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非上場株の取引市場

2012年7月号

未来創発センター 主席研究員 大崎貞和

日本ではグリーンシート銘柄以外の非上場株式については一般投資家向けの投資勧誘が禁じられている。裾野の広い米国株式市場の仕組みに学びつつ、節度ある自由化を進めていく必要がある。

非上場株式取引の日米比較

 日本には株式会社が約250万社ある(旧有限会社法に基づいて設立されたものを含む)。このうち取引所上場会社は約3,600社に過ぎない。
 かつては取引所非上場会社の株式を取引する場として、日本証券業協会(以下「日証協」)が運営する株式店頭市場(ジャスダック市場)が存在したが、2004年12月、取引所に改組されて消滅した。また、日証協は1997年以降、適時情報開示を行うなど一定の要件を満たした非上場会社の株式を取引する場としてグリーンシート銘柄制度を設けており、2004年末には登録銘柄数が96に達したが、現在は45に減少している。
 日証協の自主規制規則では、証券会社によるグリーンシート銘柄以外の取引所非上場会社株式について一般投資家向けに投資勧誘を行うことは禁じられている。従って、非上場会社株式の大多数は、一般投資家の投資対象となることはないのである。
 これに対して世界で最も資本市場が発達している米国の状況をみると、やや意外なことに、取引所上場会社数(地方単独上場を除く)は、日本の2倍にも満たない約5,000社にとどまる。株式文化が根付いているといわれる米国だが、日米の経済規模の違いを踏まえるならば、上場会社の数が特に多いとは言えないのである。
 むしろ日米の株式市場の違いは、非上場株式取引の裾野の広さにある(図表参照)。
 例えば、自主規制機関FINRAが運営し、日本のグリーンシートに相当するとも言えるOTCブリティンボードの登録銘柄数は約2,300に上る。また、民間会社が運営する非上場株の取引システムで、かつての日刊の気配表「ピンクシート」を電子化したOTCマーケッツでは、約9,800銘柄の取引が行われている。更に最近では、セカンド・マーケットやシェアズ・ポストといったウェブ・ベースの新たな仕組みを通じて、私募発行された非上場株式の限定的な流通も行われている。

情報のレベルは様々

 このうちOTCブリティンボードの登録会社については、1999年以降法定情報開示が義務づけられており、日本の有価証券報告書等に相当する情報が公表されている。また、自主規制機関FINRAが運営主体となっていることから、取引所による市場監視が日常的に行われる上場市場に準ずるような形で、不公正取引の排除も図られていると言えるだろう。
 これに対してOTCマーケッツの登録銘柄については、一般投資家が入手可能な情報のレベルによる市場区分が設けられており、最上位の区分では、詳細な財務情報等が入手可能で、上場銘柄に準ずるような適時開示も行われている。この区分の登録銘柄には、世界的に著名な米国外の大企業も多く含まれる。こうした大企業は、ニューヨーク証券取引所など米国の取引所に正式上場すると、サーベンス・オックスレー法に基づく内部統制報告などの義務が生じることを嫌い、あえてOTCマーケッツで自社の株式を流通させているのである。
 逆に、最も下位の区分に属する銘柄では、直近の財務諸表など投資を行う上で最低限不可欠とも言うべき情報すら満足に入手できない場合もある。投資家の保護という観点からは問題含みとも思えるが、予め情報が得にくく投資リスクの合理的な判断が難しいことが明示されているのだから、それを承知であえて投資しようとする投資家は、自己責任でという考え方である。実際、一般に入手可能な情報はゼロに等しくても、取引先や会社の関係者にとってはなじみのある銘柄というケースも考えられるだろう。

節度ある自由化は必要

 日本においても、一般に公開されている情報が十分でない非上場会社の株式に対する一定の投資ニーズが存在する。例えば、子供が高校に入ったので、地方の鉄道会社の株式を保有して株主優待定期券を入手したいといった例が考えられる。

 現在の日本の制度では、このような場合、発行会社自身が適時情報開示を行わない限り、証券会社による売買の仲介は行えない。米国の制度も参考に、非上場株式取引の規制をより柔軟なものにすることが求められる。
 近年日本では、経営成績の芳しくない会社や実態のない会社の株式や社債を「近く上場するので確実に儲かる」などと言葉巧みに売り付ける詐欺的商法が横行しており、投資に不慣れな高齢者を中心に被害が続出している。それだけに、非上場株式の取引を従来よりも自由にすべきという主張には違和感を覚える向きもあろう。
 しかし、米国でも日本の未公開株詐欺に似た「ペニーストック詐欺」が社会問題化しているが、非上場株式の取引制限が解決につながるとは考えられていないようである。詐欺的行為に対する取り締まりを徹底するのは当然だが、それと並行して、節度ある自由化を進めていくべきではないだろうか。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

大崎貞和

大崎貞和Sadakazu Osaki

未来創発センター
フェロー
専門:証券市場論

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