例から学ぶ今後の投信販売勧誘の具体的改善策

森・濱田松本法律事務所 パートナー弁護士 児島 幸良氏

 児島氏は証券・金融商品あっせん相談センター(FINMAC)、信託協会、東京弁護士会の3つのADR機関のあっせん委員として金融ADR(金融分野における裁判外紛争解決制度)において様々なあっせん経験をお持ちである。今回は金融ADRの実例から「傾向」を把握し、営業で「対策」を施すことの重要性を具体的にお話いただいた。
 まず勧誘時における問題である。ここでは「適合性原則違反(合わザル)」および「量的・質的説明義務違反(聞かザル・解らザル)」が問われるケースが非常に多い。勧誘時には①顧客属性の聴取、②商品の選択、③商品の提案説明が行われるが、①、②では「合わザル」が、③では「聞かザル・解らザル」の問題が起こりやすい。
 ①顧客属性の聴取では投資経験を細分化して、自己の判断による取引経験や投資で損失を被った経験など、「投資経験」の中身を聞き取ることが重要である。そうした属性から「顧客と商品の釣り合い」を取って、②の商品選択を行わなければならない。
 ③商品説明では、顧客の知識・経験・財産・目的に適合した形での勧誘が求められる。「顧客と説明との釣り合い」である。書類に書いてあるというだけではなく、特に高齢の顧客には口頭での説明が必要である。さらに説明をしたとしても本当に理解されているのかも問題となる。「聞かザル(量的説明義務違反)」、「解らザル(質的説明義務違反)」を避けるには、顧客に応じて『何を』×『どのように』説明するかが問われる。
 契約段階に入って重要となるのは交渉記録を残すことである。これは金融ADRにおいて、とくに説明義務違反への対応策として不可欠となる。ただ、交渉記録は現場だけに任せると職員に過大な負担をかける恐れがある。「記録事項の重要性に応じたメリハリ」や「効率化の工夫」など、本部によるサポートが欠かせない。ここで児島氏が薦めるのが『リスク性商品ドナーカード』の作成である。例えば、損失が発生したときにどうしたいか、顧客と具体的に対応を話し合って確認し、それを交渉記録に残す。こうすることで契約時の「記録」を残すとともに、顧客の「記憶」にも残ることになる。
 契約段階でとくに十分な対策が必要なのが高齢者との取引である。その理由としては、高齢者は身体的な衰えなどにより説明が十分伝わらないことも多く、前述の「三ザル」において、大きな問題が生じやすく、重大な適合性原則違反や説明義務違反に問われやすい。また、高齢者が単独で行った取引で損失が生じていることが後で家族にわかり、苦情を申し立てるケースが少なくない(責任転嫁、代理戦争)。
 高齢顧客は金融ADRの申し立てが多く、賠償の金額も大きい。しかし、今後も営業上ますます重要になる顧客層であり対応が欠かせない。ADR対策に限って言えば、家族の「同席ルール」が有効と考えられる。当初から家族が取引を認識していれば、問題は生じにくい。ただ高齢者のリスクに具体的にどう対応するかは、高齢者のタイプによって異なる。「天涯孤独」な高齢顧客は同席がそもそも不可能なので、応接回数や考える期間など別の対応が必要である。遠距離に家族がいる場合は同席ルールが功を奏しやすい。最も注意が必要なのは家族が居ても自分で決めたい「独立独歩」の高齢顧客である。家族の確認を拒否する場合が多く、後々家族との間で問題が生じることになりやすい。
 金融ADRに持ち込まれる事態を避けるためには、「アフターフォロー」が極めて重要である。勧誘段階や契約段階で万が一懸念すべき状況があったとしても、丁寧なアフターフォローによってある程度挽回することも不可能ではない。アフターフォローは顧客のためであると同時に金融機関自らのためでもある。
 具体的なアフターフォローのやり方としては、契約後最初に運用状況等を通知するときに、当初の担当者とは別の人が、商品性の理解や今後の保有の意向、疑問点などを確認する、といった方法が挙げられる。その際に確認書類などをコピーで取ったり、電話ならば録音するなど「証拠」を残しておくことが重要である。当初担当者とは別の人が確認することで、当初担当者の勧誘態様に抑止力を働かせることも期待できる。金融ADRに持ち込まれることになる前に、きめ細かいアフターフォローにより懸念の芽を摘み取り、「後悔を(もっと)先に立たせる」ことが、顧客保護に資するだけでなく、金融機関にとっても望ましいことである。

