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金融機関におけるNFC活用の方向性

2012年5月号

金融ソリューション事業二部 上級コンサルタント 宮居雅宣

携帯電話に搭載される非接触IC通信のNFC(Near Field Communication)が海外で実用化されつつある。既にFeliCaベースの決済サービスが普及している我が国においても、「2012年はNFC元年」とささやかれるなど関心が高まっている。リアル&バーチャル、ID&決済を廉価に便利に融合するプラットフォームとしてNFCの活用が期待される。

世界的なNFC普及の始まり

 NFC(Near Field Communication)は、10cm程度の近距離にある携帯電話などの機器間でデータのやり取りを行う非接触IC通信の国際規格(ISO/IEC18092やISO/IEC21481)を指す。もともと非接触ICカード1)にはISO/IEC14443(TypeA、TypeB)という国際規格があるが、これが携帯電話などの機器に搭載されるとNFC規格となる。日本では、たばこの成人識別カード「Taspo」がTypeA、住民基本台帳カードや運転免許証、パスポートなどがTypeBの非接触ICカードとなっている。一方、日本で普及する電子マネーやIC乗車券は同じ非接触ICカードでもFeliCaという独自規格で、国際規格ではない。ただFelicaが携帯などの機器に搭載されるとNFCの一種として国際規格となる。
 NFCは、搭載されている機器同士を「かざす」だけでデータ通信を可能にするものだが、通信層の規格に過ぎないため、NFCの搭載だけではTypeAやTypeB、FeliCaなど異なる非接触通信間の相互利用は実現しない。通信層からアプリケーション層に至る間の実装規格が必要となる。海外では、様々な団体がこれら実装規格の標準化を協議してきた。VisaやMasterCardなどの決済サービスがどの国でもどの端末でも利用できるのと同様に、携帯電話などの機器でもNFCにより、決済やポイントカード、クーポン等様々なサービスが端末やネットワークを共用して利用できるよう、時間をかけて検討が行われ、国を挙げた実証実験を経て、最近やっと実用化されはじめた。
 一方、日本はFeliCaで世界に先駆けて電子マネーやIC乗車券などの非接触サービスやおサイフケータイを実現した。だが、同じFeliCaを使いながらも店頭には複数の端末が並び、そのデータ接続ネットワークなども各社各様に自社構築しているため、電子マネー単体事業では採算が取り難いほどコスト高になっている。海外ではそういったことにならないよう共用を大前提に時間をかけて標準化が検討され、やっと普及し始めたのだ。
 本稿では海外で普及しているTypeA/B搭載モバイルをNFCと呼び、Felicaベースと区別して話を進める。

NFCがもたらす世界

 世界では、多くの携帯電話でNFC搭載の方向性が明確になってきている。そのため既におサイフケータイが実現している日本でもNFCへの関心が高まっている。
 その第1の理由はNFCが世界的に数十億台という規模で普及すると見込まれることである。携帯電話は2011年、世界で約18億台が販売されている(※2)。販売数世界トップのNokiaは、今後すべてのスマートフォンにNFCを搭載すると発表。同2位のSamsungは既に多くの機種にNFCを搭載、HTCやLGなど上位各社もNFC対応を表明済だ。GoogleはAndroid2.3でNFCに標準対応済、AppleもNFC関連技術者を採用して特許を出願するなどNFC化は大きな波となっている。日本では携帯電話出荷台数が2011年で約3800万台(※3)に留まるほか、電子マネー各社におけるモバイル利用率は10%程度と伸び悩む。NFCが世界中で普及することで、量産効果や相互利用による相乗効果をもたらすとの期待が高まる。
 第2に、自由なアプリケーション開発と配布がある。世界中で気軽かつ自由にアプリケーションが開発され、APPストアやGoogleマーケットなどで提供されるので、ユーザーは好きなアプリをダウンロードしてかざして使うようになる。iPhoneのアプリに非接触サービスが加わる姿を想像すればよい。
 第3に、これら世界で普及するNFCが、国は勿論、ネットとリアルの壁をも超えた相互利用を実現する点である。自分の携帯に旅行先の国のIC乗車券をダウンロードして地下鉄に乗ったり、携帯で購入したコンサートチケットを会場でかざして入場することも可能となる。NFCは端末としても利用できるので、特別な入場ゲートは不要で、入場者のNFCを係員のNFCにかざせばよい。 既に海外の金融機関ではNFCの活用が始まっている。2010年にデビットカード決済金額が現金決済金額を上回ったほどキャッシュレス化が進む英国では、現金決済が残る£15以下の小額決済をキャッシュレス化すべく銀行業界や国を挙げてNFCを推進する。ロンドンオリンピックでは、選手や市民が街中でNFCを利用するシーンが見られそうである。中国では中国銀聯が9都市でNFCの実証実験を行っている。米、仏、韓国、台湾など世界中でNFCのもたらす世界の実現に向けた胎動が始まっている。

国内におけるNFCの展望

 では、日本の金融機関はNFCにどう対応すべきか。
 FeliCaベースの決済サービスが普及する日本で、決済インフラを変革するには相当の時間を要するであろう。しかし国際的に標準化されたNFCは世界規模で普及する。ポイントカードやクーポン、ギフトカードや電子チケットなど、これまで携帯電話に搭載されなかったサービスがNFCで容易に廉価で搭載されるようになる。代金の支払いを行う決済でも、サービスや特典がNFC化されればNFCで行う方が利便性が高い。実際、国内で電子マネーを利用する理由の第1位はポイントなどの特典である。さらにNFCはリアルとバーチャルを融合できることから、デジタルID決済などネットの決済サービスがリアルに進出することも可能となる。つまり、これまでインターネット上でしか利用できなかったポイントやバリューを、リアルで利用することが可能になるのだ。FeliCaベースの電子マネーのように高いコストをかけて加盟店端末を配布しなくても、NFCを端末として活用できる。そう考えるとFeliCaの先行実現がいつまで優位性を保てるかは不透明といえる。前述の通り、住民基本台帳カードや運転免許証、パスポートなど、主な公共サービスの非接触ICカードを携帯に搭載できるのはTypeA/BベースのNFCということも忘れてはならない。
 例えば、NFCでIDを読んで本人確認しリアルのサービス利用代金をネットバンク口座残高から振り替える、ソーシャルネットワークで地域出身者が帰省時に利用したり友達に配れるクーポンを配信する地域振興スキームを提供する、姉妹都市と共通サービスを展開し交流を活性化する。NFCによりこうしたことも実現可能になる。リアル&バーチャル、ID&決済を廉価に便利に融合するプラットフォームとしてNFCをうまく活用し、自行口座や地域の活性化に役立てたい。

1) 近接型非接触ICカード。
2) 2011年の世界における携帯電話販売台数1位はNkiaで約4億2,48万台、2位はSamsungで約3億1,390万台、3位はAppleで8,926万台。いずれも出典はGatner。
3) 2011年の日本における携帯電話販売台数第1位はシャープで約760万台、2位は富士通/東芝で約714万台、3位はApple で約539万台。いずれも出典はIDC Japan。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

宮居雅宣

宮居雅宣Masanori Miyai

金融デジタル企画二部
上級コンサルタント
専門:ペイメントサービス

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