1. HOME
  2. 刊行物
  3. 金融ITフォーカス
  4. カテゴリから探す
  5. アセットマネジメント
  6. 次世代EDINETを契機にした運用会社の投信レポーティング業…

次世代EDINETを契機にした運用会社の投信レポーティング業務の抜本改革

2012年7月号

金融ITイノベーション研究部 研究員 福井豊

2013年に次世代EDINETの稼働が予定されている。次世代EDINETに対応することは運用会社の投信レポーティング業務を抜本改革する契機となるだろう。

手間とコストのかかる運用会社のレポーティング業務

 運用会社は有価証券報告書(有報)、有価証券届出書(届出書)、交付目論見書、請求目論見書、運用報告書、営業リーフレット、週報・月報など多くのレポートを作成している。レポート作成業務の多くは手作業で行われているため、多大な手間とコストがかかり、その効率化は運用会社にとって大きな課題となっている。
 レポート作成の具体的な問題としては、次のような点が挙げられよう。一つ目は、運用会社で作成しているレポートは重複する記述が多いにも関わらず、レポートやファンド横断で効率的なレポート作成が行われていないことである。たとえば、信託銀行の合併によりレポートの修正が生じた場合、対象ファンドを探し出して一つ一つ手作業で修正しなければならない。リスクや税金など、異なるレポートであっても本来は同一であるべき文章の表記が担当者ごとに揺れてしまうといった課題もある。
 二つ目はスケジュール管理からレポート作成までの大部分を手作業で行っており、常に作成ミスなどのリスクが存在することだ。たとえば、虚偽記載を厳格に問われる交付目論見書で記載ミスが生じた場合、再印刷しなくてはならなくなる。このようなリスクを回避するため、何重ものチェックを人手をかけて行い、対応しているのが現状であろう。

次世代EDINETによるXBRL化範囲の拡大

 こうした中、2013年に新しく次世代EDINETの稼働が予定されている。EDINETとは、金融商品取引法に基づく有報などの開示書類の電子開示システムである。運用会社も企業と同様、EDINETに有報、届出書などを提出しているため、次世代EDINETへの対応が必要となる。運用会社はファンド単位で有報、届出書などを提出する必要があるため、企業以上に対応の負荷は大きい。
 現行のEDINETでは、投資家などEDINET利用者は、有報などの開示情報のうち、XBRL(※1)形式での提出が義務付けられている財務諸表本表のみをデータとして利用可能である。次世代EDINETでは、本表部分だけでなく、注記や企業情報、事業の状況などを含めたレポート全体をデータとして取得可能になり、開示書類の“情報”としての価値向上が期待される。たとえば企業の主要な経営指標やファンドの投資方針・投資状況などのデータを、企業やファンド間で比較したり経年比較することが可能になる。
 このように利用する側の利便性向上が期待される一方で、企業や運用会社など提出する側は、次の3つの変更点への対応を迫られる。一つ目はXBRLで提出しなければならない書類の追加である。有報、四半期報告書、半期報告書、届出書に加えて臨時報告書、大量保有報告書などが追加される。二つ目はXBRL化の対象範囲の拡大である。前述のように、従来は財務諸表本表部分のみであったものが、注記や企業情報、事業の状況など、開示書類全体へと拡大される。三つ目は提出形式がinlineXBRL(※2)に変更されることである。
 このようにXBRL形式で提出が必要なレポートやその範囲が飛躍的に大きくなり、その方式も変更となるため、提出する側としては業務負荷の増大につながると考えるところが多いだろう。

次世代EDINETは運用会社のレポーティング業務を抜本改革するチャンス

 しかし、この次世代EDINETは、運用会社にとって、現状のレポーティング業務を見直すきっかけになると考えられる。特に、現行EDINETに対応するため作業負荷が大きく、印刷会社への外注により高いコストがかかっている有報などの作成で、効率化が可能だ。
 次世代EDINETに対応するためには、有報などのレポートを、文言情報も含め、様式で規定された目次単位に、それぞれの目次の意味やいつ時点の情報であるかわかるようにタグ付けをする必要がある。このようにレポートを目次単位に細分化して管理するということは、文章をデータとして管理することに等しく、次世代EDINETに対応することで、結果的に文言データベース(以下、文言DB)が構築されることになる。
 文言DBを利用してレポーティング業務の一部をシステム化することにより、大きく2つの効率化が可能になる。一つ目は有報、届出書、請求目論見書の一括作成が可能になることだ。運用会社は決算時に有報、届出書、請求目論見書を同時に作成している。これらは重複する部分が大部分であるため、文言DBを有効に活用することが可能だ。
 二つ目は、すべて(あるいは、ほぼすべて)のファンドに共通する情報をマスター管理することである。たとえば届出書に記載している委託会社等の情報は、一部を除き大部分がファンド横断で共通の情報である。これらをマスターとして文言DB上で管理し、単位型や追加型などファンドのタイプ別にパターン管理も行う。マスター管理やパターン管理を行うことで、1カ所修正すれば、対象のレポートすべてに反映されるといったことが可能となる。前述した担当者ごとの表記の違いも最小限に抑えられ、修正忘れなどのミスも減少するはずだ。現状負荷の高いチェック業務についても、前回から変更された目次のみをチェックすればよく、負担の軽減につながる。すでに業務改革に取り組んでいる運用会社にとっても、システム化することで、目次単位の履歴管理やレポート横断での文言の検索・置換、厳格なアクセス管理などが可能になる。
 運用会社のレポーティング業務全体への波及効果も期待できる。運用会社で作成しているレポートは相互に関連性が高いため、文言DBを参照しながら各レポートの目的に合わせた編集を行うことも可能だろう。レポートごとに重複した作業を抑えられ、平仄の合ったレポート作成が可能になるはずだ。さらには、ファンド組成時に作成している商品概要書など内部レポートでも利用可能だろう。レポートにより担当部門などが異なるため組織横断での検討が必要となるが、運用会社全体で取り組むべき問題であろう。
 有報などの法定レポートの標準化・効率化をさらに推し進めることで、営業リーフレットなど差別化が必要なレポートや販売支援にリソースをシフトするなど、運用会社の競争力を高めることが可能になる。次世代EDINETを運用会社のレポーティング業務全体を抜本改革する一つの機会としたい。

1) eXtensible Business Reporting Languageの略。
企業の財務情報等を記述するために標準化されたXMLベースの言語。


2) InlineXBRL は従来のXBRLにフォントやサイズ、レイアウトなどの書式情報を加えた言語で、WEBブラウザで表示や修正ができるようになる。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

印刷用PDF

Writer’s Profile

福井豊

福井豊Yutaka Fukui

金融デジタル企画二部
主任研究員
専門:投信に関する調査・企画

この執筆者の他の記事

福井豊の他の記事一覧

このページを見た人はこんなページも見ています