講演4 フロント業務支援ソリューション

BESTWAY事業部 課長 岩脇 啓

 2010年10月に開始した金融ADR制度は、銀行によるリスク性金融商品販売にあたって、営業現場の「復元(再現)性」と、投資家が苦情・あっせん申立てに至らぬようきめ細かな対応を求めている。未だ多くの銀行が「紙ベース」で取り組んでいる「適合性の確認」や「モニタリング」は、コンプライアンスシステムの導入とそれをベースに組織態勢の整備・強化が求められる段階へ移行しつつある。金融ADR対策のための専門的なシステムサービスが求められる理由は次の通りである。
1. 最新の判例や金融ADR事例などを参考に、日頃から顧客の状態、適合性を確認する精度を高めていく必要がある
2. 銀行の組織態勢として従来以上に明確な意図・狙いをもってアフタフォローに取り組む必要がある
3.特に「高齢者」にはきめ細かな対応が必須となる 一方で銀行から見れば、システムの必要性は理解するとしても、たび重なる制度変更や、いわゆるサブシステムが増えることに疑問が生じることだろう。
 NRIではこれら銀行のシステムニーズに対して「アドバイザープラットフォーム」というASPサービス基盤上で包括的かつリーズナブルに、銀行にとって必要となるシステムソリューションを提供していく。

講演5 投信販売力強化の取り組み

株式会社横浜銀行 IT統括部 グループ長 石黒 友明氏

 横浜銀行IT統括部 石黒友明様に、同行で進めているリテールフロント営業支援ソリューションのプロジェクトについて講演いただいた。
 同行ではここ数年、販売力の大幅な向上を達成するための仕組み作りを考えてきた。その一つとして販売員のスキルにとらわれない投信の提案・勧誘活動の支援ツールを構築するプロジェクトを発足させた。NRIにはITでの支援をお願いしている。
 N R I と組んで非常によかったのは、ユーザー業務を熟知しており当行が気付かない点の提案もあるところだ。対応も迅速で、当行から要望を伝えると、翌週にはすぐに実現イメージが提示される。
 また、BESTWAYのデータベースがそのまま使えること、ファンドのリスク指標を提供してもらえること、制度変更対応への安心感もある。
 リテールフロント営業支援ソリューションはBESTWAY/JJクライアント端末で店頭を中心に利用するほか、タブレット端末により営業渉外活動でも利用する予定である。投資している資産の投資地域や通貨をグラフ化して表示することで投資状況をビジュアルに把握してもらえる機能など、実際に稼働するのが楽しみである。本システムが、販売向上に寄与すると確信している。

講演6 ネット投信におけるコンプライアンス

株式会社みなと銀行 個人業務部 調査役 戸田 正直氏

 最後に、インターネットでの投信販売に関するコンプライアンスについて、みなと銀行の戸田正直様より講演いただいた。同行は2012年2月よりインターネット投信を開始した。狙いは、若年層などへの販売力強化、照会業務の負荷軽減(ただしアフターフォローは必須)、取引報告書等の帳票の電子交付によるコスト削減である。
 インターネット投信のシステムとして採用したのがNRIのValueDirectである。お客さま目線による利便性の向上だけでなく適合性原則への対応をはじめとした法改正への対応に信頼ができると感じた点が、決め手となった。
 適合性のチェックでは、お客さまの属性に応じたチェックができるようになっている。例えば、元本安全性重視のお客様が、高リスク商品を選択される時は、取扱いできない理由をお客さまにご理解されやすいメッセージにて表示するなどの対応をしている。
 また、ValueDirectで更新された顧客カードは営業店システムでも確認できるため、効率的な情報共有が可能となっている。
 営業店では、評価損や相場急変時には、ネットのお客様も店頭のお客様も区別なくアフターフォローできる態勢を構築している。

 

※組織名、職名は掲載当時のものです。

印刷用PDF

注目ワード : 金融ADR

金融ADRに関する記事一覧

注目ワード : 分配型投信

このページを見た人はこんなページも見ています