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あなたの羽根は何色?

2012年3月号

山本由香理

  「赤い羽根探し」というゲームが、とある場所で開催された。このゲームでは参加者全員がランダムに赤色か青色、どちらかの羽根を頭に挿される(青または赤だけというケースはない)。自分の羽根の色は確認できない。赤い羽根の人が自ら「自分の羽根は赤い」と主催者に申請すれば賞金がもらえるが、間違って申請をしてしまうと、逆に罰金が科される。申請の受付は10分毎に1回、一度申請を行った者は退場となり、挑戦できるのは1度きりだ。
 さて、今このゲームに100人が参加した。参加者同士は自分以外の全員の羽根の色を確認できる状態で、席に座っている。あなたは自分を除いた99人の内、赤い羽根の人が5人である事を確認した。この時ノーリスクで、自分の羽根の色を判断し申請を行うには、ゲーム開始から何分を要するだろうか?
 この問いを解くには、まず自分が赤い羽根を挿していると仮定する。もし赤が自分1人ならば、視界に映る全員が青なのですぐに自分が赤だと分かる。赤が2人の時は、視界に赤は1人。もし自分が青で、見えているその人だけが赤なら、前述の例から、その赤の人は1回目で申請を行うはずだ。だが相手は10分後も申請を行わない。これは他に赤い人が見えているから、ということになる。そこで、赤が一人しか見えない自分が赤なのだと結論づけられ、2回目の申請時間(開始から20分後)に申請ができる。赤が3人の場合は、視界に映る赤2人が、赤が2人だけの場合行う筈の20分後の申請時間を過ぎても申請せず留まれば、自分が赤だと分かる。同様に考えれば、赤が5人見えている今、50分を過ぎた後もその5人が留まれば、自分も赤だと判断できることになる。
 もっともこの戦略は、赤い羽根の人全員が「ノーリスク」戦法をとり、考え抜いて挑まねば成り立たない。一か八か罰金に賭ける人がいると途中で判断が狂う。
 この解の場合と同様、経済モデルも単純化された世界で語られることが多い。しかし現実では人が常に十分合理的な行動を取るとは限らない。それを考慮して経済行動を分析する学問が行動ファイナンスであり、金融危機以後その重要性が見直されている。良いイベントが続く時それが更に続くと予想する、等の各種心理バイアスが投資行動に大きく影響した結果、市場が「非合理的」危機を迎えたと考えられるためだ。例えば人は、基本的に「自信過剰」傾向にあると言われる。確率が同じ宝くじを、番号指定で買う人が多いのもその一例だ。つまり言うなればすべての市場参加者は、自分が赤い羽根を持っている気分で投資を行うので、本当に羽根が赤い人を数え上げ、見定める必要性を感じない。かくしてゲームはひたすら非合理的に進むことになる。

(山本 由香理)

※組織名、職名は掲載当時のものです。

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Writer’s Profile

山本由香理

山本由香理Yukari Yamamoto

資産運用サービス事業二部
システムコンサルタント
専門:資産運用ソリューション企画

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