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ようやく実現に向かう総合取引所

2012年5月号

未来創発センター 主席研究員 大崎貞和

総合取引所構想を実現するための金商法改正案が国会に提出された。証券取引所と商品取引所が合併や事業譲渡によって統合した場合、金融庁による一元的な規制・監督を受けることになる。法改正は遅きに失した感が強いが、今後の各取引所の動きに注目したい。

総合取引所構想とは

 2012年3月9日、「金融商品取引法等の一部を改正する法律案」が国会に提出された。金融商品取引法(以下、金商法)は、毎年のように改正されているが、今回は、いわゆる総合取引所構想を実現させるための改正が法案の最大の目玉となっている。
 日本の取引所には、株式や債券などの有価証券の売買や有価証券のデリバティブ取引を行う証券取引所のほか、金融デリバティブ取引を行う金融先物取引所、商品(コモディティ)デリバティブ取引を行う商品取引所がある。証券取引所と金融先物取引所は、2006年の金商法制定時の法改正で金融商品取引所という概念の下に包摂されることとなった。しかし、その後も、金融商品取引所と商品取引所の区別が残されている。
 近年デリバティブ市場が急成長したこともあり、証券取引委員会(SEC)と商品先物取引委員会(CFTC)の管轄争いが続く米国を例外としながら、世界の取引所は株式など現物の取引と幅広いデリバティブ取引を共に取扱う総合取引所化を積極的に進めている。日本でも2006年の金商法制定時に商品取引所を取り込む総合化が検討されたほか、2009年の法改正では持株会社や子会社化を通じた金融商品取引所と商品取引所のグループ化や相互乗り入れが認められることになった。
 ところが、この法改正後も、取引所の総合化は実現していない。と言うのも、持株会社を通じて総合取引所グループを創設したとしても、傘下の取引所会社については、従来通り、金融商品取引所は金融庁、商品取引所は経済産業省や農林水産省の規制・監督を受けるため、各取引所が総合化に及び腰なのである。
 本来、総合化の狙いは、複数分野にまたがる商品の組成や取引システムの共通化のはずだが、規制・監督が一元化されないのであれば、取引所グループ全体としては規制が複雑化し監督当局の数が増えるわけで、総合化の効果は半減してしまう。

法案の内容

 今回提出された改正法案の総合取引所に係わる部分の概要は次のようなものである。
① 商品先物取引法に規定する商品のうち一定の要件を満たすもの(商品取引所で取引されるコモディティのうち米以外のものが指定される見込み)について、当該商品に係るデリバティブ取引を金融商品取引所の市場で行うことを認める。
② 第一種金融商品取引業者(証券会社)が商品関連市場デリバティブ取引の媒介、取次ぎもしくは代理等を行えることとする。
③ 商品関連市場デリバティブ取引に参加する取引資格を与えられた業者は金融庁の監督に服する。
④ 金融商品取引所と商品取引所の合併に関する規定を整備する。
 これによって、既存の金融商品取引所と商品取引所が合併したり、商品取引所が金融商品取引所に事業譲渡を行ったりすることで、金融商品取引所がコモディティのデリバティブ取引市場を開設することが可能となる。その場合、規制・監督は金融庁に一元化される。
 ただし、商品取引所やそれに対する経済産業省及び農林水産省による規制・監督という制度そのものが見直されるわけではないので、従来から認められてきた持株会社方式や子会社方式によるグループ化を行う場合には、グループ内の金融商品取引所と商品取引所は、異なる規制・監督の下に置かれることになる(図表)。
 2012年6月までに法案が成立すると仮定した場合、以上の改正は、2013年末までに施行される。

遅きに失した改正

 こうして長年にわたって懸案となってきた総合取引所の創設が、ようやく実現に向かうことになったわけだが、それだけで直ちに日本の商品先物市場が活性化することは到底期待できない。
 第一に、制度改正やそれに向けての省庁間の意見調整に時間がかかり過ぎたため、その間に日本の商品市場は一層取引規模が縮小し、もはや瀕死の状態に陥ってしまっている。
 第二に、制度改正の検討が行われている間に、東京証券取引所と大阪証券取引所が経営統合で合意するなど事業環境が大きく変化しており、既存の取引所の再編による総合取引所化がすんなりと進むかどうかは不透明である。
 第二に、証券会社がコモディティの取引を取り扱えるようになっただけで、証券会社の顧客が積極的に取引に参加するという保障はない。取引口座の総合化や個人の取引についてコモディティと有価証券や有価証券デリバティブ取引との損益通算を認めるといった税制上の配慮も必要だろう。
 遅きに失した感の強い法改正だが、何もしないよりはましである。今後の各取引所の展開に注目したい。

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

大崎貞和

大崎貞和Sadakazu Osaki

未来創発センター
フェロー
専門:証券市場論

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